表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/71

38、夜


『さて、じゃあそろそろイニス殿下の所へ行きますか。』


私がパンツ姿に着替えていると、マグリが不満そうな顔をする。


『本当に一人で行くのか?』


『うん、始めて使う魔法だし…二人に何かあったら困るもの。念の為まずは私で試してみないとね。』


私は口を曲げるマグリの頬をぐにーっと引っ張ると、ふふっと笑った。


『もう、大丈夫よ。何かあったらすぐ戻ってくるわ。それに次からはマグリとイドラにも付いて来て貰うから、今日だけ我慢して。ね?』


私がそう言うと、マグリはわたしをぎゅうっと抱き締める。

そんなマグリの頭を良い子良い子していると、足元からイドラがぶーぶー文句を垂れた。


【アルマ!マグリにだけズルいぞ!俺様にもしてくれ!】


【え~嫌よ。マグリはやましい事しないけど、イドラはやましい事しかしないでしょ?さっきメイドに抱かれてニヤニヤしてるの見たわよ。】


【ぐっ…】


私に言い返され、イドラは黙る。


イドラを屋敷に迎える際部屋も用意しなければならないし、コソコソするのも面倒だったので、屋敷の使用人にはイドラを連れてきたその日に私のペットとして紹介した。


見た目は子竜だがドラゴンなだけあって最初は怖がられていたものの、花街で鍛えた愛嬌でイドラはすぐにメイド達の人気者となり、屋敷の至る所でメイドに抱かれるイドラを目撃している。


私はそれでも諦めきれない様子のイドラを無視してマグリをそっと離すと、少し離れた所に立った。


『じゃあ、行ってくるわね!朝までには戻るから!』


『何かあればすぐ戻るんだぞ!』


【俺様は契約してるから、呼べばすぐ飛んでくからな!】


二人に手を振って魔法を発動させると、私の足元に魔法陣が浮かび上がり、すぐにイニス殿下の部屋のクローゼットに転移する。


いきなり目の前に現れたらビックリするかなーと思いクローゼットに転移したが…これはこれで怖いかもしれない。


私が苦笑しながらクローゼットから出ようとすると、カチャッと部屋の扉が開く音がした。


そのまま足音が近付いて来て、外側からクローゼットが開かれる。


イニス殿下かと思って大人しくクローゼットが開ききるのを待っていると、開くにつれ徐々に明らかになる人物に私は全身の血の気が引いた。


「リ、リーヴス殿下…」


私が呟くと、リーヴス殿下は私の身体をクローゼットから引っ張り出し、すぐに強く抱き締める。


何が何だか分からないまま呆然としていると、激しく唇まで奪われ、私はあまりに急な展開に酸欠でヘロヘロと力が抜けた。


「アルマ…ッ本当にアルマだ…!!会いたかった!会いたかった!」


私の頬を両手で包み額同士をくっつけながら何度も名前を呼ぶリーヴス殿下に、私はクラクラとしながらリーヴス殿下の顔を見る。


リーヴス殿下は少し痩せてしまっていて、目の下には隈があり、頬には何かで切った様な傷があった。


「リーヴス殿下…きちんと食事と睡眠は摂られておりますか?こんなにお痩せになって…。それにこの傷は…?」


「傷なんてどうでもいい。アルマが居ないのに、まともな生活なんて出来ないよ。アルマ、私にアルマをもっと感じさせて。そしたら、元気になるから…」


そう言って再びぎゅうぎゅうと抱き締められ、私は強く抵抗も出来ずにそれを受け止める。


マズい…完全にホールドされてる…!

大体何でリーヴス殿下が…!

わわっ、手もなんか怪しい動きになってきてるし…うぅ、どうしよう…!


「あ、兄上…ッ!」


そこで部屋の入り口から叫ぶように声が掛けられ、リーヴス殿下が唇を離し一気に温度の下がった瞳で後ろを振り返った。


「イニス…邪魔をするなと言ったよね?」


「う…ッ、で、でも、ここは私の部屋です!」


ハッ!そうだ!

よく考えたらここってイニス殿下の部屋じゃない!


「では、私の部屋に移動する。」


「で、殿下…それよりも、殿下はお食事をお摂りしませんと…。」


私が息も絶え絶えにリーヴス殿下を見上げると、リーヴス殿下は少し何かを考えてから私の耳元にキスする。


「だったら、アルマが食べさせてくれる?それなら食事を摂るよ。」


私がコクコク頷くと、イニス殿下がすぐに食事を用意するよう侍従に申し付けた。


私は隠れて侍従が食事とお茶を用意して部屋を出るのを確認してから、リーヴス殿下に手を引かれソファーに隣り合って座らせられる。


「アルマ、あーんして?アルマがあーんしてくれないと食べられない。」


甘えた声でねだるリーヴス殿下に促されるまま、私は皿を取りフォークでリーヴス殿下の口に食べ物を運んだ。


リーヴス殿下はそれを嬉しそうに咀嚼しながら、私の腰に手を回すのを忘れない。


おまけに食事の最中に何度も頬にキスされ、私は目の前で顔を真っ赤にしながら必死で目を反らすイニス殿下の姿に居たたまれなくなった。


私は何をしてるのかしら…

リーヴス殿下もますますおかしくなっているし…

今日はもう指導は無理ね…。


ここからどう説明して、この状況から抜け出たらいいのだろう…


私が遠い目をしていると、リーヴス殿下はそれを読み取ったかの様に私の顔を覗き込む。


「それで、アルマはどうしてイニスの部屋のクローゼットに隠れてたのかな?二人で何をするつもりだったの?」


その言葉に、私達は一瞬で固まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ