13、話
まぁこの状態で友好も何も無いのだが、私はとりあえず般若の形相でリーヴス殿下を睨んでいるニルリル様に声を掛けた。
「ニルリル様は私と一緒に座りましょう?女同士、仲良くさせて頂きたいですわ。」
「ッ!喜んで!!!」
ニルリル様はすぐに機嫌を治すと、私に駆け寄り腕を絡める。
それを見たザブド殿下はギョッとしてニルリル様を睨んだ。
「オイ、ニルリル!狡いぞ!俺だってアルマと座りたい!」
「ははっ、御冗談を。ザブド王子は私の隣ですよ。女性は女性同士、話したい事もあるでしょう。」
リーヴス殿下のいつにない寛大な物言いに、私は吃驚する。
さっきの私のキスが功を奏したか…
捨て身でぶつかった甲斐があった。
ここまで効果を発揮するとは。
私がリーヴス殿下を眺めていると、ニルリル様がくいっと腕を引っ張った。
「アルマ様、早く座りましょう?私、アルマ様と沢山お話したいのです。」
うっとりした瞳で顔をのぞき込んで来るニルリル様に若干引きながら、私は促されるまま二人で寄り添いソファーに座る。
しかし、これはチャンスなのだ。
ニルリル様の能力は多岐に渡るようだし、属性はたぶん闇だ。
闇の属性は不明な点が多いし色々聞き出さなければ…
私はくっついたままのニルリル様をそのままに、ニッコリと微笑んだ。
「ニルリル様の能力は素晴らしいですわね。ザブド殿下は炎を操っておられますけど、さっきの紫の煙は何の属性なのですか?」
私の問い掛けに、ニルリル様はふふっと笑う。
「もう、アルマ様ったら…分かってらっしゃる癖に。それに、私、アルマ様が魔法を使える事も知っておりますのよ。今や御伽噺と化してしまっておりますが、私達の能力などより遥かに優れた力ですもの。二人きりで見せ合いっこなどしてみたいですわ。」
小声で囁くニルリル様に、私は一瞬で警戒モードになった。
先程私を遠視で見ていたと話していたし、この様子では身体能力についてもバレているのだろう。
それならこちらも掌を明かしつつ、ニルリル様の能力について引き出すまでだ。
「あら、それは良いですわね!それでしたら、夜、私のお部屋にいらっしゃいませんか?女同士二人きりで秘密のお話を致しましょう。」
私の提案にニルリル様は頬を染めると、私の手を握り「喜んで!」と頷く。
ところがそれを聞いていた王子二人が、慌てて反対して来た。
「な、何言ってんだ!ニルリルをアルマと二人きりに何かさせられる訳ないだろう!?しかも、夜に寝室でなど…絶対駄目だ!」
「そうだよ、アルマ。流石の私も許可出来ない。アルマは私の部屋で眠るんだから。」
「あぁ!?お前もふざけんな!!」
ギャーギャー煩い二人に辟易としながらも、私はリーヴス殿下に狙いを定めおねだり作戦に入る。
「殿下、お願いです。私、女の子のお友達がおりませんの。このままお友達が出来なければ、エリシオにお友達になって貰うしか…」
「…分かったよ、許可しよう。でも一時間だけだからね。」
ふふ、やったわ!
まぁ一時間でも十分だろう。
私はニルリル様に
「殿下からお許し頂きましたし、これでお話出来ますわね!」
とキャッキャッと喜ぶ女子を演出した。
リーヴス殿下はそれを仕方無いなという感じで眺めていたが、ザブド殿下は向かいからでも分かるほど歯軋りしている。
まぁザブド殿下についてはリーヴス殿下にどうにかして貰おう。
極力近付きたく無いしな。