62、ラーシュ
その時、私の頭の中にいつかラーシュともう一人と私の三人で話している記憶が甦る。
『ラーシュは最近どう?気になる人は見つかった?』
『…アルマリージュ、私は男神にしか興味が無いんだ、そんな簡単には見つからない。』
『あら、何も神界に拘る必要はないのではなくて?もしかしたらあなたの運命の相手は人間界に居るのかもしれないわ。』
『わぁ、アルマリージュの発想は凄いなぁ。確かに、僕とアルマリージュはたまたま二人とも神界に居たからすぐに出会うことが出来たけど、運命の相手はそんなに簡単に見つかるようなものじゃないよね。』
『そうそう。それにまだ生まれていない男神が相手かもしれないわ。どちらにしても私達は不老不死なのだし、時間はたっぷりあるわ。気長に待ちましょう。』
『そうだな…』
お、思い出したーっ!!!
私は記憶にあったもう一人の事はそっちのけで、ラーシュについてのみフォーカスした。
そうだわ、ラーシュは男にしか興味が無いのよ!
しかも、口下手でお堅い子だから女神達の様に神殿を渡ったり、戯れたりなんて出来なくて…
「アルマリージュ…」
一人でぐるぐると考えている間にも後ろから甘い声で名前を呼ばれ、私はビクーッと跳ね上がる。
しかしすぐに気持ちを切り替え元の女神姿に戻ると、何事も無かったようにそっと振り返った。
「う、うふふ、やだわ、ラーシュったら。私は女神なのよ?あれは幻。ただの変化しただけの姿なのだから、本物の運命の相手では…」
「いや。例え変化した姿だとしても関係ない。俺の心は今確かに動いたんだ。…それに、今だったらアルマリージュを想っても罪にならないだろう?」
「?え、い、いや、そりゃ罪には…ならないけど…?」
ラーシュの言っている意味がいまいち分からなかったが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
ラーシュの事は大好きだけれど、そういう好きではないのだ。
大事だけれど、私が愛しているのは一人だけで…
………ん?
そこで、頭の中にさっきの記憶に出てきたもう一人の事がぼんやりと浮かび上がる。
そうだ、私には彼が居るじゃないか。
いつもニコニコしていてどこか抜けた所もある人だけれど、優しくて私の事を深く愛してくれていた。
彼はどこ?
彼に会いたい。
「…ラーシュ、そういえば彼はどこ?せっかく神界に帰ってきたのに、私、まだ彼に会えていないの。おかしいわ、彼の神殿で暮らせるのを楽しみにしてたのに…なぜ彼を置いて人間界に行ったのかしら…?そんな事出来るはずないのに…」
「!」
私の様子にラーシュは顔を悲しみで歪めると、ぐっと唇を噛み顔を逸らした。
「ラーシュ、今から彼の神殿へ行きましょうよ。また三人でお喋りしたいわ。」
ラーシュの方に身体を向け直し縋るように見上げると、ラーシュはしばらく黙ってから私の両肩を掴んで視線を合わせる。
「…アルマリージュ…ルールアはもう居ない。…消滅したんだ。」
ルールアが…
何ですって?
ラーシュの言葉に私の髪がぶあっと逆立ち、身体から力が漏れ出した。
「!アルマリージュ!」
顔を両手で覆い必死に記憶を引っ張り出そうとすると、魔物と言う言葉が憎悪とともに浮かんでくる。
「そうだわ…魔物…。私の仕事はやつらを根絶やしにする事だったわ。なんだ、簡単じゃない。それが終われば、ルールアは帰ってくる。なら、早く行かなければね。」
「!?アルマリージュ!やめろ!ルールアはもう帰ってこないんだ!」
顔を上げ衝動のままに力を放出すると、見覚えのある室内に転移した。
ぼんやりと周りを見渡すと、これまた見たことのある男性が呆然とこちらを見つめている。
「君は…」
更新が滞って本当に申し訳ありません。
今年中には完結させたいな、と思っております。




