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43、神界3


!?次から次へと何なのよ!


私は殴り飛ばされたライナに駆け寄ると、急いで様子を窺う。


「ライナお兄様!大丈夫ですか!?」


「っつ…痛て。うん、大丈夫だよ。アルマリージュはどこも怪我はない?」


腫れた頬で自分より私の心配をする兄に、私は妹として男をギッと睨んだ。

ところが男は怒りでそれどころでは無いらしく、震える拳を堪えライナを鋭く睨んでいる。


「ライナ!!お前、アルマリージュに何をした!?可哀想に、泣いてるじゃないか!!」


…は?


男の言葉に私が唖然としていると、男が尚もライナに殴りかかろうとして、私は慌ててライナに覆い被さる様にそれを庇った。


「!?アルマリージュ!?何で…」


「ライナお兄様に乱暴しないで!!」


私がぎゅっとライナの頭を抱き締めると、ライナは感極まった様に「アルマリージュ…」と呟く。


するとそれを見た男は愕然と拳を下ろすと、その場でいきなり泣き崩れた。


「アルマリージュ…!!お前、やっと帰ってきたと思ったら、俺の知らないうちにライナと…!?いつだ!?いつの間にそんな事になった!?」


私がぽかんとしていると、男は灰色短髪の自分の髪をグシャグシャと掻き乱す。


さっぱり訳が分からなくて助けを求めて抱き締めていたライナを見ると、こちらもこちらで真っ赤な顔でぼうっと私に見とれていた。


何コレ…カオス。

カオスだわ。


仕方無く私は自分で収拾するしかないと、男に話し掛ける。


「良く分かりませんが…私は先程神界に来たばかりで、ライナお兄様の神殿に来たのもほんの数分前です。何を仰ってらっしゃるのかさっぱり分からないのですが…」


すると男はガバッと顔を上げ、私を見た。


「本当か!?ライナとはまだ何も無いんだな!?」


「え、あ、はい。」


何かあるわけ無いだろう。

兄妹なんだから。


私が頷くと、男は急に気持ちを持ち直してわたしの手を取る。


「では、私の神殿へ行こう!」


「え、や、ちょっと…やだ…ッ。ライナお兄様ッ!」


無理矢理私を連れて行こうとする男に、私は焦ってライナに助けを求めた。


するとライナはハッとして私を奪い返すと、自分の腕の中に私を隠すように抱き込む。


「ギルダ、よせ!怯えているだろう。アルマリージュは先程リウグレット様にこちらに連れて来られたばかりなんだ。それに、まだ完全にこちらに帰って来た訳では無いから、我々の事は分からない。」


ライナの言葉にギルダは驚きながらも、私がライナの腕の中に居るのが気に食わない様で手を差し出してきた。


「それならライナの事だって分からない筈なのに、何でそんなに懐いてるんだ。アルマリージュ、俺だってお前の兄だぞ。ライナだけズルい、俺にも抱き締めさせてくれ!」


手をワキワキしながら近付いて来るギルダに、私はライナに更にぎゅっと抱き付く。


「嫌です!私はライナお兄様のがいいのです!どうせギルダお兄様もリウグレット様と同じで、女神達を何人も侍らせて爛れた生活を送っているのでしょう!?」


「あぁ!?俺をリウグレット様と一緒にすんじゃねぇよ!あの方は毎日数十人は侍らせてるが、俺はせいぜい三人…」


「私が何だって?」


そこにリウグレットの声が響き、私達はビクッとしながらも声の方を振り向いた。


「…アルマたん、女神達にはきちんと話して、丁重にお帰り頂いたよ。女神はね、気に入った男神の元に通うのが普通なんだ。アルマたんが居る間はパパの神殿には近付かない様に言ってあるけど、アルマたんが嫌なら金輪際パパはアルマたん以外の女神を神殿に入れたりしないよ。だから、機嫌を直して戻っておいで?」


そう言ってリウグレットは私に向かって微笑む。


別に私だけにしてなんて言ってないだろう。

リウグレットが女神とどうなろうがどうでもいいが、何人も同時に侍らせて必要無い時は袖にするその態度が気に食わないのだ。


「嫌です。私はライナお兄様と一緒に居たいんです。」


どう考えたってライナお兄様がこの中で一番まともだ。


私がつんっと横を向くと、リウグレットは少し考えてふふっと笑う。


「…いいのかなぁ、アルマたん?アルマたんが欲しがってた、翻訳の魔法陣、教えてあげようと思ったんだけどなぁ~。」


リウグレットの言葉に私はピクッと反応した。


翻訳の魔法陣!?

何それ、そんなのあるの!?

もー神って何でも有りなのね!

でも欲しい!


私が聞き耳を立てているのを、ライナが心配そうに見つめている。


「うぅッ…ライナお兄様、本当は嫌だけど、私、リウグレット様の所に行きます!どうしても翻訳の魔法陣が必要なんです!」


「えっ、アルマリージュ!?」


私はライナの腕の中から抜け出すと、リウグレットの側に駆け寄った。


「んふふ…アルマたんったら、いつの間にパパの事名前で呼ぶようになったの?昔は“創造神様”って呼んでたのに。でもリウグレットなら皆と同じになっちゃうから、リウって呼んでごらん?」


「お断りします。リウグレット様で十分です。」


私が拒否すると、リウグレットは口角を上げる。


「ははっ、強気なアルマたんも興奮するなぁ。でも遠慮しないでいいからね。気が向いたらいつでも呼んで?」


何言ってんだこの男は…


私がドン引きしていると、ライナが心配そうに私を見つめていた。


「ライナお兄様、大丈夫です。危ないから、リウグレット様には絶対近付かない様にしますわ。だから心配なさらないで。」


「ちょっと!何パパの事危険物みたいに言ってるの!?普通に近付くよ!?パパ、アルマたん抱き締めていっぱいチュッチュしちゃうもんね!」


そう言って唇を尖らせるリウグレットを避けていると、それまで静かにしていたギルダがリウグレットを睨む。


「リウグレット様、この事は他の兄弟にも伝えます。アルマリージュが居るなら、神殿に通い詰めますから。覚悟しておいて下さいよ?」


「…ん?あぁ、勝手にしたらいいよ。でも、どうにも出来ないと思うけどね。」


リウグレットはそう言って笑うと、私を連れて神殿に戻った。




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