55、夢の中
しかし転移した先は鍛練場では無く、何故か領地の自分の部屋だった。
「あ、あれ…」
「アルマリージュ。」
ハッとして名前の呼ばれた方を振り向くと、そこには困ったような表情のライナが立っている。
私はすぐにこの転移先の変更ががライナの手によるものだと感づいた。
「ライナお兄様、酷いです!私今から知人と武器談義を始める所だったのですよ!」
私が頬を膨らませると、ライナは私の頭を撫でて宥めてくる。
「ごめんね、アルマリージュ。でもね、無理をしすぎだよ。身体は元気になったけど、アルマリージュの魂はまだ回復していないんだ。今頻繁に魔法を使用するのは良くない。辛いかもしれないけど、そろそろ神界にも戻らないと…」
ええっ、もう戻るの!?
帰ってきたばっかりじゃない!
ショックで固まる私を見て、ライナは「ごめんね。」とまた謝ってきた。
「…ライナお兄様が悪いのではありませんわ。自業自得ですもの。でもこの前の様に急に倒れれば屋敷の人間がパニックになってしまいます。どうにか説明しますので、少し待って頂けませんか?」
とは言ってもなんと説明すればいいのやら…
私が悩んでいると、ライナが「心配しなくても大丈夫だよ。」と私に微笑む。
「こちらの事はあまり騒ぎにならない様、私が何とかするよ。アルマリージュは安心して回復に専念しておいで。」
でもそれだとライナは人間界に残る事になるのではないか。
私は神界にライナが居ないのはかなり不安だった。
「ライナお兄様は神界に戻られないのですか?私、ライナお兄様が居ないと不安なのです。ライナお兄様も一緒に戻りましょう。」
だってライナお兄様が居ないとなると、まともな人が居ないではないか。
あのリウグレッド様と四六時中一緒とか、絶対嫌だ。
私がライナを必死で見つめていると、ライナは頬を染めて視線を逸らす。
「困ったな、何て可愛いお願いだろう。…分かったよ、何とか通いで頑張ってみる。でも、ずっと一緒は難しいけど、それでもいい?」
ライナの言葉に私は嬉しくなって、ライナに抱き付いた。
「本当ですか!?嬉しい!ライナお兄様、ありがとうございます!」
喜ぶ私を抱き締めて、ライナは私の髪にすりっと頬を擦り付ける。
「アルマリージュにこんなに甘えて貰えるなんて、幸せだな。…さぁ、じゃあそろそろ神界へ行こうか。アルマリージュはいつもの様にベッドで眠るだけで大丈夫だよ。私はやることがあるから、後から行くからね。」
私はライナに促されいつも通りベットに横になった。
早く眠れる様にとライナが頭を撫でてくれ気持ち良く眠ったかと思ったが、次の瞬間には一番会いたくない顔が目の前にあり思わず悲鳴を上げそうになる。
「アルマたん、おかえりぃ!もう無理しすぎたよーっ!パパ心配で心配で夜も眠れなかったよぉ!」
嘘付け、どうせ女神を侍らしていた癖に…
私がじとっとした目でリウグレットを見ると、リウグレットは頬を膨らませて怒った。
「もう!アルマたんが嫌なら女神は神殿には入れないって言ったでしょ!ちゃんと約束は守ってるもん!」
相変わらず勝手に心を読むリウグレットに呆れながら、私はギルダと双子がどうなったか気になり訊ねてみる。
「ん?あーあの三人ね!アルマたんに怪我させちゃったんだから、只で済む訳ないでしょ?今はそれぞれの神殿で眠らせてるよ。」
「なっ…眠らせてるって何ですの!?」
私が慌てて起き上がりリウグレッドに迫ると、リウグレッドは首を傾げた。
「そのままの意味だけど?私の一番大事なものを傷付けたんだから本当だったら消滅させてもいい位だけど、アルマたんが悲しむかなぁと思って眠らせるだけにしたんだ。ふふ、パパも優しい所あるでしょ?」
それのどこら辺が優しいのよ!
そう思いながらも、三人が消滅させられていない事だけは分かってほっとする。
「それなら、もう起こして下さいませ!私まだ彼らに何も教わっておりませんわ!」
「んーそれは無理だよぉ、パパまだ怒ってるもん。今起こしたら逆に何するか分かんないよ。アルマたんが居る間にパパの気が変われば起こして上げようかなぁ。だから、アルマたん次第だね!」
リウグレッドの言葉にムカッとしたが、たぶん私が怒っても気は変わる事は無いだろう。
私は仕方無く、時間を置いてからもう一度交渉することにした。
「…分かりました。それなら、今日はラーシュの所に行っても良いですか?攻撃魔法を教わりたいので。」
こんな所に居たら苛々してしょうがない。
私がそう言って部屋から出ようとすると、リウグレッドは慌てて私の腕を掴んだ。
「ちょ、アルマたん何言ってるの!ライナにも回復に専念しろって言われたでしょ!?今日は駄目!しばらくはベッド生活だよ!」
はああぁ!?




