39、バレる
「えっと…それは、護身術についての相談を…」
「こんな夜に?二人っきりで?」
イニス殿下の下手な言い訳に、部屋の温度がぐっと下がったのが分かる。
イニス殿下…貴方は嘘をつくのが下手な人間なのですから、余計な事は仰らないで…!
私が冷や冷やしながら二人を見つめていると、イニス殿下はぐっと気合いを入れてリーヴス殿下を見つめた。
「あ、兄上には言えない秘密もあるのです!」
イヤァァ!
それは一番言ってはいけない台詞ー!
私がチラリとリーヴス殿下を確認すると、リーヴス殿下は怖い位に無表情でイニス殿下を見ている。
こ、これは駄目だわ…
ここまで来てしまったら、いっそある程度正直にお話してしまった方が今後のためにもマシよ…!
そう思った私は、ガタガタと震えるイニス殿下から注意を逸らすため、恐る恐るリーヴス殿下の服を摘まんだ。
「ん?アルマ、どうしたの?」
リーヴス殿下はすぐにこちらを向いたものの、いつもよりその瞳に甘さがない。
私はゴクリと唾を飲み、リーヴス殿下を見据えて話し始めた。
「殿下…今からお見せする事も、お話する事もまだ殿下と私達だけの秘密にして頂きたいのです。お約束頂けますでしょうか…」
「私がアルマのお願いを聞かなかった事は無いだろう?約束するよ。」
リーヴス殿下の言葉に私は頷くと、魔法で自分をあの大不評だった男性姿へと変えた。
「…殿下、私は魔術師なのです。イニス殿下には魔術師の素質がおありで、私が魔法の指導をする為こうしてお会いしておりました。今、この国には魔術師が必要です。しかし、今や魔術師は私一人だけとなってしまいました。…国を守る為、どうしても仲間が欲しかったのです。」
私がリーヴス殿下に身を乗り出し訴えると、リーヴス殿下は惚けた顔で私を抱き寄せ頬を撫でる。
「…アルマの髪が短い。睫もいつもより少し短いし…肌もいつもより柔らかさが無い。…うん、いくらアルマでもこの姿に一瞬で変装するのは無理だ。」
なんと細かい確認…!
私はビクビクしながらも、変化を解いて元の姿に戻った。
「殿下…これで信じて頂けましたか?」
「ん…。でも、魔術師になるには、イニスでないと駄目なの?私では駄目?」
リーヴス殿下にそう言われ魔力を確認してみるも、リーヴス殿下の身体からは微弱な魔力しか感じ取れない。
私は顔を横に振って、リーヴス殿下の気分を害さない様慎重に説明した。
「…残念ながら…。今の所、私が探した限りではイニス殿下以上の魔力を持たれる方は居ないのです。」
「そうか…」
すぐに諦めてくれたリーヴス殿下にホッとしていると、リーヴス殿下は私の身体をぎゅっと抱き締める。
「…イニスの部屋のクローゼットに居たのは、魔法を使ったから?それなら、どうして私に会いに来てくれなかったの?」
どうしても何も、会いに来る理由が無かったからです。
なんて言えないので、私は事実を述べた。
「転移の魔法はここ最近で使える様になったばかりで、使ったのも今日が初めてなんです。だから、マグリも居ないでしょう?初めて使う魔法で何かあったら困るので、今回マグリは連れて来なかったのですわ。」
そう言うと、リーヴス殿下は
「あぁ、だからか…」
と納得している。
これで一件落着だ!
と安心していると、リーヴス殿下は私の耳に唇を這わせながら熱い吐息をかけた。
「…理由は分かった。約束も守る。でも条件がある。」
「え、条件…ですか?」
急な提示に私が怯えながら聞き返すと、リーヴス殿下は甘く低い声で囁く。
「…今日は、朝まで二人きりで一緒に居て?転移の魔法があればすぐ帰れるんでしょう?それと、イニスと訓練する時は私も同席する。」
後半はまぁいいけど、朝まで一緒に居るって言うのはどうなの!?
「あ、あの…朝までとは…」
「ん?今日は何もしないよ。ただ、アルマを抱き締めて眠りたいんだ。もう何日もまともに寝ていないし、癒やしが欲しい。」
確かにリーヴス殿下のクマは凄いし、マグリ達には朝までには帰ると伝えてあるから時間には余裕があった。
前も一緒に寝た事あるし…まぁいいか。
そう思い了承すると、イニス殿下はギョッとした表情で私を見て、リーヴス殿下は満足そうに微笑む。
「ら、ラウンドール嬢!未婚の女性がそんな…!それに、魔法の訓練は…」
「イニス、煩いよ。訓練は今度でいいだろう。私とアルマの邪魔をするな。何度同じ事を言わせるの?これが最後だよ。」
リーヴス殿下のイニス殿下と私への温度差に引きつつも、私は口パクで
「大丈夫ですから…」
とイニス殿下にジェスチャーした。
いや、本当は大丈夫なんかじゃないけど…
ここまで来たらやるしかない。




