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45、神界5


「は?まぁ、分かりま…」


「あぁーッ、本当に居た!アルマリージュ!!会いたかったよーッ!!」


私が頷こうとしていきなり後ろからタックルされ、私はリウグレット様の胸に思いっきり倒れ込む。


しかしすぐにグンッと引っ張られ今度は後ろに下がると、前と後ろから同時に抱き締められた。


「アルマリージュ、アルマリージュ…ッ凄い、本物だ!何百年ぶりだろう…ッ」


「あれ、もしかしてお風呂に入ってた?凄くいい香りがする…!あぁ、僕達も一緒に入りたかった!」


二人に挟まれる様にぎゅうぎゅうと押し潰されていると、「おい、やめろ。」と言う声と共に誰かが私を引っ張り出す。


顔を上げてその人物を確認すると、黒髪と白髪が半分ずつの目つきの鋭い男が私を見下ろしていた。


「…ラーシュ。」


思わずそう呟くと、周りがざわつく。


「アルマリージュ、アルマリージュ!それなら、僕達は?僕達の名前は分かる!?」


そう言って先程まで私を前後から抱き締めていた二人が、同じオレンジのおかっぱを揺らし顔を並べた。


しかし私がフルフルと首を横に振ると、同時にがっくりと肩を落とす。


「…えー…何でラーシュの名前だけ思い出したの?リウグレット様~、アルマリージュはこっちの事忘れてるんじゃなかったの?」


唇を尖らせ文句を言う二人に、リウグレット様は真剣な表情で考え込んでいた。


「ん~…何でだろうね。もしかするとこちらに居れば居るほど記憶が呼び起こされるのかも。ま、ラーシュの件はたまたまでしょ。私の事だって何にも思い出して無いんだし~。」


あぁ、拗ねてるなこれは。


私が呆れていると、そこにライナとギルダもやってきて、私の側に駆け寄って来る。


ライナが腕を広げているのを見て、私は思わずライナに抱き付いた。


「アルマリージュ!大丈夫!?何もされてないかい?」


「はい、ライナお兄様。」


私がにこにこ見上げると、ライナはホッとした様に私の頬を撫でる。


が、それを見て横に居たギルダが血相を変え抗議してきた。


「アルマリージュ!だから、何でライナばっかり…!!俺だって居るだろう!?ほら、こっちに来い!」


腕を広げて待っているギルダを横目に確認しながら、私はライナの胸に頬を付ける。


「だからギルダお兄様は嫌だと言ったではありませんか!」


「何でだよ!俺だってお兄様だろ!?」


私はギルダを無視して、ふいっと顔を逸らした。


同じお兄様らしいが、ギルダは危険な気がする。

それに対してライナと居ると何故だか安心して、ついつい甘えてしまうのだ。


あとはさっきからもの凄くこちらを見つめているラーシュだが…


「ラーシュ、貴方、私が居なくて寂しかったのではなくて?神殿でずっと一人で居たのでしょう?」


ラーシュを見ていたら口からそんな言葉が出て来て、私は驚きの余り口元を抑える。


するとリウグレットが私をさり気なくライナから引き剥がしながら、ぽんぽんと頭を撫でて来た。


「ラーシュは男神の中では珍しいタイプの子だからねぇ。アルマたんもラーシュの事いつも心配してたからなぁ。」


成る程。

言われてみればラーシュが今までどうしていたのか気になって仕方ない。


私が黙って動かないラーシュをチラチラ気にしていると、双子がそれを遮るように前に出て来た。


「アルマリージュ!僕達だってすんごく仲が良かったんだよ!?」


「そうそう、将来は僕達の神殿で三人で暮らそうって約束してたんだから!」


「あぁ!?ガル!エル!適当な事言ってんじゃねぇよ!そんな約束アルマリージュがする訳ねぇだろうが!」


三人が言い合いを始めると、リウグレットは呆れた様に溜め息を吐く。


「あ~本当に煩い。大体さぁ、君達何しに来た訳?アルマたんを見に来ただけならもう用は済んだんだから帰ってくれない?」


「帰るわけないじゃないですか。リウグレット様、アルマリージュの神界での家は花殿です!ここでリウグレット様と過ごさせる訳にはいきません。」


ライナの言葉に、兄弟達が一斉にリウグレットを睨んだ。


え?なに?私、家あったんだ?


私がリウグレットを見上げると、リウグレットは私の腰を抱きながら髪に唇を這わせる。


「やだよ。何で君達にそんな指図されなきゃいけないの?短期間しかアルマたんと過ごせないのに、花殿に送るわけないでしょ?それに、魔法も教えないといけないしね。」


あ~うん…

魔法ね…いつ教えてくれるのか分かんないけど。


私が困っていると、ライナは私の方を向いた。


「アルマリージュ、リウグレット様に何を教わりたいの?翻訳の魔法陣以外にもあるのかな?」


「そうてすね。あとは変化の魔法と、攻撃魔法の強化、補助魔法なんかの調整、体術や剣術なんかの戦闘力も上げておきたいですわ。」


「はぁ!?あの淑やかなアルマが体術ぅ!?」


ギルダお兄様がギョッとして声を上げていたが、ぶっちゃけここでやれる事は出来る限りやっておきたい。


私がライナにそう伝えると、ライナはにっこりと笑う。


「それなら、攻撃魔法はラーシュに、補助魔法の調整は僕が、体術や剣術はガルとエル、ギルダに教えて貰えばいいよ。それ以外の特殊魔法はリウグレット様でないと無理だからね。」


「えっ、良いのですか!?」


「ちょ、アルマたん!?駄目に決まってるでしょ!」


リウグレット様にしか教われないとなるといつまでも先延ばしにされそうで不安だったのでライナの提案に喜んでいると、リウグレットがそれをすぐさま却下した。


むむ…ここは何とかライナお兄様の提案通りにしたい。


私は自分に気合いを入れると、リウグレットにぎゅうっと抱き付き甘えるように見つめる。


「パパ…アルマ、お兄様達にも色々教わりたいの。ね、お願い。」


「ア、アルマたんがおねだり…ッ!?」


そしてその場で鼻血を噴いたリウグレット様から、無理矢理許可をもぎ取ったのだった。



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