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8、秘密の部屋


「アルマ、こっちにおいで。お茶にしよう。」


殿下は甘い声音でソファーに私を手招きすると、自分の横に座らせる。


未婚の男女であるにも関わらず扉はぴっちりと閉められ、密室に二人きりというとても危険な状況に私は内心焦っていた。


「殿下、ちょ…くっつき過ぎですわ。それに扉は少し開けて下さいませんと…」


「そんな事をしたら可愛いアルマの声が扉から漏れてしまうじゃないか。私はアルマを独り占めしたいんだ。」


扉から漏れちゃマズイ声って何!?


リーヴス殿下はそう言うと、クッキーを取り私の口に運ぶ。


仕方無く少しかじって咀嚼すると、リーヴス殿下は蕩ける様な笑顔で私の口元を見つめた。


「可愛い…小さな唇でモグモグしているアルマは小動物みたいだね。ほら、こちらも美味しいよ。」


私の食べかけは自分の口に放り込み、新しいクッキーを差し出される。


それをまた少しかじると、リーヴス殿下の口からほうっと溜め息が吐かれた。


「はぁ、見ているだけで癒される。こんなに穏やかな気持ちは久しぶりだ。アルマ、アルマが強いのは知っているけど、あまり無茶をしないで。怪我が無くて良かった。アルマに何かあれば私は狂ってしまうよ。」


リーヴス殿下はそう言いながら私の頬を優しく撫でる。


そんなリーヴス殿下を見て、私はクッキーを咀嚼しつつその瞳を見返した。


…もしかして、リーヴス殿下、誰かに正気を失わせる様な薬を盛られてるんじゃないかしら?

それで、私なんかにうつつを抜かしているのでは…


現実逃避の為おかしくなっていたのは私の方だったのだが、私はそんな事にも気付かずリーヴス殿下の両頬をがっと挟み込むと自分の顔に近付ける。


唇が付きそうな位顔が近付くと、リーヴス殿下の呼気の香りを確認した。


…薬の香りはしないな…


「アルマ…?」


トロンとした瞳で私の腰を抱くリーヴス殿下の額に自分の額を付け、熱も確認する。


…熱も無い。


「アルマ、アルマ…どうしたの?急に積極的になったね。そんなに焦らす様に誘われたら、襲ってしまうよ?」


ハァハァと熱い吐息を漏らしながら首筋にキスされ、ずれたリーヴス殿下の後ろに入口とは別の扉が目に入り、私は目を眇めた。


「…殿下、何だか、あのお部屋から凄く嫌な気配がするのですが…」


「…ん…?あぁ。あそこは僕の宝物が置いてある部屋だよ。」


宝物…?

どうしてだろう、あの部屋がとんでもなく気になる…


耳朶やいつの間にかはだけられた肩にキスされているのにも気付かずに、私はその扉をじっと見つめる。


「殿下、私、あのお部屋を見てみたいです。」


「…んー…だめ。見たらアルマ、絶対私から逃げようとするもん。それより、今は私に集中して…」


そんな事言われたら余計に気になる!!


私はトンッとリーヴス殿下のうなじを手刀で突き、強制的にリーヴス殿下の意識を落とした。


気を失ったリーヴス殿下をソファーに横たわらせると、そっと気になっていた扉に手を掛ける。

鍵が掛かっていた為、髪に刺さっていたピンで素早くそれを解錠した。


こんなに厳重に鍵まで掛けてるなんて…一体何がこの部屋に…


そーっと警戒しながら部屋に踏み入り、暗闇の中魔法で燭台に火を灯すと、私は露わになった部屋の光景に絶句する。


部屋の中はビッシリと様々な年齢の私の肖像画が飾られており、至る所に見覚えのあるドレスや小物が並べられていた。


「…は?え…何コレ…。あっ、あれ!小さい時に捨てた筈の私のくまちゃん…!?」


「アールマ?」


私が部屋の中を見ていると、後ろから声を掛けられビクッと肩が跳ねる。


ギギギと音がするのではと思うほどぎこちなく振り返ると、そこには無表情のリーヴス殿下が立っていた。


ヒィイッ!怖ッ!!


「いけない子だなぁ…見ちゃだめって言ったでしょ?でも言い付けを守らなかったのはアルマだからね。私から逃げる事は許さないよ。」


「い、い、い、イヤァァッ」


私は近付いて来たリーヴス殿下をギリギリでかわし、部屋の扉を蹴破る。

そのままリーヴス殿下の部屋を飛び出し、猛スピードで廊下を走った。


わあぁぁ、ストーカーだ!!

リーヴス殿下、とんでもない変態ストーカーだった!!


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