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27、舞踏会


舞踏会当日は朝から支度に追われ、出掛ける頃にはぐったりしていた。


私が婚約破棄されたと湾曲して理解している侍女達が

「私達のお嬢様に何て事を!」

と怒って、せめてギャフンと言わせてやらねば気が済まないと支度に全力を注いだのだ。


悪夢再来とばかりにの仕上がりについつい死んだ目をしていると、それを見たマグリは私とは逆にうっとりとしていた。


『はぁ…美しい。アルマは本当に綺麗だな。世界中にこれが俺の番だと自慢したい位だ。』


番じゃないっての!


人を褒めるのはいいが、私では無く他の女性を褒めて欲しい。

そして何度も言うが断じて番ではない。


レンドルからの指導でもしもの時のエスコートも学んだマグリだったが、そこはお兄様が譲らなかった。


「ふふ。アルマ、綺麗だよ。何時間でも見ていられそうだ。王城に連れて行くのが嫌になるな。」


お兄様は通常運転なので、笑って流しながら舞踏会へと向かう。


会場は既に多くの令嬢が集まっており、私も心配そうなお兄様とマグリに見送られ中に入った。


陛下に挨拶さえすればさっさと下がれるので列に並ぼうとすると、玉座の下で沢山の令嬢に囲まれながら表情筋がピクリとも動いていないリーヴス殿下を発見する。


う…あれじゃあ近寄れないじゃないの!


仕方なく適当な人混みに紛れる様に隠れるも、ここでまさかの事態に陥ってしまった。


「あら~アルマリア様ではありませんこと!?随分お久しぶりですわね!」


私の前に現れたのは、バサバサのつけまつげがチャームポイントのエリーシュカ侯爵令嬢。


言わずもがな、リーヴス殿下にご執心の筆頭令嬢だ。


面倒な人に会っちゃったわ~…

と思いながらも

「えぇ、お久しぶりです。エリーシュカ様。」

とにこやかに返すと、エリーシュカ様は嘲るような目で私を見る。


「全く、アルマリア様もお気の毒に。体調がお悪くてまたリーヴス殿下の婚約者候補からお外れになってしまったのでしょう?きっとアルマリア様はリーヴス殿下とは結ばれない運命なんでしょうね。」


そうだといいんですけどね。


私が曖昧に微笑んでいると、後ろからパシャンッと音がした。


「やだ、ごめんなさい~!わざとじゃないんですぅ!」


振り向くとそこには空のグラスを持って立っているフレリア子爵令嬢が居る。


なんてベタな事を…


私はうんざりした。


これで一回着替えに行かなきゃならなくなったじゃないの。


ほんと、何で皆決まってドレスを汚しにかかるのか。

いっそ殴ってくれた方が楽なのに。

まぁ身分に物怖じしないで嫌がらせする根性は凄いと思うけど。


私が着替えに行く為辞去の挨拶をしようとしていると、そこに追い討ちを掛けるかの如くまさかの人物が駆け寄って来る。


「ラウンドール嬢!大丈夫ですか!?」


「な…ッ」


「イニス殿下!?」


それは少し焦った様子のイニス殿下で、私は

何故来た!?

と内心ぎょっとしながらもそれを瞬時に隠し微笑んだ。


「まぁ、イニス殿下…お気遣い頂きありがとうございます。ドレスが汚れてしまっただけですので、着替えて参りますわ。一旦失礼致しますね。」


そう言ってさっさと会場を後にしようとする私に、イニス殿下は腕を差し出して来る。


「それなら客室までエスコートしましょう。」


一瞬驚いたが、イニス殿下のせいで何だかんだ注目を集めてしまっているので、周りの令嬢達が唖然とする中大人しくエスコートを受けた。


遥か遠くからリーヴス殿下の刺すような視線を感じたが、それを見ないようにして私達は会場を出る。


私は廊下を曲がった所でイニス殿下を引っ張り護衛を巻くと、くわっと目をつり上げた。


「イニス殿下!?何をなさってるんです!?あ、あんな皆の前で私に声を掛けるなど、悪目立ちも良いところではないですか!!」


「す、すみません!でもラウンドール嬢が令嬢達に囲まれて居たのを見たら、居ても経っても居られなくて…!」


「そんなの夜会に出れば毎回の事ですわ!」


私の言葉に驚愕するイニス殿下を見て、半目になる。


この方はあれね。

空気を読まず余計なお節介を焼くタイプだわ。


「…それに、会場を出る時のリーヴス殿下をご覧になりましたか?正直私はこの後のイニス殿下の御身の方が心配です。」


「あ…」


会場に居る時には私に夢中で気付かなかったのか、イニス殿下はみるみるうちに青くなった。


しかしこれに関してはどうにも出来ないので、イニス殿下本人に何とかして貰うしかない。


「とりあえず、イニス殿下はお戻り下さい。私も着替えてすぐ参りますので。」


そう言ってイニス殿下を会場に戻る様急かすと、私はさっとドレスのシミを魔法で洗浄した。


さて…染みは消したけどカモフラージュの為に着替えには行かないとね…


私が溜め息をつきながら廊下を歩き出そうとすると、


「アルマ、何をしているの?」


と言う声に足元から一気に悪寒が走る。


嫌な汗が流れ振り向けないで居ると、その人物は静かに近付いて私を後ろから抱き締めた。


「…いつの間にイニスと仲良くなったのかな?…理由によっては、イニスにお仕置きしないといけないね。」


すみません、イニス殿下。

もう手遅れでした。



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