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15、早朝稽古


早朝、私はポニーテールに乗馬用のシャツとズボンを着用し、騎士の演習場の屋根の上でぼーっとしていた。


とにかく眠い。


あの後リーヴス殿下は私を部屋から出してくれなくなり、結局一緒のベットで寝た。


もしかしたら今頃メイド達の間で良からぬ噂が立ってしまっているかもしれない。


まぁ、結婚するまで何もしないと約束していたのでそこまで心配していた事は起こらなかったが、それでも一晩中リーヴス殿下が気になって十分休むことは出来なかった。


はぁ…本当に面倒だな…。

いっそ騎士団に入団させて貰えないだろうか…

いや、無理か。

殿下が許してくれないだろうなぁ。


かと言って他国に亡命も出来ない。


私はこの国に縛られている様で、他国に長期間滞在したいと考えると、離れたくない、離れては行けないと頭の中で警告が鳴るのだ。


溜め息を付いていると、入り口の方から誰か歩いて来る。


よく見ればそれはエリシオで、剣を片手に一人早朝稽古を始めた。


ふーん。

ちゃんと一人で鍛錬してるのか。


しばらくエリシオの稽古を眺めていたが、段々口を出したくてウズウズして来る。


ついには我慢出来なくなり、私は屋根から飛び降りエリシオの前でクルッと一回転して着地した。


「…は!?お前、上から…!?何やってんだ!?」


「一戦お願い出来る?」


私が剣を構えると、エリシオも剣を構え私を睨んで来る。


「この女狐が!やっぱりお前も刺客だろう!色仕掛けで殿下に取り入り、何をしようとしている!?」


「公爵令嬢がどうやって刺客になるのよ…。ほら、そんな事いいから早くかかってきて。あ、本気で来ないと私には勝てないからね!」


私の挑発にエリシオはギリッと歯軋りすると、一気に距離を詰めてきた。


あれ、これ本気で殺しに来てるわ。

うーん、私相手だから別にいいけど、普通の公爵令嬢にやったら大変な事になるなぁ。

後で教えてやらなきゃ。


私は打ち返す事はせず、エリシオの攻撃を受け流す。


脇が甘い。

一撃も弱いなぁ。

速さも足りないし…隙が多い。

ダメダメ!全然なってない!!


エリシオの剣術を分析していると、私が押されていると勘違いしたエリシオが渾身の力で剣を振り下ろす。


私はそれを難なく受け止めると、思い切り打ち返し、怯んだエリシオの顔に剣先を突き付けた。


「…もう!何でそこで剣を振り下ろすのよ!?私じゃなかったら殺されてるわよ!?」


私の言葉にゴクリと唾を飲むエリシオに、私は剣を下ろす。


「な…殺さないのか!?」


エリシオからの言葉に、今度は私が仰天した。


「自分の護衛騎士を殺す訳が無いでしょう!?馬鹿じゃないの!?そもそも貴方弱すぎ!公爵令嬢に負ける騎士って何なの!?」


「はぁ!?お前がおかしいんだよ!!大体その言葉遣いも、どう考えても公爵令嬢の言葉遣いじゃないだろ!殿下の前では猫被ってんな!?」


言い返して来るエリシオに、私は嬉しくてにんまりする。


最近おかしな連中ばっかりだったから、エリシオと話してると安心するわ!

言葉遣いは悪いけど、一番まともだもの!


「ふふ。別にいいでしょ、エリシオに畏まる必要なんて無いもの。そうね、今度から私が来れる早朝は稽古をつけてあげるわ。自分の護衛騎士が弱いだなんて、嫌だもの。」


「は!?誰がお前なんかに…!」


拒もうとするエリシオを黙らせる為、私は跳躍してくるんっと近くにあった案山子の前に着地すると、剣を抜き一瞬でバラバラにして見せた。


唖然とするエリシオに、にっこり笑って見せる。


「私が稽古をつけるんだもの、必ず強くしてあげる。じゃあ、また次の早朝にね!」


私は再び跳躍し屋根に登ると、エリシオに手を振ってご機嫌でその場を去った。


ふふふ、いい暇潰しが出来たな~!

身体も動かせるし、エリシオも強くなるし、一石二鳥!


私が屋根から降りて庭園を駆けようとしていると、バッと目の前を塞がれる。


思わず後ろに飛び短剣を構えると、そこにはザブド殿下が眉間に皺を寄せ立っていた。


「お前、今まで誰にも剣の指導なんてしなかったのに、あの騎士に個人指導するなんてどういう風の吹き回しだ。アイツが好きなのか?」


はぁ?

聞くのそこ?


そもそも何で私が剣を扱えるって知って…

あぁ、ハイ。ニルリル様ですね。


「エリシオは私の護衛騎士ですもの。可愛がってはいけませんの?」


「可愛がってって…」


可愛いでしょうが!

まだ何も出来ないひよこチャンだもの!

それを鍛え育てる事の何と心躍る事か!


私がキラキラとした瞳でこれからのエリシオの成長に思いを馳せていると、ザブド殿下は急に腰に携えていた剣を抜き、私に斬り掛かってくる。


私は咄嗟にそれを持っていた短剣で受け止めた。


「それなら、俺も可愛がってくれよ。俺もアルマに可愛がられたい。」


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