4話 「生きる理由」
修正版です。
後ろを振り返るとそこには頭から血を流して倒れているエリカの姿があった。
「エリカ!」
叫んでも返事はない。そして今は脅威が目の前にいてエリカの元へ行くことが出来ない。
「グルルルル...」
狼のような形をした何かはうなり声をあげながらこちらへ近づいてくる。
近くにあった木の棒を拾い、狼と対峙する。
狼が飛び掛かってくる。
その軌道に木の棒を突き刺そうとした。
しかし、間に合わなかった。
木の棒は狼の横をかすめていく。
衝撃を覚悟して目を閉じるが、衝撃があったのは体ではなく腕だった。
目を開けると奇跡的に木の棒から枝が伸びており、そこに噛みつく狼の姿があった。
狼は目を見開いて地面に落ちていく。しかし着地が出来ずに倒れてしまう。
そこにがむしゃらに木の棒を突き刺した。
突き刺された狼からは血が噴き出している。
やがて動かなくなったが、それでもなお無心で突き刺し続け、やがて正気を取り戻した頃には狼であった肉片と夥しい量の血が流れていた。
「エリカ!」
狼の死体を放置し、エリカに駆け寄る。
エリカは頭から血を流して意識を失っている。
持っていた着替えで止血をし、エリカを背負って村へ駆けだした。
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「ありがとうセントレル~~~~!!!!」
意識を取り戻したエリカは、けが人とは思えないほど元気な声で抱きついてきた。
村の診療所に駆け込み、医者にエリカを預けてからもずっと診療所にいた。
エリカに対してはは過去に助けてくれた命の恩人であるという意識が強く、親友であり恩人である彼女が放っておけないのは紛れもない事実であった。
しばらくして頭を包帯でぐるぐる巻きにしたエリカがうるさいほどの声とともに駆け寄ってきた。
「守ってくれてありがとうセントレル!」
そう叫ぶ少女の顔は負の感情が一切ない満面の笑みだった。痛いだろうに、そんな感情は全くない。しかし、実際にその頭には見るだけで痛々しい包帯が巻かれている。恐らく狼を倒せていなかったらもっとけがは増えていただろう。最悪死んでいたかもしれない。
...そうだ、こんな強い子だって一人では生きていけないんだ。
僕を守ってくれたこの笑顔を守ろう。この子を幸せにしよう。もともとこの子がいなければ今の人生は無いんだ。残りの人生はこの子のために使おう。
そう、決めたのだった。