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29、パパ


その夜、私は真っ白な何もない空間に一人ぽつんと佇む夢を見た。


「あー…何か嫌な夢だわ…。刺された直後だからかしら。ここで怪物でも出て来たら最悪ね…」


「アルマたぁぁん!会いたかったよおぉ!!」


「!?」


嫌な予感は当たるもので、怪物では無く人の声の様だったが、いきなりの奇怪な声に私はビクーッと身体が跳ねる。


「だ、誰!?」


夢だよね、これ!?

最悪襲われても目覚ませば大丈夫だよね!?


声のする方に振り向くと、長い緑の髪をポニーテールに束ね、上半身裸に引きずる位長い一枚布の様なスカートを履いた男が両手を広げて立っていた。


「…うわぁ、変態だわ。」


「変態じゃないよぅ!これは神界の正装だもん!アルマたんは今神界の記憶が無いから忘れちゃっただけだよぉ!」


はぁ?


私は男の言っている内容がさっぱり分からず思い切り眉を寄せる。


「もう、アルマたんの兄弟達が『女神なのに可愛い妹を男ばっかに転生させんな!』って煩いから仕方なく今回は女の子に転生させたけど、やっぱり害虫共が群がってるじゃん!だから嫌だったのに!パパは反対したんだよぉ!?」


「パパ…?私の父はラウンドール公爵だけですが。」


私がジットリした目で男を見つめていると、男はショックを受けたように大袈裟な位嘆いた。


「それは今回の転生先限定の父親ね!アルマたんは本当は創造神であるパパの子なの!!今は人間界に派遣してるけど、もう来世は転生させないで神界に帰って来て貰うから!もー可愛いアルマたんと離れて暮らすのパパ限界!」


転生と言う言葉に驚いていると、男はうなだれながら話を続ける。


「でも今回はなかなか時間が掛かりそうなんだよね~アルマたんを女の子にしちゃったせいで直接国を守るのが難しくなっちゃったし…王太子はアルマたんに夢中だしさぁ。アルマたんとはどうあがいても結婚なんて出来ないのにね。」


「えっ、結婚出来ない!?」


何ですと!?


いきなりの朗報に私は男に詰め寄った。


「そうだよ、そもそも女神を人間と結婚なんてさせる訳ないでしょ。禁忌だもん。子供でも出来たらどうするの?人間にもなれない、神界にも上がれない可哀想な子になっちゃうでしょ。まぁ、アルマたんに夢中になるのも分かるけどね~人間のアルマたん超可愛いもん!女神のアルマたんはそれにも増して更に美しいけどね!」


うっとりする男の横で、私は唖然とする。


最初は私が女神とか何トチ狂った事言ってんだコイツはと思ってたけど、それなら転生し続けている理由になるだろう。


でも女神が人間に転生し続ける程の脅威って何だ?

色々考えてみても、戦争とか、内紛とか、人間のいざこざが多い気がする。

後はたまに発生する魔物の討伐とか…


「そう、それ~。魔物の討伐だよ!魔物ってさ~人間じゃ倒せないんだよねぇ。女神とか、神族が側に居るとその身体から出る神気で魔物が弱体化するの~。それでやっと人間が留めを刺せるようになるんだよ。だから、いつもアルマたんが居ない軍隊は壊滅してたでしょ?」


え、この人今私の心読んだよね。

ガチの変態だわ。


「えっ、ちょっ、気になったのそこ!?仕方ないじゃん、神だもん!!」


「…。」


とりあえず早く目覚めないかな…と念じていると、男は困った様に微笑んだ。


「それでね、アルマたんはか弱い女の子だから、今回魔物の討伐に参加する事は出来ないでしょ?だから、パパが助言しにやってきたんだよぉ~!ほら!昔アルマたんが無理矢理乗ってたドラゴン居るでしょ?あの子に乗ってこっそり先に討伐に行っちゃえばいいんじゃないかな~と思って!」


「え、今私の事か弱いって言いませんでした?なのに一人で討伐して来いと?それに、ドラゴンなんて知りませんけど。」


男はあれっと言う顔をしながら、しばらくして「あぁ!」と私の前に手を翳す。


「あの時の事は思い出してないんだっけ!じゃあ思い出させてあげるね!もーあの時のアルマたん最高だったんだよぉ~魔術師の記憶無かったから言葉通じないのに、嫌がるドラゴンに乗って『ドラゴンライダーだ!!』とか名乗っててさ~。もう皆大爆笑!!」


えっ、何その黒歴史!?


「いや、そんなの思い出したくないんで結構です!って、聞いてます!?いいって言ってんでしょ!?」


私の抵抗も虚しく男は私の記憶を復活させ、私は記憶の中の自分の数々の痛すぎる言動にその場に崩れ落ちた。



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