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4、刺客


謁見の間に着くと、陛下に呼ばれたリーヴス殿下はそれまでが嘘のように無表情で玉座の近くに控える。


リーヴス殿下が離れてくれた事に安堵しながら、私はお父様とお兄様と共に跪き、お父様に紹介され挨拶をした後許しを得て顔を上げた。


玉座を見ると陛下も王妃様も私を見て嬉しそうに微笑んでいて、その近くではリーヴス殿下が蕩けるような笑みで私を見つめている。

その隣ではそれを驚愕の表情で見つめている第二王子のイニス殿下の姿があった。


「アルマリア嬢は城に来るのは久しぶりだからな。幼い頃とは城内は違って見えるだろう。リーヴス、まずは二人で庭園でも見て回ったらどうだ?」


陛下の言葉に私はギョッとする。


これってお見合い時の

「後は若いお二人で…」

の流れでは!?早くない!?


「そうですね、父上。ではアルマ、行こうか。」


えっ、行くの!?本当に!?


私は焦ってお父様を見るも、陛下のお言葉には逆らう事など誰も出来るわけが無く苦笑しつつも頷かれてしまった。


仕方なく陛下と王妃様に挨拶をし、殿下に再びエスコートされ庭園まで移動する。


「アルマ…迎えに行くのが遅くなってごめんね。不正の証拠を揃えるのに思いの外時間が掛かってしまった。でも君が婚約者も作らず私を待っててくれて嬉しかったよ。」


待ってた訳じゃないんだけど…

っていうかリーヴス殿下が侯爵の不正を告発したのかぁ…それってもしかしなくても私と婚約する為だよね。

いや、もう何それ。怖すぎる。


甘い吐息と共に吐かれるリーヴス殿下の言葉に何と返したらいいか分からず黙っていると、ちゅっと髪にキスされる。


「殿下、いけません!」


「どうして?あぁ、もしかして外だから恥ずかしいの?ごめんね。でも私はアルマが愛しくて仕方ないんだ。これでも我慢しているよ。本当はもっと君に触れたいんだ。」


ひいぃ。

ゾッとする事言わないで!


庭園に入りながら私が戦慄していると、ふいにどこからか殺気を感じ思わず立ち止まる。


「?アルマ?」


リーヴス殿下も私の様子に立ち止まると、私はこっそり魔法で生成した暗器を手に、飛んできた矢を全て叩き落とし、そのまま矢が飛んで来た方向に暗器を投げつけた。


「ぐっ」


暗器はテラスに居た黒ずくめの男の肩に刺さり、男はうめき声を上げその場に倒れる。


「刺客です!殿下、お下がり下さい!」


私が声を上げるのと同時に、騎士が駆け付ける前に現れた新たな刺客に、再び生成した暗器で応戦する。


何度か攻撃を受け流し刺客の間合いに入ると、肘で顎を突き上げ、刺客がよろけた隙に頭の横に回し蹴りを食らわせ地面に叩き付けた。


刺客が伸びたのを確認し、私はリーヴス殿下に駆け寄る。


「殿下!お怪我は!?」


「大丈夫…」


「殿下ーッ!」


そこへ今更駆け寄って来た騎士達を、私はギッと睨み付けた。


「遅い!城内に刺客の侵入を許し、殿下を危険に晒すとは何たる事!今の騎士団の警備はどうなっているのだ!」


私が隠密だった頃は王族に危険が及ぶ前に全て始末していたし、騎士団長であった頃も城の警備は徹底していたので刺客の侵入を許す事など無かった。


それがまさか特に警戒すべき場所である庭園で襲われるなど、私の中では有り得ない。


青い顔をしながら頭を下げる騎士達を前に怒りが収まらないでいると、リーヴス殿下は私を後ろから抱き締めて来た。


「!?殿下、ちょ…」


「アルマ、アルマ、アルマ。やはり君だ。私の女神。もう我慢できない。」


そう言うとリーヴス殿下は私を抱き上げ、その場から連れ去ろうとする。


騎士達が慌てて止めに入るもリーヴス殿下は既に歩き始め、全く聞き入れる様子が無かった。


「殿下、いけません!我々と共に安全な場所に…」


「アルマが居ればどこに居たって安全だ。それに私は今アルマを愛でたいんだ。我慢できないと言っただろう?」


「アルマ!!」


今にも連れて行かれそうになっている所にお兄様の声が聞こえ、私は思わず声のした方へ振り向く。


お兄様は私達の元に走って来ると、リーヴス殿下の腕から私を奪い抱き締めた。


「ディグル!何をする!」


「殿下こそ、私の妹に何をなさっているのです!まだ正式に婚約者でもない令嬢を連れ去るなど、どうかしております。アルマ、侵入者に襲われたんだって?可哀想に、怖かったね。陛下にお話して早く屋敷に帰ろうね。」


私はお兄様の言葉にこれ幸いと涙目でぎゅうっと抱き付くと、リーヴス殿下の歯軋りが聞こえた。


そこでお兄様の肩越しに騎士達と目が合ったが、私が“余計な事を言うなよ”と睨むと皆一斉に目を逸らす。


…たかだかただの令嬢に睨まれた位で口を噤むだなんて、今の騎士はなんてチョロいのかしら。

これなら被害者面してお兄様にくっついて居れば、面倒な聴取も無く帰れそうね。


しかし私の思惑は、冷静な別の人物からの声により絶たれた。


「帰れる訳が無いでしょう。刺客を倒したのはそのご令嬢です。今更しおらしい振りなどお止め下さい。たっぷり聴取に付き合って貰いますよ。」



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