10話 榎本るる
「折り入って話……………?」
改めて俺のキモさを自覚させに来たのか……………!? でも、それだったら、俺が自分のキモさに気づいてないこと前提じゃね? ……………は? 俺はキモくねえし。
『あのさ』
……………何が来る? 毒? 甘? 甘ってなんだよ、甘って。
暫くLEINでの会話が途切れる。……………これだけか? それならそれでいいんだが…………
俺は意を決して文字を打ってみる。
『どうしたんだ?』
……………LEINだと更に胃が痛くなるんだけど? どういうこと? やべぇ、キリキリ痛みだしてきたんだけど。………………表情が分からないからか? ………今すぐ寝たいっ。
『あんたさえ良ければなんだけど………………』
………………毒舌は? いや、別に待ってるわけじゃねえよ? だってMじゃないし、俺。あいつから毒舌取れたら何が残るんだ? …………色々残るな。俺からぼっちを取ってみろ? 取れるんもんならな。
『……………勉強会とか、どうかな』
………………ん? 勉強会? 予想外の単語が飛び出してきたんだけど。確かに、二週間後中間テストあるけどさ。…………うむ、流れが掴めん。鰻を掴む時の如くヌルって逃してる気がする。
『勉強会? やるにしたって、どこで?』
断ったら後々怖いしな。…………というか、承諾しても地獄じゃね? …………長いか短いかだけの違い。実は既に八方塞がり?
『今回だけ、私の部屋を提供してあげる』
ま、真冬の部屋……………? このメッセ、真冬本人が打ってるんだよな? 勉強会に誘ってる時点でおかしいが、真冬の部屋で勉強? はっ、よゆーだっつの(涙目)。
『もし断ったら………………』
『行きます!』
俺に拒否権など、元から皆無だった。
◇◆◇◆◇
『るるっ、やった、誘えたよ(ノ≧∀≦)ノ』
何この絵文字。可愛い。
『良かったねー、まっふー』
明日から可愛いまっふーたくさん見られるかも。眼福、眼福。眼福……………なのかな。
「この気持ちは隠しておくって決めてたのになぁ………………」
常に気を張ってないと、その言葉が出そうで。胸がきゅっと締め付けられる。今も少し……………
『それでそれで、どこでやるの? 勉強会』
『私の部屋』
『え?』
『だから、私の部屋だって』
『いや、文字だし読めないわけじゃないから、それは分かるけど』
まっふーの部屋? 私も行ったことないんですけど? 柚原君、羨ましいっ。ついでに妬ましいかも…………?
ま、大方柚原君の部屋だと緊張するから、自分の部屋に引きずりこんじゃえみたいな? 言い方悪いけど、こんな感じでしょ、多分。
『それでさ、ちょっとお願いがあって……………』
まっふーからのお願い…………なんでも任しとき。なんでも聞いちゃうよ、うち。…………口調がギャルっぽくなった。自分でもこれはちょっとないなーって思った。
『るるにも、勉強会に来て欲しいんだ』
……………行きたいけど、さ。けど、せっかく柚原君との二人の時間を邪魔したくないし。今回は行けない……………というか、行きたくないかも。
『せっかく柚原君と二人きりなんだから、私が行ったら悪いって』
『お願いっ。あいつと二人っきりだと、緊張しちゃうし…………何話せばいいか分からなくなるっていうか』
もう、まっふーってば。意外と乙女チック? そういうところもいい。
『いいよ』
『ありがとっ、るる』
そのメッセージに、思わず微笑んでしまう。
「───────────」
駄目だ。これは、隠しておかないと。私、ちゃんとうまく笑えるかな。笑えたら……………いいな。
───────この気持ちだけは、絶対にばれたくない。だって、まっふーとずっと一緒に…………仲良く、いたいから…………。