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22、魔道具


一夜開け私はベッドで目を覚ますと、目の前に居たマグリの顔に驚いて飛び起きる。


「うわッ」


『アルマ、おはよう。』


ソファーとベッドとは言え、マグリと同じ部屋で一晩過ごしてしまったわ…


私は自分の迂闊さにうなだれながら、昨日のリーヴス殿下の様子を思い出した。


あれだけ反抗したのだから、今日はもう来ないわよね…

どんな顔で会ったらいいのか分からないし、このまま放って置いてくれればいいんだけど…まぁ無理か。


とりあえず着替えもお風呂もまだだったので、マグリを私の部屋の近くの空き部屋に案内し、お風呂の使い方を教える。


マグリは一緒に入りたがって居たがそれを無視して着替えだけ用意すると、私も侍女を呼び自分の部屋の浴室で入浴した。


うーん、引きこもる宣言をしたのはいいけど、今後の為にも時間は有意義に使わないと。


そうね…今も遠視でニルリル様に見られているのかと思うと全然落ち着かないし、まずは結界が張れる魔道具でも制作しましょう。


私は攻撃特化の魔術師だったので、細かい調整が必要な魔法ははっきり言って苦手だ。


その点魔道具であれば一度制作すれば後は魔力を注ぎさえすれば自動的に発動し続けるので、自身で結界を発動するより格段に楽になる。


重要なのは魔法陣と核となる純度の高い鉱石なので、まぁ今の時代でも何とかなるだろう。


「後は…出来れば魔術師の助手が欲しいわね…」


マグリと会話が出来る相手が私だけでは、何かと不便だ。

そうなると、やはり他にも魔術師が欲しい。


もう一人、魔術師の素質が高い者を従者として雇って、指導しましょう。

そうすれば、私も助かるし。


案外沢山やることがあり、私は入浴が終わると侍女に簡単に身支度をしてもらいマグリを迎えに行った。


『マグリー着替えた?入ってもいいかしら。』


『あぁ。』


部屋に入るとマグリはしっかりとお仕着せを着こなしていて、私はにっこり微笑む。


『ふふっ、似合ってる!赤髪と赤目が黒いお仕着せに映えるわね!ちょっと髪が乱れてるけど…こうすれば…』


私が少し背伸びしてマグリの髪を手櫛で整えていると、マグリが私の爪先が浮く程勢い良く抱き締めて来た。


『ぐぇっ!ちょ、マグリ!苦しい!』


『ごめん、でもアルマが綺麗過ぎて…今のアルマはお姫様みたいだ!』


スーハースーハー匂いまで嗅ぎ始めるマグリに、私は思わず拳骨を食らわせた。


『痛ぁッ!?』


『匂いを嗅がない!マグリ、他の女の子に同じ事したら捕まるわよ!?』


『…アルマにしかするつもりは無いから、問題ない。』


不満そうな顔で私を見るマグリを引き剥がし、私は今日から取り掛かる事を話す。


まずは結界の魔道具を制作する為、お父様の鉱石コレクションから手っ取り早く譲って貰えないか交渉に行く事にした。


『あーでもその前に食事にしましょう。マグリは食事のマナーは分かる?』


『分からない。』


『んーじゃあしばらくは私の部屋でマナーを教えながら食べましょうか。』


私は侍女を呼んでその事を伝えると、すぐに準備に取り掛かってくれる。


ところが食事を乗せたワゴンと共に部屋に入って来た侍女の後ろには、黒いオーラを放つお兄様が居た。


「アルマ、またマグリと二人っきりで部屋に籠もる気かい?昨夜は鍵まで掛けて一緒に寝ていた様だし…年頃の令嬢としては感心しないな。僕も一緒させてもらうよ。」


有無を言わせぬ圧で私を頷かせると、お兄様も席に着く。


私はそれを横目で見ながら、マグリに食事のマナーを教えていった。


『…難しい。』


『別に一度で覚えなくていいわよ。急いでないし。あ、ほら、口の横にソースが付いてる。気をつけて。』


私がマグリの口をナプキンで拭っていると、お兄様が

「アルマ。」

と私の名を呼ぶ。


「マグリの世話を焼きすぎだ。目の前でそんな事をされたら嫉妬してしまうよ。僕にも構ってくれないと。」


え…いや。

何言ってるの?


「構ってと言われましても…どうすれば…」


「では、あーんして?ここは正式な場では無いのだから、別にいいだろう?」


えー…でもそれじゃあマグリの練習にならない…


私がそう言おうとすると、お兄様が「やれ」と圧を込めた目で見詰めて来た。


私は仕方無くパンを千切ると、お兄様の口元に差し出す。


「お兄様、あーん。」


「ん。あーん。」


それをパクッと食べると、お兄様は満足そうに微笑んだ。


『アルマ!俺もそれやって欲しい!』


案の定騒ぐマグリに、お兄様は首を横に振る。


「マグリ、今アルマに同じ事をしろとねだったな?駄目だ。これは血の繋がった兄だけがしてもらえる特権なんだ。」


いや、いつからそんな決まりが…


私は早く早くとこちらを見るマグリに、

『これはマナーとして駄目なお手本を見せただけよ。』

と適当に説明した。


あぁ、面倒臭い。

何か二倍疲れるわ。



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