69、王都へ
それから私の体調を気遣い馬車で王都に向かうことにした私とリーヴス殿下だったが、当然の如くマグリとイドラ、お兄様もついて来る。
特にマグリは私から離れようとせず、お兄様に無理矢理引き剥がされながら馬車を別々にされた。
「マグリは本当に諦めが悪いね。」
「私を心配してくれているのだと思います。番番言わなければとても頼りになりますし、もう私の家族も同然ですわ。」
私の言葉に明らかにふてくされたリーヴス殿下の顔を見ながら、私は神界の兄弟の事を思い出す。
「ライナお兄様とラーシュ達は無事かしら…」
思わずぽろっと零すと、リーヴス殿下は更に眉間に皺を寄せた。
「…アルマ、私の前で他の男の話ばかりし過ぎじゃない?」
「あら、リーヴス殿下はライナお兄様やラーシュが心配ではありませんの?」
「心配?まさか。あいつら、ずっとアルマリージュを狙ってて、隙あらば私から奪おうとしてたんだよ?まぁ、ラーシュはちょっと気になるけど…ライナ達に対しては何とも思わないね。そもそも、アルマリージュが居ない時は全員とんでもない位無愛想だからね!愛想が良いのはアルマリージュに対してだけだよ、あぁ、思い出したら腹立ってきた。」
そうだったのね。
皆私にはべったりだから、全然分からなかったわ。
それでも皆の安否を気にしていると、リーヴス殿下が溜め息を吐いて私の頬を撫でた。
「…大丈夫だよ。余程の事がない限り神は死なないし。リウグレット様もアルマリージュが完全に天界と縁が切れた事で落ち込み過ぎてそれどころじゃないと思うしね。…あいつらしばらくしたら接触してきそう。嫌だなぁ。」
そう言って唇を尖らせるリーヴス殿下に、私は微笑む。
「ライナお兄様達が会いに来てくれたらとっても嬉しいですけれど、リーヴス殿下がやきもちやを妬いてしまうのなら、あまり抱きつかないようにしないといけないですわね。」
私がそう言うと、リーヴス殿下は慌てて私の向かい側から横に移動し、腰を抱き寄せる。
「アルマ!まさか、ライナに抱きついたの!?あのむっつりに!?他の奴には抱きついたりしてないよね!?」
「?しましたわ。むしろ、ライナお兄様には会う度甘えてましたもの。でも兄弟なのだから問題ないでしょう?」
キョトンとしていると、リーヴス殿下は私をぎゅうぎゅう抱き締めながらそれを否定した。
「問題しかないよ!神なんだから、兄弟でも血は繋がってないんだよ!?私が居なくなったからって、ライナの奴好き放題しやがって…!アルマ、アルマは知らないと思うけど、天界に居た頃私は必死にあいつらを出し抜いてアルマを手に入れたんだからね!?すっっっごい大変だったんだから!」
必死に言い募るリーヴス殿下が可愛くて思わず頬にちゅっとキスすると、リーヴス殿下が固まる。
「リーヴス殿下は本当にやきもち妬きですね。それに天界に居た頃はあんなに穏やかだったのに、私の前でだけ猫を被っていたのかしら。本当に可愛いらしい人。」
私がにっこり笑うと、リーヴス殿下はみるみる真っ赤になり、私の肩に額を擦り付けた。
「あぁ、もう…可愛いのはアルマだから…!どうしよう、これ、王都までもつかな…着いたらすぐ私の部屋に行こうね?たぶんしばらく出してあげられないと思うから、先に謝っとくよ。」
リーヴス殿下の熱い溜め息が首筋に掛かりくすぐったく感じながら、私は「はい。」と笑った。




