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41、神界へ


朝目が覚めて、私は夢の中で言われた言葉に焦る。


このまま転移すれば速攻仮死状態にされてしまうの

が分かっているのだから、何か出来ないだろうか…


しかし、自称パパ男の事は誰にも話していないし、これから先も話すつもりは無いので、いくら考えても解決策は見つからなかった。


「ん…アルマ?もう起きたの?」


一人で悩んでいると、リーヴス殿下がとても嬉しそうに寝ぼけた顔で笑顔を浮かべる。


うぅ…元はと言えばリーヴス殿下が原因なのに…!!

もう、どうしてくれるのよ~!!


私が少しリーヴス殿下を睨むように見つめると、リーヴス殿下は困ったように眉を下げた。


「あれ、アルマ、寝起きでご機嫌斜めかな?そんな表情も可愛いよ。結婚したらこんな風に毎朝アルマの顔が一番最初に見られるのか…幸せだろうな。」


結婚生活を想像して幸せそうに微笑むリーヴス殿下に、私は

「…帰ります。」

とベッドから出る。


ぐぅ…転移したら本当にすぐ仮死状態になるのかしら?

あぁ、マグリなんて絶対取り乱すじゃない…発狂するんじゃないの?


私が緊張していると、リーヴス殿下が慌ててベッドから出て私を抱き寄せて来た。


「アルマ、もう帰ってしまうの?寂しいよ。次はいつ会える?今夜は?」


もー今夜なんて無理に決まってるでしょう!

今から死んじゃうのよ、私は!仮死だけど!


「申し訳御座いません、殿下。しばらく来れそうにありませんの。イニス殿下にもそうお伝え下さい。では、失礼致します。」


「え?しばらく来れそうにないって…アルマ!」


私はリーヴス殿下の腕から抜け出てさっと距離を取ると、すぐに転移魔法を展開する。


そして屋敷に着いた途端、男の言ったとおりすぐさま意識を失ってその場に倒れた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「…本当に、着いた瞬間仮死状態にされたわね…」


自称パパ男への怒りで叫び出したいのを堪えつつ身体を起こすと、そこは見たことの無い部屋の石台の上だった。


纏っているのは一枚布の様な服で、腰までの長い髪は同じ金髪ではあったが、今の方がキラキラと明るく輝いている。


これは…

神界に来たから、女神の姿に戻ってるのかしら。


私がとりあえず石台から降りようと足を投げ出すと、

「あぁ!危ない!」

と聞き慣れた声が聞こえた。


「アルマたん!そんな高い所から飛び降りようとしないで!怪我したらどうするの!パパが抱っこで降ろしてあげるから!」


自称パパ男は慌てて私を抱き上げると、そっと床に下ろす。


そのままぎゅうぅっと私を抱き締め、うっとり溜め息を吐いた。


「はわわぁ~生アルマたんがようやくパパの腕の中に…!会いたかったよぉ!あぁ、久し振りのアルマたん、美しいぃ~!」


あぁ、ヤバいわこの人。


「ちょ、離して下さい。」


そう声に出して、自分の声音が透き通るように部屋に響き驚く。


「か、かわゆぃお声!アルマたん、もっと喋ってごらん!?そうだ、部屋を移動したらパパにお歌聴かせて!アルマたんの好きだったハープもあるよ!」


弾けるか!

とツッコもうとするも、なんだかまた喜ばせてしまいそうな気がして私はぷいっとそっぽを向いた。


「もう、怒ってるの?アルマたんの好きだった果物沢山用意してあるから機嫌直して?ね?」


そう言って男はパチンと指を鳴らすと、大きな絨毯の上に柔らかそうなクッションが沢山置いてある部屋に転移する。


私は促されるままクッションの一つに座らされ、身体が深く沈み込んだ。


それを見て男は楽しそうに笑うと、魔法で目の前に大量の果物を出現させ、葡萄を千切って私の口元に差し出す。


「ほら、アルマたん、あーんして?」


私がそれを拒むように顔を背けてクッションに顔を埋めると、男は私の身体に覆い被さって来た。


「アルマたん?ほら、お顔見せて。この葡萄凄く美味しーよ?それとも、可愛いアルマたんは拗ねた振りでパパの気を引きたいのかな?」


ちゅっと頭にキスしてくる男にムッとして反論しようと顔を上げると、少し離れた入口らしき所に呆けた顔で立ち尽くすクルクルパーマの男と目が合う。


「ア、アルマリージュ様…?」


クルクルパーマの男の口から私と似た名前が出てきて首を傾げると、自称パパ男は大きな溜め息を吐いて立ち上がった。


「…ルア。空気呼んでよ。せっかく親子水入らずで楽しく過ごしてたのに。何の用?」


「あ、はい!女神達が4名、リウグレット様がいらっしゃるのを寝室でお待ちですが…」


え、寝室?

しかも4人?


私が一気に眉間に皺を寄せると、リウグレットはルアに威圧しながら距離を詰める。


「…何でアルマの目の前で余計な事言うかなぁ?今のでだいぶイメージ悪くなっちゃったじゃん。どうしてくれんの?女神なんかルアが追い出しといてよ。」


「え、む、無理ですよ…!僕の言う事なんて聞いてくれるような方達じゃないですって!リウグレット様が直接お話下さらないと…!」


二人のやり取りを見れば見るほどリウグレットへの印象は最悪になっていった。


4人も女神を通わせといて、人に追い出させるの…?

変態な上に最低だわ…

こんな男が私の父親だなんて…


私が軽蔑しながらリウグレットの後ろ姿を眺めていると、リウグレットは慌てて私の元に戻ってくる。


「ち、違うよ!?別にパパが来いって言った訳じゃないからね!?そ、それにパパが強要した訳じゃなくて、あっちが勝手に求めてくるから好きにさせてただけで…!」


その言い訳に私は更にドン引きしながら、ソファーから起き上がり後ずさった。


「ア、アルマたん!ま、待って、引かないで!誤解だから!パパが愛しいと思ってるのはアルマたんだけなの!今すぐ女神達にはちゃんと話して帰って貰うから、ここで待ってて!ね!?ちゃんと話し合おう!?」


リウグレットは必死でそう言うと、指を鳴らしてその場から消える。


私はそれを確認すると、近くにあったガラスも何も嵌まっていない窓に駆け寄り、すぐさま脚を掛けた。


とりあえず、ここから出よう。

アイツと一緒に居るのヤダわ。



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