33、イドラ
【庭に俺様の家を作っても、アルマは一緒に住まないんだろう?それなら嫌だ。俺様はアルマと一緒に暮らしたい!】
イドラの言葉に私は目を丸くする。
ガリオンの時は言葉が通じないのもあったけど、普通に厩舎みたいな小屋で暮らしてたわよね。
まぁ死ぬほど文句言ってたけど…。
【でもイドラは大きいから、屋敷に入らないでしょう?逆に私は小さすぎて、イドラの暮らせる様な場所では暮らせないと思うのだけど。】
私が困った様にイドラを見上げると、イドラは少し考えてから、
【なら、小さくなる。】
と呟いた。
えっ小さくなれるの!?
ガリオンの時はイドラが小さくなった姿など見たことがない。
私がどんな子竜になるのかとワクワクしながら見守っていると、イドラはボンっと煙に包まれた。
【これならいいか?】
モクモクとした煙がはけた中に現れたのは、すらりとした赤黒い髪の人間の男で、私は呆然としながらもガッカリとうなだれる。
こ、子竜じゃないじゃないの…!!
私の落ち込む様子にイドラはすぐに駆け寄って来て、心配そうに顔を覗き込んで来た。
【アルマ!?どうした!?】
【…なんでも無い。イドラ、人間の姿にもなれるのね…てっきり小さいドラゴンになるのかと思ってたから…】
【ん?あぁ。小さくもなれるが、いつも花街で人間の雌と遊ぶ時この姿の受けがいいから、アルマも喜ぶと思って…】
少し照れながら私の反応を伺う人間のイドラに、私の気持ちは一気に下降する。
ドラゴンなのに、花街で遊んでたの!?
種族の見境無し!?
とんでもないエロ竜じゃないの!
私はドン引きしながら、じとっとした目でイドラを見た。
【…イドラ、人間の女の子とそんな事してるの?まさか、私と暮らしたいって言ったのもそれが目的なんじゃ…】
少しずつ後ずさって行く私に、イドラは慌てて手を横に振る。
【ち、違う!!アルマにそんな事する訳ないだろ!?…そりゃちょっとは下心もあったけど…アルマが嫌なら絶対しない!!大事な契約者だからな!!心配なら、子竜になるから!な!】
そう言ってすぐさま子竜になると、イドラは私の足元にぎゅっと抱き付いた。
ぐ…可愛い。
これは反則だわ、こんなに可愛いのに、突き放すなんて出来ないじゃないの!
しかしさっきまでの人間姿を見た後だと、抱き上げるのは躊躇してしまう。
私はマグリを呼び、イドラを抱き上げてくれるよう頼んだ。
【や、やめろ!離せ!俺様は男の固い胸板が大嫌いなんだ!】
『アルマ、なんかこのドラゴン凄い暴れてるけど、いいのか?』
『いいのよ、マグリだってさっきの変化見たでしょ?この子イドラって名前を付けたんだけど、イドラったらあの姿で人間の花街で遊んでるらしいわ。そんなエロ竜抱けないわよ。』
私の言葉にマグリはぎょっとすると、私に手を伸ばすイドラをぎゅっと抑えつける。
【ア、アルマ!アルマが抱いてくれ!コイツは嫌だ!!】
【嫌よ。そんなに柔らかいお胸が好きなら、花街で抱っこして貰えばいいでしょ?】
私がつーんと顔を逸らすと、イドラは絶望したように嘆いた。
【そんな…っ!顔も、身体も、今まで出会った雌の中でアルマが一番好みなんだ!頼む、もう花街には行かないから冷たくしないでくれぇえ!】
言ってる内容がとてもドラゴンのものとは思えない。
私は
【とりあえず、話は屋敷に帰ってからにしましょう。帰りも引き続きマグリに抱いて貰ってね。】
と、森を後にした。




