47、戻る
神殿に着くと、そこには双子のガルとエルが既に待っていて、私を見るなり駆け寄ってくる。
「アルマリージュ!待ってたよ!今日も綺麗だね!」
「会いたかったよー!」
二人揃って抱きつこうとして、ギルダが私ごとそれをかわした。
「はいはい。そんな事してる暇ねーの。今日はアルマリージュに体術と剣術教えるんだから。アルマリージュ、先に俺の武器見るか?気に入ったのがあればやるぞ。」
何ですと!?
私が頷くと、双子は不満そうに文句を垂れる。
「アルマリージュが武器なんて振り回すの想像できないんですけど。」
「ほんとほんと。アルマリージュは花を愛でてるイメージだよね。」
ハッ。花を愛でてるだけじゃ国は守れないのよ!
私は双子の方を見てにっこり微笑んだ。
「ふふ。私、こう見えて何百年も最前線で戦って参りましたの。後で是非お相手して下さいね。」
私の言葉に、双子は
「アルマリージュの相手…思いっきり手加減しても怪我しちゃうんじゃ…」
なんて心配している。
そんな双子を見ながら、私はギルダに武器を見せて貰うため神殿を案内して貰った。
「これが、俺の武器庫だ。アルマリージュはどんな武器が欲しいんだ?」
ギルダに案内して貰った部屋は壁一面全て武器が掛かっていて、何とも夢の様なその空間で私はうっとりと溜め息を吐く。
「そうですわね…私、人間界でも今は女ですから、機動性と俊敏性に特化したタイプの武器がいいですわ。」
「…アルマリージュの可愛い唇から出たとは思えない台詞だな。それなら、双剣か、片刃の剣はどうだろう。」
ギルダが勧めてくれたのは刀身が短く二本が対になっている双剣と、細く長い刀身の片刃の剣だった。
「わぁ、素敵。どちらも試して宜しいですか?」
「あぁ。では、庭に移動するか。」
ギルダは二種類の剣を手に取ると、すぐに庭へと転移する。
そこでまずは双剣を手渡され、私はウキウキしながらそれを構えた。
「持った感じもしっくり…。」
うっとりしながら地を蹴り、回転しながら双剣を振ると、希望通りの機動性で隙が少なかった。
うん、理想的ね。
ただ一撃が弱いから連撃する必要があるわ…体力面が課題かしら。
三人は、立ち回りを変え双剣を振る私を見て呆然と立ち尽くしている。
次は私の背丈程もある片刃の剣を試してみた。
こちらは両刃の剣よりも軽量とはいえ、長さがある為両手で構える。
そのまま地面を抉るスレスレで下から切り上げると、空気抵抗の感じからかなりの切れ味がありそうなのが分かった。
うん、こちらもいいわね。
双剣より隙は多いけど、一撃の威力が高いわ。
それにリーチが長いし、思ったよりも動けそう。
「ギルダお兄様!私どちらも気に入ってしまいました!両方は駄目ですか?」
私が声を掛けると、ギルダはハッとして近付いてくる。
「あ、あぁ。両方欲しいのか?アルマリージュが欲しいと言うなら、両方やろう。」
そう言いながら、ギルダも魔法で自分の背丈より大きい大剣を取り出した。
「折角だから、このまま模擬戦と行かないか?稽古を付けてやる。」
「まぁ!本当ですの?是非お願い致します!」
真剣でやっちゃうの?
と思ったものの、私はまぁいいかと双剣に切り替えギルダの前で構える。
「え?本当にやるの?アルマリージュと?」
戸惑う双子を尻目に、私はすぐにギルダに切りかかった。
ギルダの持つ大剣はかなりの重量そうだが、ギルダはそれをいとも簡単に操る。
私は足に加速の魔法を掛けると勢い良く踏み込む事で威力を上げ、連撃で応酬した。
「ははっ、アルマリージュが戦闘狂になっていたとは。気が合いそうだ。」
私の攻撃を弾き切りかかってくるギルダを避けながら、すぐに反撃に出る。
「戦闘狂などではありませんわ。令嬢の嗜み程度ですもの。」
「これが嗜みなら、人間界の騎士の打ち合いはただの戯れになってしまうぞ。」
しばらく打ち合っていたが当然ながら私がギルダに敵う筈もなく、打ち返された反動でそのままふっ飛び近くにあった木に背中を強打した。
「ごぼ…ッ。」
ひー。手加減無しとか鬼だわ。
肋骨と内蔵やられたわ。
口から吐血しながらズルリと根元に倒れると、三人共すぐに転移して来る。
「いや、すまんすまん。つい本気を出しちまった。痛かったろう?でも待っていれば勝手に自然治癒するからな。」
ギルダはそう言うも、私の傷は一向に治る気配が無かった。
それどころかどんどん意識が薄れ、呼吸も出来なくなって来る。
「…大変だギルダ、アルマリージュ全然回復してないよ!?」
「…なんだって!?そんな筈は…」
「マズい!すぐにリウグレット様の所に連れて行かないと!」
慌てた三人は私に負担が掛からない様そのままの体勢で宙に浮かせると、急いでリウグレットの神殿へと転移した。
転移してすぐ、私を見て血相を変えたリウグレットがギルダ達三人を魔法で壁に叩きつけ、私をベッドに寝かせる。
「お前達、何て事をしてるんだ!?アルマたんの本体は人間界にあるんだぞ!まだ完全に女神に戻っている訳では無いんだから、こちらで何かあればあちらの肉体が死んでしまうだろう!」
どうやらこちらで治療魔法を掛けたとしても私の傷には全く効果が無いらしく、一度向こうに帰って自分で本体を回復させる必要があるらしいとの事だった。
いや、まぁ予想外に早く帰れるみたいで良かったのか…
あ、でもまだ翻訳の魔法陣教えて貰ってないや。
「アルマたん、そんな事言ってる場合じゃないよ!戻ったらすぐに魔法で治療して!モタモタしてたら意識が飛んで死んでしまうんだから!」
それは困る。
リウグレットは慌てて私に手をかざすと、すぐに身体を光が包み込む。
次に目を開けるとそこは見慣れた人間界の天井で、私は意識が戻った瞬間今度は人間の身体で吐血した。




