13話 フラグは得てして変わるもの
「なんでこんなことに………………」
俺はリビングで一人で勉強していた。俺何か悪いことしたっけ? …………よし、一旦思い出してみよう。何か分かるかもしれんっ。こうなってしまった要因がそこに眠っているっ…………!? ………アホじゃねえの。ってなわけで、少し遡ろう。
◇◆◇◆◇
俺は、家を出て真冬の家の前まで来ていた。家を出る前に雪が俺に、
『……………ねえ、み、み……………んんっ、あんた、どこに行く気?』
なんて尋ねてきた。天変地異? ………起こりそうだわ。てか、起こってるんじゃね? 現場どこだよ。
『真冬ん家。ちょっと勉強してくる』
『………………は?』
……………睨むなって。怖いだろ? そういうのは幽霊屋敷でやれっ。いや、場違いか? …………うん、場違い。
『だから、真冬ん家行って勉強してくるんだって』
『あっそ。行ってくれば? そのまま帰ってこなくていいから』
雪は言うだけ言って二階に上がっていった。不機嫌さ滲み出てたんですけど。そんなに嫌なのに俺に話しかけてきたのか? …………お兄ちゃん、涙出ちゃうな、ぐすんっ。
「……………………(ゴクリ)」
……………このインターホン、押していいもんかね? 押したくない、帰りたい。けど、雪にも帰ってくんな言われたよ? ……………あれ、俺ホームレス? 路上は勘弁してください。
「ふぅ………………押すか」
男たるもの、時にはやらねばならない。それが今。……………先送りは可能? ふっ、速送りの方にしておくれ。
俺はインターホンを恐る恐る押した。俺の内心とは反対に、ピーンポーン、なんて軽快な音が響いた。……………空気読めよな。ったく……………
「………………よく来たわね」
ガチャッとドアが開き、中から真冬が顔を出す。………………頼むから、嫌そうな顔やめて。顔ひきつってんぞ。…………はっ、にらめっこか!? 受けて立ってやるっ。
「と、とりあえず、入りなさい」
「………………うす」
真冬へ促され、中へ。真冬とは別のローファーが玄関に置かれていた。榎本はそのまま真冬の家に来てるらしい………………って当たり前か。帰り道一緒に帰ってたもんな。あは、あははは………………やべぇわ。
「…………………………」
「…………………………」
気まず。何話せばいいんだ? ソシャゲ? 真冬がやってるわけねぇし。何が悲しくてソシャゲ?
バカな事を考えてるうちに、真冬の部屋の前まで来てしまった。………………なんか緊張してきたんだけど。真冬の部屋なんて入るの初めてなんですけどっ。なんなら、男子の部屋にお邪魔したことねえよ? ………………生粋のぼっちでした。てへっ。
真冬が部屋の扉を開けようと──────ん?
「あ、あんた、やっぱり部屋に入ってこないでっ」
「…………………え?」
「だ、だから、部屋に入ってくんなって言ってんのっ」
真冬は俺の背中をぐいぐいと強引に押して、階段を降りる。辿り着いた先は…………リビングのテーボッ。今のちょっとネイティブっぽくね? すんません、そんなことありませんでした。テーブルにします。
「あんたはここでやってなさい」
「は、はぁ………………」
◇◆◇◆◇
そして、現在に至る。……………うん、俺に非はねえ。ねえわ。ねえ…………よな?
「……………とりあえず、日本史すっか」
勝手に帰ってもいいですか? きっとオッケー。……………でも勝手に帰ったら何言われるか分からんし、もう少し居よっ。……………俺はヘタレでした。