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19、帰還


私は王都に帰る為、一番効率のいい方法を模索する。


とりあえず現段階ではニルリル様とザブド殿下は別の場所に居る筈だから、ニルリル様の遠視によって先回りされる事は無いだろう。


それならさっさと出発して今のうちに距離を稼がねば…


『マグリ、貴方には加速の魔法を掛けるわね、身体能力的に走った方が早いと思うのよ。私は…』


『それなら、その状態で俺がアルマを背負って走るのが一番早い。』


マグリはそう言うと、早速その場にしゃがんで私に背中に乗るよう促した。


いい歳した令嬢がおんぶされるってどうなの?

一応パンツスタイルではあるけど…


『えー大丈夫?私結構重いのよ?マグリ、疲れるし潰れちゃうんじゃあ…』


『重くないし、これぐらいで潰れない。アルマ、獣人を舐めすぎだぞ。』


早くしろと言わんばかりに背中を向けたままのマグリに、私は加速の魔法を掛けると、なんとなく気乗りしない状態で背中に乗る。


マグリは私が乗ったのを確認すると木の上に向かって跳躍し、私が教えた方角に向かって物凄いスピードで木から木へと移動した。


は、早…ッ

空気抵抗半端じゃない…!


私がギュッとしがみつくと、マグリがははっと笑う。


『アルマ、怖いのか?心配しなくてもアルマを落としたりしない。』


いやいや、そうじゃない!

風が凄いんだよ、風が!!


否定したくとも口を開けば舌を噛みそうで、私は口を噤んだ。


そのまましばらくして森を抜け、草原を駆けた後徐々に流れる風景が見慣れたものに変わり、私はマグリに一旦止まって降ろして貰う。


『ずっと背負ったままでも良かったのに。』


唇を尖らせるマグリの横で、私はグチャグチャになったポニーテールを解いた。


『そんな訳にいかないでしょ。はぁ、でも凄い速さだったわね…おかげでこんなに早く王都に着いたわ。ありがとう。』


マグリにお礼を言って髪を結い直そうとすると、マグリがその手を掴む。


なんだとマグリを見上げると、目と口を開いて呆けた顔をしていた。


『マグリ、手。髪が結えないわ。』


『あ…悪い。…別に結わなくてもいいんじゃないか?』


『えぇ?こんなに爆発してるのに何言ってるのよ…それに普段は結ってない事のが多いわよ。』


マグリは『…そうか。』と呟きながら手を放して、頬を掻く。


何だったんだ、今のは…


私はそれを横目で見ながらきっちり髪を結い、これからの事をマグリに話した。


まず、王城には戻らず、ラウンドールの屋敷に帰る。


きっと私がザブド殿下達と消えてしまった事で騒ぎになっているだろうから、陛下にはお父様から帰ってきた事を伝えて貰う。


攫われたショックから外に出られないと言うことにしてしばらく屋敷に籠もり、傷物になってしまった可能性のある私はリーヴス殿下との婚約の話も白紙に…


完璧だわ!


私がグフグフしていると、マグリが慌てて私の肩を掴んでガシガシ揺すってきた。


『アルマ!!別の男と結婚の約束をしているのか!?お前、早速俺を裏切る気か!!』


『してないわよ!!話聞いてた!?婚約されそうになってるのを無かった事にしたいのよ!』


マグリはそれを聞いて手を止めると、ぎゅうっと私を抱き締める。


『…アルマ、俺はアルマを他の男になんか絶対渡さないからな。アルマの側から離れない。』


マザコンの息子か。


でも離れない、か~。

問題はマグリをどう私の側に置くかなんだよなぁ。

比較的側に居られるとしたら…従者か?

護衛じゃ常に一緒にって言うのは無理だし…


私は悩みながらもマグリに説明した。


『マグリ、異性のマグリと屋敷で一緒に居るには、形だけでも従者になるか、護衛になるかしないといけないの。でもそうすると主従関係になってしまうのよ。嫌かもしれないけど、とりあえず今は従者と言う事にして、なるべく離れず一緒に居られる様にしようと思うのだけど…どう?』


私がマグリを見上げながら反応を窺っていると、マグリは口をへの字にしながら私を見る。


『…別に、アルマと一緒に居られるなら何だっていい。多少の事は我慢できる。二人きりの時はこうやって抱き締めてもいいんだろう?』


そういえば、獣人は気を許した相手へのスキンシップが激しいんだった。

でもまぁ、番じゃないし、多少のスキンシップは多目に見ないとマグリのストレスが溜まっちゃうだろうしね。


『うん、二人きりで私の部屋に居る時ならね。でも番じゃないんだから、程々にしてね。一応私、未婚の貴族令嬢なんだから。』


『分かった。』


そして、お兄様だけには獣人である事を話して、味方になって貰いたい事も話しておく。


国に知られればマグリが危険な事に巻き込まれてしまうかもしれない。

それだけは避けなければ!


そうして話し合いを終えた私とマグリは、一緒に屋敷に向かうのだった。


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