70、最後
それからリーヴス殿下は王都に着くと、陛下に私と改めて婚約する事だけを告げ、本当にしばらく部屋から出してくれなかった。
余韻で惚けてしまう程甘い時間を過ごしやっと部屋から出ると、そこにはイニス殿下が待っていて、私達の婚約をそれはもう喜んでくれた。
「兄上、ラウンドール嬢おめでとうございます!もう既に王宮に住居を移しているんですよね!?ああ、これでやっと魔術を教えて貰えます!この時をどれだけ待ち望んでいたか!兄上も暴走する事は無くなるでしょうし、なんて素晴らしいんでしょう!」
そう言って笑顔になったイニス殿下を見て、私もハッとする。
そうだわ!これでやっとイニス殿下に魔法を教えて差し上げられる!
それに、エリシオにも稽古をつけてあげられるし!
私がうきうきしていると、リーヴス殿下はイニス殿下を見てスッと目を細めた。
「イニス、私が婚姻まで一年も我慢できると思うかい?アルマはこれから子作りで忙しくなるのだから、魔術を教える時間なんて無いよ。勿論アルマとの愛の結晶が欲しいっていう気持ちが一番だけど…子供が居ればアルマはもうどこにも逃げられないだろう?それに、既にここに居るかもしれないからね。魔術を使って大事な身体に何かあったら大変だ。」
「「なっ!?」」
私がかぁーっと熱くなる顔でイニス殿下を確認すると、イニス殿下も真っ赤な顔でこちらを見る。
えっちょっと、そんな事なんで大きな声で言っちゃったの!?
これじゃ誰が聞いてるか分かんないじゃない!!
「子供!?どういう事だ!?」
そこへマグリがイドラと共に飛び出して来て、私は肩を跳ねさせた。
「マ、マグリ!あ、あのね!」
「言葉通りの意味だけど?アルマと愛し合ったのだから、当然可能性があるに決まってるだろう?」
そう言ってマグリを煽るように私のお腹を撫でるリーヴス殿下に、私は慌てる。
リーヴス殿下、性格が黒い!
あぁ、マグリが落ち込んだらどうしよう…!
恐る恐るマグリを見ると、マグリはリーヴス殿下から私を奪い腕の中に囲った。
「ハッ、残念だったな!俺が子供が出来た位でアルマを諦める訳ないだろうが!アルマ、大丈夫だ。俺はそんな狭量な男じゃない。お腹の子が誰の子でもアルマの子なら愛せる!」
「あっ、俺様も!俺様も気にしないぞ!」
いや、そういう問題じゃないし、まだ居るかどうかも分かんないじゃない…
収集がつかなくなり黙る私に、リーヴス殿下はマグリから私を奪い返し、ふふっと笑う。
「あぁ、全く…本当に諦めの悪い奴らだな。しかし、アルマと子供の話が出来るなんて、幸せだな。人間になって本当に良かった。これから沢山家族を増やして、私達はもっと幸せになるんだよ。本当に楽しみだ。」
「おいっ!」
周りでマグリ達はギャーギャー騒いでいたが、リーヴス殿下の言葉に私も胸が熱くなった。
家族が増えて、もっと賑やかになる…。
これからは、新しい命を繋いでいく事が出来るんだわ…!
そうして、私は微笑むリーヴス殿下に、泣きそうな位幸せな気持ちでぎゅうっと抱きついたのだった。




