1話 「科学者」
私は死んだ。あれだけのことをしながらいともあっけなく死んだ。
科学者、それはこの世の理を研究し人々の生活を豊かにするために公表する仕事だ。とある科学者は医療業界に大きな衝撃を与えた。またある科学者は人類の謎を解き明かそうとした。
有馬忠彦は原子研究の第一人者であり、物理学者としても功績をあげた人類史にも名を遺す有名人だ。だがその名は良い方向と悪い方向、両面を持った名として刻まれている。
原子銃
この銃で有馬のいた国は敵国と約100年続いていた戦争に勝利という終止符を打った。しかしその勝利は大きな代償を生み出した。農地には放射能を振りまいて畑作を不可能にし、人体には放射線障害をもたらした。
国は勝利を喜んだが、有馬は全世界から恨まれた。原子銃を持っているだけで極刑だった。作り出してしまった有馬も例外ではない。死刑を望む声や暗殺者が世界各地から押し寄せた。
そしてある日。
「有馬ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「なに!?」
有馬は背中に熱い感触を覚えると同時にその衝撃で倒れこんだ。
地面に倒れ伏し、虚ろな目で上を見上げる有馬の視界には男が立っていた。
「よくも!私の妻を苦しめやがって!」
男は有馬への恨みを泣き叫びながら何度も何度もその手に持った包丁を振り下ろした。
やがて男がその手を止めたころ、有馬に息はなかった。
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一体何日、いや何年経っただろう。悠久とも呼べる時の中を彷徨っていた気がする。
周りには光も音も感触も何一つがない。言うなれば無の世界でただ一人永遠と過ごした。
永い時から目が覚めて最初に飛び込んできたのはとんでもない西洋美人だった。その美人が私を上から見下ろしていた。その光景が最期の光景とリンクし吐き気がこみ上げてくる。だが、私は確かに死んだはずだ。これは死後の夢なのか?
「あなたの名前はセントレル。セントレル=ランバーよ」
この女性は何を言っているんだ。私は有馬忠彦だ。
そして女性が有馬に向かって両手を伸ばす。
何をする気だ?まさか私を絞め殺そうと...
有馬の体は軽く持ち上げられ、女性に胸に抱かれる。
そして有馬は違和感に気づく。
私の体が小さい...!?まるで赤子のようではないか!?
そ、そうだ。こういう時はまずコミュニケーションだ。
しかし、有馬の体から発せられるのは「あ」にも「お」にも満たない声とすら呼べない音だけだった。
そして有馬はようやく現状を理解した。
これは...いわゆる「転生」というものか?
現に私は今赤子で、「セントレル」と呼ばれた。
これはつまり記憶を持ったままセントレルとして生まれたと考えるのが自然か...?しかし...
そうして考えていると部屋の中に一人の男が駆け込んできた。中肉中背で体感がしっかりした男は麦わら帽子をかぶり、首にはタオルを巻いている。
「産まれたのか!?」
「ええ、男の子よ」
「そうかぁ...良かったぁ...」
誰だよこの「The・農家」みたいな人!
しかし、今の会話からするとこの二人が父と母で間違いなさそうだ。
そして有馬は今後忘れることの出来ない衝撃的な光景を目にすることとなる。
「どうした?寒いか?」
「ええ、少し」
「わかった。ちょっと待ってろ」
そうして駆けだした男はしばらくすると薪を抱えて戻り、それを暖炉に置き始めた。
そして...
「ファイアー!」
男が叫ぶと同時に火の玉が男の手から飛び出した。
初めまして、あけいちです。初投稿です。至らない点がある...というか至らない点だらけだとは思いますが生暖かい目でこれからの成長(?)を見守っていただけたら幸いです。
さて、この物語は「科学者が魔法世界に行ったらどうなるだろう」というただの思い付き10割で構成されています。主人公有馬忠彦くんは現実世界でいうとアインシュタインとパスカルを足して2で割ったような存在だと考えていただければぴったりくらいであろうと思っております。これからの成長に期待です。
蛇足ではありますが、今後ともこのシリーズをご愛読いただければ作者は感無量でございます。今後もよいものを提供できるよう頑張りますので応援よろしくお願いいたします。
※2019/7/14 内容と時系列を大幅に変更しました。