51、緊急
えぇぇぇ!?
「ま、マグリッ!!」
私は慌ててマグリを呼ぶと、マグリは素早くリーヴス殿下の短剣を叩き落とす。
そのままにしておくとまた何かやらかしそうなので、私はリーヴス殿下に飛び付く様にぎゅうっと抱き付いた。
「殿下…お気を確かに!」
「うう…アルマが死んでしまう所など、見たくないんだ…!アルマが死んでしまったら、生きて行けない…!」
いや、まだ死ぬつもりないんですけど。
私は苦しくて息を乱しながら、リーヴス殿下の背中を撫でる。
「殿下、早まらないで下さいませ。私、まだ死んでおりませんわ…。そんなにすぐ死ぬつもりも御座いませんし…」
早とちりもいい所なリーヴス殿下に若干呆れながら、私はこんなにガタガタの精神状態のリーヴス殿下を果たして王都に帰して大丈夫なのかと心配になった。
「アルマ、アルマ、死なないで。私を置いて行かないで。私はアルマに何ができる?何でもする。何か言いつけてくれ。」
王子に何か言いつけるなんて…と私が困っていると、リーヴス殿下はマグリに
「殿下、早く横にして頂けませんか。その体勢は辛いと思いますので。」
と言われ、ハッとして私を横たわらせる。
マグリが普通に喋った事にも気付かず不安そうに私を見つめるリーヴス殿下に、私は仕方なくリーヴス殿下の手を自分の頬に当てた。
「…しばらくこうして頬を撫でていて下さいませんか?殿下にこうして頂くと安心するのです。…途中で寝てしまうかもしれませんが…」
正直もう体力が限界だったのでこのまま寝かせて欲しかったが、心配させない様一応微笑む。
そしてリーヴス殿下がゆっくり私の頬を撫で始めたので、寝てしまう前に釘をさしておいた。
「私が寝ている間に変な事を考えては駄目ですよ?もしまた同じ事をされたら、私も後を追います。」
自分のせいで王族を死に至らしめるなど、考えただけでぞっとする。
そんな十字架を背負って生きていけない。
私がそう言うと、リーヴス殿下は目を見開いてからぐっと唇を引き結ぶ。
そのまま私の額に自分の額を合わせて、不穏な事を囁かれた。
「…分かった。アルマ、愛してる。死ぬ時も一緒だよ。」
…。
とりあえずリーヴス殿下の発狂自害は阻止できたので、私はそのまま現実逃避も兼ね眠ってしまう事にした。
そして眠りについて少し経った頃、ここ数日夢に出て来なかったので安心しきっていた所にリウグレットが現れた。
「緊急事態なので、ライナを派遣します!!」
「は?」
ぽかんとしていると、リウグレットはパチンと指を鳴らしライナを転移させる。
「ライナお兄様!」
「アルマリージュ!!」
ライナは転移してすぐ私を抱き締めると、無事であるかどうかすぐに確認して来た。
「あぁ…アルマリージュ。僕が行くから安心して。アルマリージュの治癒魔法で治らなかった所は僕が治してあげるよ。」
え?ライナお兄様が人間界に来るの?
私がリウグレットを見ると、仕方無いとでも言いたげに頷く。
「アルマたんの傷、今回はアルマたんの下手くそな治癒じゃ追い付かない位酷いんだ。もうぐっちゃぐちゃ。ライナを派遣してさっさと治さないと手遅れになりそうなんだもん。」
何気に酷い言われようだ。
「とりあえず、明日からいつもアルマたんを診察している医師の所に研修医として送り込む予定だから、アルマたんもそのつもりでね。あ、ライナ。バレない様気をつけるように!」
「分かっております。」
ライナは私を見て頭を撫でると、
「じゃあ、アルマリージュ。また明日ね。」
と頬にキスして消える。
私もそのまま眠りについて目を覚ますと、視界いっぱいにリーヴス殿下の顔があった。
「アルマ…ッ目が覚めたの?あぁ、だいぶ顔色がいいね。」
ペタペタと顔を触り至近距離でじっと見つめて来るリーヴス殿下を、いつの間にか帰って来ていたお兄様が注意する。
「殿下、妹は病人なのですからそっとしておいて下さい。それに、いつまでも殿下が城を空けている訳にはいかないでしょう。妹には私が付いておりますので、ご心配なさらずとも…」
「嫌だ。未来の妃がこんな状態で不安であろう時に、夫が側に居ないでどうする。それに、私達は死する時は共にと誓い合ったのだ。私はここでアルマがある程度回復するのを見届けなければ帰らない。」
お兄様はリーヴス殿下の言葉に
「…未来の妃?」
と明らかに不快な表情をしていたが、何も言わずにリーヴス殿下を睨んだ。
明日になったらライナお兄様が来てくださるし、たぶん今よりかなり良くなると思うのよねぇ。
そしたら転移魔法でリーヴス殿下も送って差し上げられるし、陛下にも許可取ってるって仰ってたから、見えない所でおかしくなられるより、良くなった姿を見せてから安心してお帰り頂いた方がいい気がする。
私はそう思って
「リーヴス殿下、では大変恐れ入りますが、負担にならない程度にお願い致します。」
と言うと、お兄様は驚愕し、リーヴス殿下はにこやかに頷いた。




