24、作戦
それから数日の間、マグリは嫌々ながらも順調にレンドルに指導をして貰っている様で、私は一人暇を持て余す。
本当は外に出たかったが、一緒に行くのがマグリでなくては自由が利かない為我慢した。
リーヴス殿下も全く姿を表さず予想外に平和な日々を過ごしていると、そのリーヴス殿下についてお父様が驚きの情報を持って帰って来る。
「アルマが攫われてしまった事で陛下がアルマとリーヴス殿下の婚約を白紙に戻す決断をされた。それで、五日後に急遽リーヴス殿下の婚約者候補探しの為舞踏会を開くらしい。」
私は心の中でガッツポーズを決めつつも、お父様の前では
「そうですか。」
と何食わぬ顔で返事をした。
だから最近リーヴス殿下が来なかったのね…
ふふっ、やったわ!
計画通り!
これで第二のエルマー嬢が現れてくれれば万々歳!
そんな風に思っていると、お父様は何とも言えない顔で話を続ける。
「…だがな、その舞踏会にアルマも招待されているんだ。私は辞退させて頂きたいと申し上げたんだが、陛下がどうしてもと仰って…。全く、婚約を白紙になさると仰って置きながら、何故そっとして置いて下さらないのか…」
えぇ…嘘でしょ。
本当、何のつもりで招待してるの。
どうせ舞踏会に出た所で腫れ物扱いされる上、リーヴス殿下を狙う令嬢達に嫌がらせされるに決まっている。
別にそれ自体はどうでもいいが、何より面倒臭いではないか。
私が眉根を寄せていると、お父様も困った様な顔で溜め息を吐いた。
「アルマの気持ちも分かるが、仕方ないな…。極力殿下には近付かないようにして、早めに帰って来なさい。まぁ、殿下の方から近付いて来るかもしれないがな…」
「そうですわね…」
とりあえず出る事は決定なので、後はどう早く切り上げるか考えるしかない。
私はお兄様の所へ行ってマグリを回収すると共に、舞踏会について相談した。
「はぁ…大方リーヴス殿下が陛下にアルマが居なければ出ないとか言ったんじゃないの?本当、迷惑だね。」
あーそれは有り得るな…と思いながら私もお兄様の意見に頷く。
「でも、招待されたからには出ないと…。お兄様はお側には居て下さいませんの?」
従者は舞踏会場に入る事が出来ないので、頼みの綱はお兄様だけなのだ。
しかし、期待も空しくお兄様には首を横に振られてしまう。
「僕もアルマの側に居てあげたいんだけどね…。その舞踏会はリーヴス殿下の婚約者候補を決めるものだから、会場に男性が入れないんだよ。心配だけど、こればっかりはどうにも出来ないしね…陛下に挨拶したらすぐ退場するしかないね。」
なんと…!
男子禁制とは。
私は肩を落とすと、マグリを連れて部屋に戻った。
『マグリ、五日後に舞踏会があるのだけど、マグリは会場に入れないから待機室で待っていて欲しいの。婚約の話は無くなったのだけど、当日はたぶん令嬢達に嫌がらせされるだろうから、着替えのドレスを数着持っていて。』
『は!?何で俺の番が嫌がらせされなきゃならないんだ!そんなもの行かなければいい!』
あ、余計な事言ったわ~。
私も行きたくないが仕方ないのだと何度も説明して、マグリをなんとか説得する。
ぎゅうぎゅうと私を抱き寄せ
『俺の大事なアルマをそんな危険な所に放り込むなんて!』
と騒ぐマグリを宥めると、
『あ、忘れてるかもしれないけど私まだ番じゃないからね!』
と一応突っ込んで置いた。
そして舞踏会まで日があるので、その間に魔術師候補を探しておきたいという事も話す。
『まずは明日にでも街を歩き回ってみましょう。』
『俺は別に、アルマが居れば他のヤツは要らない。』
これから先の事を考えれば魔術師が一人だけより絶対複数居た方がいいに決まってるのだ。
それにあわよくば可愛い女の子を魔術師として育て、最終的に是非ともマグリとくっついて頂きたいと思っている。
私はふてくされるマグリに、気を取り直して貰おうとあの外出用の少年姿を見せる事にした。
『でね、外に出るに当たってドレス姿は動きずらいでしょ?だから、魔法で見た目の性別を変えようと思ってるの。今から幻術を掛けてみるから感想を聞かせて。』
私はすぐに魔法を発動し、マグリの目の前であの微妙な少年姿になる。
マグリは最初私の姿にぽかんとしていたが、すぐにカーッと赤くなって口元を手で押さえた。
『アルマ、その姿はマズい!何だろう、何か新しい扉を開いてしまいそうだ。』
『はぁ?どんな扉よ。でも、まぁ改善の余地ありって事ね?それなら、試しに色々変えてみるわ。』
マグリの意見を参考に細かい箇所を練り直してみたが、結局大して変わることなく出掛ける当日になってしまう。
『全然何にも変わって無いじゃないか!!本当にそれで行くのか!?…くそ…ッアルマを変態どもから守らねば…ッ』
え?そんなヤバいの?
私は少し不安になりながらも、屋敷を出てから幻術を掛けマグリと城下町へと出掛けた。




