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11、ザブド殿下


「アルマ!!お前、俺という者がありながらリーヴスと婚約するなどどう言う事だ!?」


そう言って怒るザブド殿下の身体からは熱気が漂っている。


私達は城の入口でナガリア国御一行を出迎えた後謁見の間に移動したのだが、入って早々、リーヴス殿下と私の婚約を知ったザブド殿下により部屋が灼熱地獄と化してしまった。


よくよく思い返せば、私とザブド殿下は幼い頃王城で行われた晩餐会で一度お会いしている。


その頃私は既にリーヴス殿下に付き纏われていてそちらで頭がいっぱいだった為、こうしてお会いしてもすぐには思い出せない程すっかり忘れていたのだ。


そもそも当時はそのリーヴス殿下がどうしてもと希望し、陛下達も同じ年頃で遊び相手としても丁度良いだろうとの事で、私自身は嫌々晩餐会に参加しただけなのだ。


しかも幼かったザブド殿下の態度は傲慢で、すぐに嫌気が差してしまった私はザブド殿下を放置していたと思う。


にも関わらず、何故かザブド殿下には“俺に媚びない女は初めてだ”と気に入られてしまったのだ。


全く、どうして私の周りにはおかしな奴しか居ないのだろうか。


私は取り敢えず近くに居るリーヴス殿下を守るため、ドレスの裾から今出しましたみたいな顔をして魔法で生成した盾を構える。


そこに丁度怒り狂ったザブド殿下の熱波が襲い掛かり、リーヴス殿下に当たるのを防いだ。


「どういう事も何も、そう言う事だよ。幼い頃にも婚約者になる予定だと伝えただろう?今更何を怒っているのか理解できない。」


盾の横から顔を出し首を傾げるリーヴス殿下に、ザブド殿下の怒りが益々上がる。


「今更だと!?俺がアルマに手紙を出してもお前が全て握り潰していたんだろうが!!何度婚約の打診をしたと思ってる!?」


えっ、そうなの!?


私が驚いてリーヴス殿下を見ると、まるで何も聞こえていないかの様にザブド殿下を無視していた。


…やったな、これは。

確実に握り潰してたわ。


しかし、私はそんな事よりザブド殿下の横で涙を溜めて震えているニルリル様が気になって仕方がなかった。


そりゃ自分の婚約者が他の女に想いを寄せていた様な事を目の前で言われれば、泣きたくもなるだろう。


私がどうフォローしようか悩んでいると、


「本当です!私もアルマ様と素敵な結婚生活が送れると聞いて楽しみにしていたのに…ッ!!」


と叫んだニルリル様に固まった。


「あ、あのニルリル様…?私と貴女様は初対面の筈ですが…」


恐る恐る話し掛けてみると、ニルリル様はパァッと花が咲くような笑顔で私を見る。


「えぇ!初対面です!しかし、私はザブド殿下に毎日の様にアルマ様の事を教えて頂いておりました!ついでに白状すれば、遠視でアルマ様の様子をこっそり観察していたのです。そして、いつしか私もアルマ様に想いを寄せるようになり…」


オイオイ、ちょっと待て。

今遠視って言ってなかった?

私を盗視してたって事!?


予想外の伏兵にダメージを食らっているうちに、陛下や宰相達が何とか王子達を取りなし、謁見の間は表面上落ち着きを取り戻していた。


そして、どうしても私と話がしたいと希望するザブド殿下とニルリル様に、陛下が一旦応接室で話をする様リーヴス殿下に申し付ける。


リーヴス殿下は不服そうな顔をしていたが、それでも私の肩を抱き寄せ挑発的にザブド殿下を睨んだ。


「では、ザブド殿下。ご案内致しますのでこちらへ。」


「あぁ、臨むところだ。」


いやいや、一体何をする気なんですか貴方達は!




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