ニヤニヤしてるからバレてるぞ
かくして怒濤の準備は整い、遂に勇者様が召喚された。
歴代の勇者、聖女が召喚された国会議事堂の大広間が陽炎のように揺らめき、空間が歪む。
うねり渦巻く大広間の中程から黒い物が落とされた。
なんとも懐かしい、学ラン姿の勇者様が現れた。
頑固そうな癖毛に青白い顔、いかにも運動をしていなさそうな猫背。
「ようこそいらっしゃいました勇者様」
「ゆ、勇者?」
上擦った甲高い声で勇者様が答えた。
「はい。貴方様の事です。ワタクシはこの国の第二王女エリザベスと申します。」
「ひゃふい!」
金髪碧眼の美しい王女に微笑まれ、勇者は口をムニムニさせ固まった。
最初はエリザベス王女でなく柔らかなお顔の第三王女のケイト様の方が良かったかもしれないと私は反省した。
童貞にパツ金美女はハードルが高かった。
「こ、こ、ここはどひょ、何処のようにになんで僕はここ、何処の?」
「落ち着いて下さい。ここは勇者様の居らっしゃた世界ではなく、勇者様から見て異世界となる【アルベタ】です。」
勇者様は王女の言葉に薄い目を見開いた。
「い、異世界召喚?も、もしかして?」
「えぇ、貴方様は勇者として召喚されたのです。」
その言葉に勇者様の顔に喜びが溢れた。
それは笑うのを堪えて唇をムニムニと噛み締める、エロ同人を買ったオタクのそれと同じだった。
こいつはかなりとアレな勇者様が召喚されたと私は接待に腹を括った。