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57、眠り


?何を忘れていなかったのかしら?


不思議に思いながらも問いかけてみるも、ラーシュはそれに関しては教えてくれるつもりは無いらしく、あからさまに口を閉ざしてしまう。


仕方無く別の話題をと思った所で、私はギルダと双子の事について聞いてみる事にした。


「ラーシュ、実は私のせいでギルダお兄様と双子が眠らされてしまったらしいの。どうにかして助けられないかしら。」


一番五月蠅いとは言え、三人が居ないと静かすぎる。

それに、私もこうして生きているのだし、何も眠らせなくてもいいではないか。


するとラーシュは首を横に振ってから、眉間に皺を寄せた。


「…無理だろうな。あの三人はリウグレット様の逆鱗に触れたんだ。当分目覚める事は無いだろう。」


逆鱗って…あの人の娘ラブは異常だわ!


「…私って他の男神や女神から何て言われてるのかしら…なんか、リウグレット様のせいで凄く嫌われている気がするわ…」


「男神は皆アルマリージュを愛しいと思っているよ。女神にも別に嫌われてはいないが…ただ、最近リウグレット様が入殿を拒んでいるから、不満は溜まっているかもしれないな。」


アイツのせいでとばっちりじゃない!


私はラーシュの方を向くと、真剣な表情で手を握る。


「ラーシュ、貴方の神殿に私を泊めて頂戴!ここは嫌!女神達から嫌われるのもまっぴらよ!」


「いや…まぁ、俺はいいが…。リウグレット様がなんて言うか…」


「だめに決まってるでしょ!?」


噂をすればさっきから大して時間も立っていないのにも関わらず、様子を見にきたリウグレットがズカズカと部屋に入ってきた。


「リウグレット様、私は別にリウグレット様のご趣味をどうこう言うつもりはありませんわ。いくら私が嫌悪しようが、そんなの個人の自由ですもの。ですから、私の目の届かない所でお好きにされれば宜しいのです!私はラーシュの所に泊めて貰いますので、リウグレット様はどうぞ女神達と仲良くなさって下さいな。」


満面の笑みでリウグレットに出て行きます宣言をすると、リウグレットはぐっと呻き声を上げて歯を食いしばる。


「だから!パパも好きで女神達と仲良くしてる訳じゃないんだって!黙ってても寄って来ちゃうんだよ、いちいち追い払ってたらキリがないから入れてるだけであって…」


うわぁ、出たよ。相変わらず最低だわぁ…。

結局は部屋に入れてベッドに上げてるんだから同じだろう。


しらーっとした目で言い訳するリウグレットを見つめていると、リウグレットはそれに気付いてやけくそ気味に私の目元に手をかざした。


「もうっ、とにかくアルマたんがここから別の神殿に移ることは許しません!はい、もうさっさと寝る!話は完全に回復してからね!」


「わ!ちょっ…ふぁ…」


リウグレットに手をかざされた途端ぐわんと眠気が襲ってきて、そのままぼふんとベッドに倒れ込む。


まだラーシュとも話の途中だったのに!

と憤ったが、睡魔には勝てずそのまま深く意識が沈んでしまった。


しばらくして

「アルマリージュ、アルマリージュ。」

と名前を呼ばれ目を開けると、髪も肌も真っ白な男神が私をのぞき込んでいる。


「わっ!」


誰!?と慌てて起き上がると、私の顔を覗き込んでいた男神と額をぶつけ、二人で悶絶した。


「いたた…。アルマリージュ、大丈夫?ごめんね、びっくりさせちゃったね。」


額を押さえながら申し訳無さそうに謝ってくる彼に、私は何故だか胸が苦しくなる。


全然知らない人なのに、凄く懐かしい感じがする…

どうしてだろう、泣きそうになってきた…


瞳に涙が溜まり始めると、彼は慌てて私を抱き締めた。


「あぁっ、泣かないで!ごめんね、痛かったね?ほら、痛いの痛いの飛んでけ!」


そう言って回復魔法を掛けてくれる姿にきゅんとして、私は甘える様に彼の胸に顔を擦り付ける。


すると私を抱き締める力が強くなり、頬に何度もキスされた。


「ふふ、こんなに凛として美しいのに僕のアルマリージュは甘えん坊だね。可愛いなぁ。」


…あれ、私、この人の事…


柔らかく微笑む彼の表情も優しい声も愛しくて堪らなくて、私は様々な想いが溢れてくる。


ついには抑えている事が出来なくなり、泣きながら彼に縋った。


「…寂しかった。どうして、私を置いていってしまったの?大好きだったのに、愛してたのに。一人で居なくなるなんて酷い。私も一緒に連れてって。」


自分でも何を言っているのか分からなかったが、やっと会えたと言う気持ちが心の奥にあった不満を吐き出させる。


そんな取り乱す私を彼はオロオロしながら慰めて来て、優しく頭を撫でてくれた。


「アルマリージュ、どうしたの?僕はここに居るよ。それに、どこへも行ったりしない。愛しい君ともうすぐ神殿で暮らせるんだもの。やっと君を心置きなく独り占め出来るっていうのに、居なくなる訳ないだろう?」


嘘つき。

居なくなるじゃない。

もう戻ってこない癖に。


彼の事なんて知らない筈なのに、私の心がずっと悲鳴を上げている。


私はいくら慰められても泣き止む事は無く、そのまま彼の腕の中で意識が遠のいていった。



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