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58、移動


「…ひっく。」


起きた時にはもうさっきの夢の内容は忘れてしまっていたが、私は悲しみで酷く痛む胸を押さえる。


うぅ…何だか凄く悲しい夢を見たみたい。

こんなに泣くなんて、久し振りだわ。


ベッドの上で収まらない涙を手で拭っていると、そこへ

「アルマたん!?」

とぎょっとした顔のリウグレットが駆け寄って来た。


「ど、どうしたの!?そんなに泣いて…!怖い夢でも見ちゃったのかな!?」


慌てて私を慰めようとするリウグレットを無視していると、そこに続けて

「アルマリージュ?」

とライナの声が聞こえ、私はハッと顔を上げる。


「あれ、泣いてる…!?」


「ライナお兄様ぁ!!」


私はライナの姿を見つけるとベッドから飛び出し、ライナに抱き付いた。


「えぇぇえ!?アルマたーん!?」


後ろからリウグレットの叫ぶ声がしたが、私はライナに甘えるのに夢中でそれどころではない。


すりすりすりすりライナの首筋に顔を頬を擦り付けていると、ライナが心配そうに私の頭を撫でてきた。


「アルマリージュ、どうして泣いていたの?」


「ライナお兄様、私凄く寂しくて…。このままライナお兄様の神殿に連れて行って下さいませんか?ライナお兄様と離れたくないんです…」


寂しさの余りここぞとばかりにライナに甘えまくる私に、ライナは私を強く抱き締めてくれる。


「アルマリージュ、泣いてしまう程私が恋しかったの?あぁ、なんて可愛いんだろう。私もアルマリージュが居なくて寂しかったよ。僕の神殿に行きたいの?そしたら、リウグレット様にお願いしておいで。許可が出たら一緒に行こうか。」


「はいっ。」


私はライナに笑顔で頷くと、リウグレットの元にとととと小走りで駆け寄った。


「だ、駄目だからね!ライナの神殿には…」


こちらが何か言う前に速攻却下しようとするリウグレットを黙らせる為、私はリウグレットに抱き付きおねだりを始める。


「リウグレット様、行っても良いですか?遊びに行くだけですもの、優しいパパなら許可して下さいますよね?」


「ぐ…っ」


潤んだ瞳でじーっと見つめると、リウグレットが震えながら歯を食いしばっていた。


もうちょいだな…

と私は今度は背伸びすると、

「はぁ。行かせてくれなきゃ拗ねちゃいます。」

と頬を擦り寄せながら耳元で囁く。


すると突然リウグレットが私をぎゅううっと抱き締めると、叫ぶように悶絶した。


「アッ、アルマたぁあん!何てこと耳元で囁いてるの!もうっもうっ!分かったよぉ、帰ってきたらパパにも甘えてくれるなら、ライナの所に行ってもいいよ!でも、日帰りだからね!」


「ん~…分かりました。」


私は許可が取れた途端リウグレットの腕からするりと抜け出し、すぐさまライナの元へ戻り飛び付く。


リウグレットは唖然としていたが、気にせずライナに報告した。


「ライナお兄様、リウグレット様から許可頂きました!早くおうちへ帰りましょう?」


「そうだね、行こうか。」


ライナは私を抱きかかえリウグレットに挨拶してから神殿へ転移すると、そのまま中に入り以前も通された部屋のクッションの上に腰を下ろす。


「アルマリージュ、今飲み物を用意させるからね。ところで、魂の方はどうかな?ちゃんといい子に療養していたか確認しようね。」


ライナはそう言って柔らかく微笑むと、私と額同士をくっつけ目を閉じた。


「…うん、だいぶ良いね。もう一度リウグレット様に眠らせて頂ければ完璧かな。すぐ帰りたければ送ってあげるけど、回復魔法なんかの強化もしてあげたいし、完治しても少しだけ滞在出来る?どうせならラーシュにも攻撃魔法を教わっておいで。その方がいいだろう?」


「そうですね、そうします。」


言いながらライナの首に腕を回しぎゅっと抱きつくと、ライナも私の腰を抱く。


あぁ…ライナお兄様と居ると何でこんなに安心するんだろう…

ずっとこうしてたい。


はふ…と安心の溜め息を吐くと、ライナが息を飲む音が聞こえた。


「あ…ライナお兄様、苦しいですか?ごめんなさい。」


「ううん、大丈夫。ところでアルマリージュ。聞きたいことがあるんだけど…。あの王子や獣人とは…何でもないんだよね?あの屋敷に居た男達はアルマリージュにかなり執着していたから…もしや誰かと隠れて恋人同士だったりするのかと思って…」


ライナの言葉に私はきょとんとする。


ライナお兄様もシスコンだからなぁ。

人間界にいるお兄様と同じで悪い虫が付くのが心配なのかしら。


私はふるふると首を横に振ると、ライナににっこり笑った。


「いいえ、恋人同士ではありませんわ。まぁ、アプローチはされておりますが…女神は人間とは結婚できないのでしょう?相手の方にも申し訳ありませんし、私は人間界で恋人を作るつもりはございません。」


だってそう遠くないうちに私は死んでしまうだろうし、結婚なんて出来ないだろう。


私がそう言うと、ライナは悲しそうに目を伏せた。


「そっか…そうだね。もし、こちらから迎えに行く事になったら、アルマリージュには痛い思いはさせないからね。」


「ふふっ、本当ですか?是非、お願い致します。」



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