主の談話
「滝の」
「…………なぁに、空の。あたし、寝てたんだけど」
「新しい子が生まれたよ」
「ふぅん、よかったじゃない。で、それがどうかしたの?」
「湖なんだ」
「あら、そう。いいところね」
「そうだね」
「ええ」
◆
「滝の」
「なぁに、空の。また来たの?」
「湖の子のことでお願いがあるんだけど」
「いやよ」
「滝と湖って似てるよね」
「全然」
「これも縁だと思って」
「無理」
「話くらい聞いておくれよ」
「やだ」
「そこをなんとか」
「よそに行きなさいよ」
「そんなあ」
◆
「滝の」
「いやよ」
「まだ何も言ってないよ」
「あんたの相手ができるやつなんていないわよ」
「みんなそう言うんだ」
「当然よね」
「そんなあ」
◆
「滝の」
「お引き取り願おうかしら」
「冷たいなあ」
「あんたみたいにフラフラできるやつなんていないのよ」
「みんなそう言うんだ」
「当然じゃない」
「そうかなあ」
◆
「滝の」
「しつこいわね」
「湖の子がね」
「またその話?」
「人里に移った」
「ふぅん」
「二百三歳だ」
「そう」
「若すぎる」
「そうかしら」
「先代は三百四十五歳だった」
「へえ」
「どうしよう」
「知らないわよ」
「…………どうしよう」
◆
「滝の」
「何よ、空の」
「戦争だ」
「ふぅん」
「人間と湖の子が戦っている」
「へえ、すごいじゃない」
「このままだと湖の子が殺される」
「それがその子の運命ってことよ」
「どうしよう」
「放っておきなさい」
「…………どうしよう」
◆
「滝の」
「何よ、空の」
「湖の子が」
「今度はどうしたのよ」
「死んじゃった」
「そう」
「あっけなさすぎる」
「そうね」
「まだ二百四歳だった」
「そういうこともあるわよ」
「可哀そうだ」
「そうね」
◆
◆
◆
「滝の」
「…………なぁに、空の。あたし、寝てたんだけど」
「新しい子が生まれたよ」
「ふぅん、よかったじゃない。で、それがどうかしたの?」
「湖なんだ」