66、ルールア
「リウグレット様…」
「ほら、こっちにおいで。どちらにしろ、ルールアはじきに動かなくなる。そしたら今度はギルダを使わなきゃならないんだから、そこに居たら邪魔だよ。」
リウグレットの言葉に私の頭は怒りでいっぱいになり、思わず振り返ってリウグレットを睨み付けた。
「ふざけないで!誰がそんな事させるもんですか!私はルールアとここに居るわ!ギルダお兄様も生け贄になんてさせない!」
叫ぶ私をじっと見つめながら、リウグレットがすっと表情を消す。
途端に私の身体はリウグレットに引き寄せられ、ルールアから離れてしまいそうになった。
「や、嫌!ルールア、ルールア!」
「アルマたん、我が儘言ったらダメでしょ?今度はちゃんと記憶を消して、パパの事がだーいすきになるようにしてあげる。早く戻っておいで。」
「嫌ぁ!」
私の指がルールアから離れそうになった所で、引き寄せられる力が無くなる。
急いでルールアの側に戻って振り返ると、そこにはライナとラーシュがリウグレットの前に立ちはだかっていた。
「ライナお兄様…ラーシュ…」
「アルマリージュ、君は今まで沢山我慢してきたんだ。だから、私も君の願いを叶えてあげたい。大切な妹だもの、アルマリージュがそうしたいなら、お兄様はそれを応援してあげなきゃね。」
ライナの言葉にぎゅうっとルールアを抱き締めていると、リウグレットがそれを鼻で笑う。
「はぁ?何言ってるのかな?でも、ちょうど良かった。それなら、妹の為にライナが生け贄になっておやりよ。そうしたらアルマリージュも私も喜ぶよ。」
「…そんな事させない。俺もアルマリージュとライナを守る。」
「ラーシュ…」
うぅ…泣いてる場合じゃない、早く、早く私の身体を封印に…!
私が意を決してルールアに向き直ると、何故かルールアは安心したような顔でこちらを見ていた。
「良かった。アルマリージュは一人じゃなかったんだね。君が僕が居なくなったせいで塞いで孤立してしまうんじゃないかって心配していたんだ。やっぱり君は、皆から愛され笑顔でいる姿が一番綺麗だから。…ねぇ、アルマリージュ。天界に居ては君はリウグレット様に縛られる。だから、僕が君を自由にしてあげる。」
ルールアはそう言うと、私に優しくキスする。
それと同時に私の中の女神の力がどんどん吸い取られて行き、意識が遠のいていった。
「アルマリージュ、愛してるよ。君が一緒に居たいと言ってくれたから、君の力だけ貰うね。これでもう君は女神じゃない。ここはもう大丈夫。だから、君の居るべき場所へお帰り。」
最後に見たルールアの顔はとても穏やかだったけど、私の伸ばした手を掴んでくれる事は無かった。




