「普通の人間」のモラルとは。
残念ながら、私はまだ生きていた。
久々の投稿となるわけだが、今回の話は「普通の人間」と世間でみなされている方にとっては普段以上に「何言ってんだ、この精神疾患持ちは……?」事案になると思われる。これ以上不愉快になりたくなければ即ブラウザバックなどによる退去を強く推奨する。
私の知る世間において超絶ド変人(以降、この場では「異端者」と仮称する)とみなされている奴がどのような事象に憤りを覚えているか、自分が決して感じることのない感覚を興味本位でのぞいてみたいという方のみ、本駄文を読み進めてもよいと思われる。
……注意喚起はバッチリ行なった。当駄文により気分を害されたとしても、私は一切の責任を負わないのであしからず。
さて、本題に入るとしよう。
最近強く感じるようになってきたことなのだが、どうやら「普通の人間」が最低限守るべきモラルとしているものと、私が最低限守るべきモラルとして考えているものは大きく乖離しているらしい。それを強く感じるのは、私が世話になっている職場という空間内でのこととなる。
前の話でチラッとだけお話したが、私は某業界の非正規雇用者という身分で生きていくために必要な賃金をちびちびと稼いでいる。非正規雇用ということもあり月収は雀の涙に等しいのだが……そこはどうでもいいのだ、今回は。
手首に鉄の輪をかけられない範囲で語ると、一応チームに分かれてのデスクワークを行なっている。仕事内容を取りまとめ、適宜指示を行う「リーダー」。それに従い、割り振られた仕事を座席でこなす「チームメンバー」が数名。そんな感じの構成で、ほぼ毎日就労している、といった感じか(ただし、通院日は事前に報告を入れ、お休みをいただいているのだが)。
そのメンバーの中に、世間で「異端者」とみなされている私から見て「何なんだ、こいつ……」と疑念を抱かずにいられない素行を繰り返しているお方がいる。仮にその方を「A氏」として、豚箱にぶち込まれないよう心掛けながら語っていこうと思う。
……あえてもう一度勧告しよう。引き返すなら、今のうちだ。
ぶっちゃけてしまうと、私はA氏のことをあまり詳しく知らない。せいぜいわかるのは、私より入社があとであることと、私と同じ非正規雇用者であることくらいか。
ついでに言うと、同じ会社に勤めている方々のことを全くと言っていいほど知らない。理由は簡単。周囲は私との交流を求めておらず、私もまた、「普通の人間」とされる人達との交流をすでに放棄しているからだ。前の話でほんのりと誰とも会話ができない的なことを述べた気がするが、会話がなければ相互理解が深まらないのもある意味当然というわけで。
そのような、知己にも満たない相手に対し勝手に疑念やら不満やらを抱いていること自体がおかしいのかもしれないが、そこはまぁ……事前通達は再三に渡り行なったのでこちらの知ったことではない。
まず、A氏の行動で問題視している点について。とにかくA氏は、遅刻および当日欠勤をする回数が異常と言っていいほど多い。
前述の通り、私とA氏は非正規雇用者という立場にある。私が勤めているところでは、給与が正規雇用に比べて圧倒的に安い代わりに、休みの申請が非常に通りやすい。それを活用し、一応私は就労と通院による療養の両立をギリギリ維持できていたりする。単刀直入に言えば、休みたければ事前に申請さえしておけば、好きなだけ休めるのである。当然、出勤しなかった日数分給与はしっかり減らされるが。
しかし、A氏の場合、事前に勤務可能である旨を上役に伝えているにもかかわらず、出勤日当日に突然休む回数が、他の非正規雇用者と比較しても圧倒的に多いのだ。
これは流石にどの業界でも共通のルールであると信じたいが、欠員が出れば当然、現在揃っているメンバーだけでその日に課せられたノルマの消化を要求されることになる。つまり、A氏が担当する予定だった分のノルマを、出社したメンバーが消化しなければならなくなるのだ(私はA氏が当日欠勤をするたびに、リーダーが取引先が相手と思しき電話で何度も謝罪を繰り返しているのを目撃している。というか、私の座席がほぼリーダーの目の前なので嫌でもさせられている)。
なお、当日欠勤かと思わせて、遅刻してくるというケースも多い。一応遅刻の場合も、事前に事態が予測できる場合は一報を入れるよう新人研修の時に聞かされた記憶が私にはあるのだが、A氏はそれを無視しているのか、はたまた教育すら受けていないのかは定かではないが、リーダーが青ざめる中堂々と遅刻してきて当たり前のように座席へ着く。A氏の口から謝罪の「しゃ」の字も聞いたことがない。
当日欠勤および遅刻の理由の多くは「体調不良」(本人談)らしく、周囲も疑うことなくそれを受け入れてる。もしかしたらA氏も私のように何らかの疾病に悩まされているのかもしれないが、病院を勧められた際に「だって、病院行ったってどうせ原因わかんないって言われるから行くだけ無駄ぁ(かなりフランクなトーン)」という発言をしていたので、その線は若干疑わしかったりする。
……何故、A氏のことをほとんど知らないと言っているにもかかわらず、素行に対してだけはやたらと詳しいのか気になっている読者様もいるかもしれないのでここで念のため補足しておこう。私の勤め先は業務内容の都合上非正規雇用者の座席は固定されておらずたびたび変更されたりするのだが、A氏が出社する日はほぼ、どういうわけか私の隣にA氏の座席が用意されているのだ。目にしないための対処法としては、己の眼球を潰すくらいしか思い浮かばない。
同じチームで働いているとはいえ、せめて座席が遠ければそういった細かなA氏の行動まで見ずに済んでいたのかもしれない。しかし何を思ってか、何故かA氏はいつも私の隣に座席を用意されている。一体いつからそうなったのか……ちょっと思い出すのは厳しい。
ちなみに私も出勤時間中や職場内で体調を崩したりすることがあるが、誰からも心配のお声を一度もいただいたことはない。決して関わってはならない「異端者」ここに極まれり、である。
他にも私はA氏の行動で理解しがたいと日頃より考えていることがある。平然と居眠りをしたり、露骨にやる気のない姿勢での就労など、羅列するだけで本章の文字数が一万字を突破しそうなので極力省略するが……最も首をかしげずにいられないのは業務中の私語が尋常ではないことと、その私語の内容が私にとっては常軌を逸したものであることだろうか。
具体例を出すなら、就業開始時刻を迎えて数時間も経たないうちに「帰りたい」「疲れた」「眠い」「この仕事、飽きた」を連呼し始める、などになるのか。
A氏は声質の都合上あまり声の通りはよくなく、ボリュームもそこまで大きい方ではない。だが、それらのワードを口にする回数が文字通り、尋常ではないのだ。
手元に軽く目を向けてみると、確かにA氏の手は動いている。必ずではないが、三回に二回はそれなりのスピードで動かしている。しかし、それ以上に口の開閉数が多いのはいかがなものか。
私語の内容についてもう少し深く触れるなら、上役の悪口を平然と口にしたり、口を動かさず手をしっかり動かしているチームメンバーにしつこく話しかけたり、勤務態度をいじるように「ロボット」「マシーン」などと揶揄したりしていることがあげられるだろうか。ついでに言えば、他のメンバーの忙しさを考慮せず、自身の手が空いた際には「暇だ」というのがもはや恒例行事に等しかったりする。
だがこれらよりも、個人的に許せなかった一言がある。それは、少しばかりノルマ消化の目途が立ち、私以外のメンバー達が少しリラックスし始めた時に会話の流れで飛び出たA氏の発言だ。
その暴言……失礼、発言が飛び出したのは昼休憩明け頃のことだったと思う。A氏は他のメンバーとともに、私が所属するチームの中では比較的新人の部類に入る人にしつこく話しかけていた。「君、いつもどこでお昼の時間過ごしてるの?」みたいな雰囲気だったと記憶している。
それに対し、比較的新人にあたるメンバーは「外に出て、ご飯を食べたり、食べなかったり。お腹いっぱいになったら、眠くなってしまいますから」
と、律儀に回答。その人が会話を楽しんでいたか、迷惑がっていたかは私には判断がつかなかったが、ここでA氏はこう切り返した。
「寝ればいいじゃん。寝てもクビにならないんだし。不思議だよねぇー」
これを耳にうっかり入れてしまった私の心情は次の通りだ。
――クビにならなけりゃ何をしてもいいとか、こいつ一体どんな心持ちで仕事していやがるのだ。
はっきり述べれば、私の視点から見たA氏は仕事をこなすスピードには目を見張るものがあるが、素行不良も甚だしく、いつクビになってもおかしくないレベルの人材だ。しかし、私の中での常識・モラルに反する行為は、「普通の人間」にはそれらに該当しないものらしい。
ここまで読み進められている猛者に、ありのままの事実をお伝えしよう。A氏は前述の素行を長いこと繰り返しており、特にここ最近は悪化の一途を辿っている。だが、A氏はメンバーからも、リーダーからも注意を全くと言っていいほど受けていないのだ。
いや、補足するなら、たった一回だけリーダーに居眠りしているところを起こされたことはあるが、それ以外は完全にお咎めなし。当日欠勤をすれば、
「またかー。ま、A氏はそういうキャラだから」
と笑い飛ばされて終了。
居眠り、やる気のない業務態度については完全スルー。
幾多数多におよぶ私語については、基本はスルー。ひどい時は、周囲もA氏に乗じて談笑を始め、ノルマ達成への道は遠ざかる一方ときた。
つまり何を言いたいかというと、「普通の人間」はこれらの言動の数々をモラルに反しているとはみなさず、平然と許容している。しかし周囲から「異端者」とされる私は、その寛容さに一切寄り添うことができない、ということだ。
多分、これを読んでいる方々もA氏の素行の数々は許容されて当然であり、何故私がこの場で自らの経験を綴り、怒りをにじませているのか見当もつかないだろう。だって、これを理解できてしまったら、その人は私と同じ「異端者」の視点で日常生活を送っていることになってしまうのだから。
各種精神疾患およびかつてより持ち合わせた特性の都合上、私の心はひどく脆い。そして、心の状態と肉体の調子がかなり密接に結びついており、ストレスに晒され続けるだけであっさり体調を崩してしまう。
そんな虚弱な精神を持った「異端者」が、「普通の人間」のカテゴリーに入る人達が行い、許容している事柄にいちいち過敏に反応しているとしたらどうなるか……想像できるだろうか。
もし、想像できたとしても、絶対共感してはならない。「普通の人間」は私が精神疾患持ちであることを知っている知らないにかかわらず、「異端者」とみなして距離をおいている。そしてA氏はというと、周囲からも大切な存在・戦力として扱われ、メンバーやリーダーとも仲は良好だ。
「普通の人間」がモラルに反していないとみなすA氏は当然のように仲間として受け入れられ、「普通の人間」が許容できる行為を許すことができずにいる「異端者」である私は、メンバーが交流を拒んでくるのに合わせ、こちらからも交流を拒んでいるためほぼ完全に孤立している。
これ以上不用意にストレスを溜め込まないよう「普通の人間」の行動や感性に興味を抱かないようには極力努めてはいる。だが、どうしても気になっていることが一つだけある。
「普通の人間」がモラルに反していると判断するのは、一体どのような行動からなのか。
……ま、私は新人に仕事のノウハウ聞かれた際にうっかりちょっと大きめの声を出しただけで、リーダーから注意くらっていたりするのだけどね。
今回はここまでとする。以上。