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21、恐怖


『はわわ…マズい!』


『リーヴス殿下…って、アルマと婚約しようとしてる男か!』


私が立ち上がろうとすると、マグリが私の腰を抱き妨害する。


『ちょっと!マグリ、離しなさい!この体勢はマズいのよ!』


『嫌だ!アルマは俺の番だ!離さない!』


いやいや!番じゃないから!


マグリと押し問答しているうちに、まだ返事もしていないのにバンっと扉が開いた。


「アルマ!!」


リーヴス殿下はソファーの上でもつれ合う私とマグリを見て表情が抜け落ち、私は真っ青になりながら固まる。


マグリはと言うと、私を抱きながらリーヴス殿下を睨み付けていた。


「…アルマ、何やってるの?その男は誰かな?私は浮気なんて許さないよ。」


「ち、ちちち違います!浮気なんてしてません!彼は従者なんです!」


私、何で言い訳してるの!?

別にリーヴス殿下とも何でも無いじゃない!


「従者?従者とどうしてソファーで抱き合ってるの?」


私がマグリの腕から抜け出ようと手を突っぱねるも、マグリの拘束は全く解けない。


それどころかますます私に密着し、胸の下に顔を押し付けてきた。


ヒイィイ!!

これは駄目!刺される!マグリが刺されるわ!!


リーヴス殿下を見ると、こめかみに青筋が浮かんでおり、手は剣の柄を握っている。


私はマグリに小声で、

『ごめん!』

と呟き、マグリを素早く気絶させ拘束を解いた。


「で、ででで殿下!今そちらに行きますから!剣!剣は抜かないで下さい!」


マグリをそーっとソファーに寝かせ、無表情のままのリーヴス殿下に恐る恐る近付く。


リーヴス殿下は私が近付くと柄から手を離し、すぐに力いっぱい抱き締めてきた。


「アルマ、アルマッ…アルマが攫われたのに、私がすぐ気付かなかったから…従者なんて付けたのは私への当て付けなんだろう!?ごめん、ごめんね…ッ!もうアルマを不安にさせないから!ナガリア国も滅ぼす!だから、私の目の前で他の男に縋るのは止めてくれ!」


何か今さらっととんでもない事言ったよね!?


「で、殿下、別に私は彼に縋っていた訳では…彼は私を助けてくれた恩人なんです。それに、かなりの人見知りで…この国の言葉も分からないし私以外には心を開かないので、ちょっと私に対して甘える所があると言いますか…」


うぅ、なんと苦しい言い訳!

でもまぁあながち嘘でもない!


私がしどろもどろで言い訳していると、リーヴス殿下は無表情で私を見つめる。


ガラス玉の様な碧い瞳が私を射抜き、背中に冷や汗が流れた。


「…アルマ。恩人だろうが、私以外の男がアルマに触れていい訳ないだろう?アルマは私のものなんだよ?」


うっ…凄い圧…流石王族!

怖い。怖すぎる…!


私はあまりの怖さに震えながら手を突っ張ると、リーヴス殿下から離れる。


「?アルマ?」


「で、殿下は私を助けに来てくれなかったではありませんか!それなのに、都合の良い時だけ私のものなどと…!私が従者を付けようが、殿下には関係無い事!もう放っておいて下さいませんか!?」


私が少し涙目になりながら訴えると、殿下は驚いた様に目を見開いた。


あぁ、マズい。

あまりの恐怖で感情が溢れる…!

精神が今の年齢に引っ張られてるんだわ!


私はパニックになりながらリーヴス殿下をグイグイと押し、あろう事か部屋から締め出すと扉を閉め鍵を掛ける。


「アルマ!ごめん!そんなに求められていたのに、応えられなくて…!肝心な時に私が駆けつけなかったから、怒っているんだね!?もう、不安にさせたりしない!寂しい思いも怖い思いもさせないから、ここを開けて!」


「嫌です!お引き取り下さい!」


うわぁ、私ったら殿下になんて口の聞き方を!!

それに王族に逆らうなんて…!


気持ちが高ぶり涙までこぼしていると、リーヴス殿下は

「アルマ、泣いてるの!?あぁ、何て事だ…お願いだからここを開けて!今すぐ慰めたいんだ!」

と扉を叩いて来た。


「結構です!今日はもうお会いしたくありません!今、すぐ、お帰り下さい!!」


そもそもこの早さで屋敷に突撃して来るなんて、絶対家の前を見張らせてたに違いない。


もう本当に、誰も彼も私のプライバシーを侵害し過ぎだわ!


「アルマ、泣いてる君を男と二人にして帰るなんて出来ないよ。お願いだから…」


「彼は従者なのですから、ご心配されている様な事は起こりません。本当に、放って置いて頂きたいのです。…ただ、私のせいでナガリア国との関係が悪化した事は、深くお詫び申し上げます。これから先、私の事でナガリア国と無用な諍いは決してなさらないで下さい。それだけはくれぐれも宜しくお願い致します。」


リーヴス殿下はしばらく扉の前で粘っていたが、私が無言を貫くと


「アルマ、 私がアルマを愛してる事は忘れないで。いつもアルマを想ってる。それと、その男の事はまた話し合おう。それまで決して触れさせないで。」


と去って行った。


どうせ居なくなっても誰かに見張らせているんだろうとは思ったが、私はとりあえずほっとその場に座り込む。


リーヴス殿下が居なくなっても身体の震えは止まらなかったが、ベッドに突っ伏し無理矢理抑えつけた。


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