表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/71

1、婚約破棄


公爵令嬢として生を受け早十六年。


お母様似の金髪碧眼と言う絵に描いた様なお嬢様に成長した私は、毎日習い事に精を出していた。


今日も貴族令嬢らしく午前中はみっちりマナーとダンスのレッスンを行い、午後からは家庭教師のナタリー先生と歴史の勉強。


ところがいつも通り午後からの勉強に意気込んで昼食を取っていると、突然お父様から爆弾を落とされた。


「アルマ、実は第一王子のリーヴス殿下の婚約者だったエルマー嬢についてなんだが、父であるアンバー侯爵が不正を行っていて爵位が剥奪となった。その為婚約は破棄されたんだが、リーヴス殿下がアルマとの婚約を希望されていてね。以前辞退した時から年数も経過しているし、一度顔合わせがしたいそうなんだが…」


私はお父様の言葉に完全に固まる。


リーヴス殿下とは歳も近く、公爵令嬢である私は兄と共に幼い頃から話し相手として度々城に呼ばれていた。


もちろんそれだけが目的と言う訳では無く、王家側から私をリーヴス殿下の婚約者にと打診もあったのだが、そのすぐ後に私は領地の屋敷近くの森で崖から落ちて怪我をしてしまったのだ。


その時は万が一の事を考え

「後遺症が残るかもしれないから。」

と理由を話し婚約を辞退したのだが、しばらく経つと傷跡すら残らず怪我は完治した。


リーヴス殿下は私が婚約を辞退した為、結局第二候補であったエルマー嬢と婚約となったのだが…

まさか今になって婚約破棄となってしまうとは。


正直に言うと、私はリーヴス殿下が苦手だ。

そして、好みでもない。


容姿は物語に出てくる様な美形で黒髪に紫色の瞳が大変に美しいのだが、中身は絶対病んでいる。


そもそも私が気に入られた理由が奇怪なのだ。


それは初めて城を訪れリーヴス殿下と庭園を散歩中の事だった。


当時のリーヴス殿下はかなり無表情な子供で、兄と3人で会話も無く花を見ながら歩いていたのだが、幼かった私はふとリーヴス殿下の頭に蜂が止まっているのに気付いた。


その時幼心に

「殿下が刺されてしまう!守らねば!!」

と思った私は、あろうことか短い足で咄嗟に蜂めがけ回し蹴りを繰り出してしまったのだ。


兄がそれに気付き

「殿下!しゃがんで下さい!!」

と見事な判断力でリーヴス殿下の頭を死守した為大事には至らなかったが、リーヴス殿下がしゃがんでいなければ確実に頭を吹っ飛ばしていたと思う。


幸いしゃがむ際に蜂も居なくなり私の回し蹴りでリーヴス殿下の頭が無くなる事も無かったのだが、何故かその後リーヴス殿下がキラキラした瞳で、


「アルマが僕の運命の相手だったんだね!!」


と微笑んだのだ。


さっぱり意味が分からない。


しかしそれ以来私は城に上がっている間はずっとリーヴス殿下のお側に侍り、片時も離して貰えなくなった。


それどころか二人で居る所を他の貴族の子供に邪魔されようものなら、リーヴス殿下はその子供を二度と城に上がれない様排除する。


私は城に上がる度、一人、また一人と消えていく子供達に戦慄した。


血が繋がった兄だけは例外だったが、それでも良い顔はしなかったのだ。


エルマー嬢と婚約してすっかり安心しきっていたのに…


私の微妙な反応を見て、お父様も苦笑した。


「リーヴス殿下はアルマが怪我をした後もアルマ以外とは婚約しないと仰っていたらしいんだが、王が独断でエルマー嬢と婚約させてしまってね。後々、すっかり妃気取りで登城するエルマー嬢と無表情に戻ってしまったリーヴス殿下を見て随分後悔したらしい。まぁこちらに顔合わせを拒否する事は出来ないから、これは決定事項なんだが。」


じゃあもう婚約もほぼ決定じゃない!

と心の中で叫びながらも、私は

「…分かりました。」

とお父様に返事をする。


そもそも王族の呼び出しを断れる訳が無いのだから、受け入れるしか選択肢はないのだ。


回し蹴りをした相手を「運命の相手だ」と頬を染めるリーヴス殿下の笑顔を思い出しながら、私は未だにリーヴス殿下が私に固執していた事実に恐怖を感じる。


しかし、同時に久し振りに対面するリーヴス殿下が、どれほど素晴らしい王子に成長しているのだろうと少しだけ楽しみな気持ちもあった。


それは私が転生者で、ひたすらこの国だけで生まれ変わり、ずっと国と王族に忠誠を誓い生きて来たからだと思う。


まだそれを意識してない幼少時にすらその染み付いた忠誠心のせいで身体が勝手に動いてしまう位、私の国の為に身を尽くそうという気持ちは変わって居なかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ