60、魔法
ライナにたっぷり甘えリウグレットの神殿に戻った後、私はリウグレットに何か言われる前に
「早く治したいのでもう一度寝かせて下さい。」
とベッドに潜り込む。
リウグレットは
「帰ってきたらパパにも甘えてくれるって言ったじゃん!!」
と文句を垂れていたが適当に誤魔化しさっさと目をつむると、仕方無く諦め寝かせてくれた。
目が覚めるとどことなく頭もスッキリし、私はすぐさまベッドから飛び起きる。
今度は悲しい夢も見なかったようで、ちょうど様子を見にやってきたリウグレットに飛び付いた。
「えっ!?ア、アアアアアルマたん!?どうしたの!?」
急に甘える様にスリスリと頬を擦り付ける私に、リウグレットは焦りながらもしっかりと私の腰は抱く。
私はそれを振り解きたいのをぐっと堪え、上目遣いで首を傾げた。
「リウグレット様、ラーシュの所に行ってもいいですか?攻撃魔法を教えて貰いたいのです。」
「はわわわ、超絶可愛いッ…!け、けど、駄目!昨日もライナの所へ行ったばっかりでしょ!?今日はパパと過ごしてくれないと…」
そう言いかけたリウグレットは、私のうるうるした瞳を見て動きを止める。
「意地悪…こんなにお願いしてるのに…」
「う、あ…で、でも、パパだってアルマたんと…」
「私、リウグレット様と一番一緒に居るではないですか。リウグレット様は魔法を習ってもいいと仰っていたのに、嘘を付くのですか…?」
「…っ」
リウグレットはがっくりとうなだれると、ヤケクソとばかりに私をぎゅうぎゅう抱き締めた。
「分かったよ!もう、なんて小悪魔なの!?でも可愛いから許しちゃう!私のバカ!」
ふっ、勝ったわ。
私はすぐにルアにラーシュを呼んで貰うと、意気揚々とラーシュの神殿へと移動する。
ラーシュは相変わらずの無愛想っぷりで私を神殿の中に通すと、すぐに大きなホールの様な場所に案内された。
「アルマリージュ、お前はまだ病み上がりだろう?それなのに、攻撃魔法の強化などしていていいのか?」
少し眉を下げるラーシュに、私は腰に手を当て頬を膨らます。
「過保護ね!大丈夫でなければリウグレット様が寄越すわけ無いでしょう?さっ、バンバン指導してちょうだい!」
よしこい!とばかりに胸を反ると、ラーシュは呆れたように順番に攻撃魔法を教えてくれた。
新しい魔法から細かい調整まで一通り習い終わると、私はあることを思い付く。
「そうだわ。私ね、今度男性に変化して殿下に張り付こうと思っているのよ。それなら、男性の動き方も学んだ方がいいわよね?ちょうどいいからついでにラーシュに見て貰おうかしら。」
そう言って私はすぐに男性姿へと変化すると、ふとリウグレットが言っていた事を思い出した。
…そういえば、リウグレット様はラーシュの前で男性姿になるなと言ってたわね。なぜかしら?
リウグレットに言われた事をぼんやり思い出していると、いきなりガバリと後ろから抱き締められ、前につんのめる。
「わっ!?ちょっ、ラーシュ!?な、何!?いきなり抱き付いたら転ぶ…」
注意しながら何とか後ろを振り向くと、そこには見たこともない様な蕩ける笑顔を浮かべるラーシュがこちらを凝視していた。
「アルマリージュ…俺の運命は君だったのか?どうりで探しても見つからないと思った…」
ラーシュは目を閉じちゅっちゅっと私のうなじや耳、頬にキスすると、髪に顔を埋めてすーっと息を吸い込む。
そのおかしな様子に私は思わずそのままの体勢で固まった。
え、え。
な、何これ。
あれ、ラーシュって、そういう…
そして、自分の間抜けさを呪った。




