雪解け、というよりは
突然だが、というかさっきも言ったが俺はインドア派だ。
あまり体を動かしたりする趣味は無い。
まあこの辺は好き好んで「卓上遊戯研究会」なんていう倶楽部で活動していることからもわかってもらえるとは思う。
加えて言えば自宅の二階のベランダから飛び降りるなんて経験は俺にはない。(ある方が少数派ではないか)
つまり、何が言いたいかというと。
飛び降りた時の衝撃があんまりにも痛かったもんで泣きながらのたうち回りながら叫びながら駆け付けたレスキュー隊の人に救助されても余り情けなくはない、という事だ。高校2年の春である。
痛いもんは痛い、というか普通に骨が折れていた。まあ自分でも流石に思い返してみれば正直あれは無いよなとは思うが。自分でも少し思うくらいならレスキュー隊の人とかはどう思っていたんだろうとか考えると悲しく、切なく、そして涙の海で溺れてしまいそうになるのでよろしく無い。まったく。
そんで現在は救助された日の次の日、ラップ現象の影響とか骨折とかその辺で病院にきていた。
検査とかその辺が終わって待合室に居る。良く分からん器具で良く分からん事されて良く分からん事言われて良く分からんまま終わった。二日検査入院とだけ言われて。
知らない。もう知らない。どうにでもなれ。一番心が重症だ。全治75日、人の噂が消えた頃に漸く治る兆しが見えてくるでしょうね。
永遠に笑い話にされる可能性を考えてると姉貴が背後から背中をど突いて来やがりやがった。
チョモランマよりも高くマリアナ海溝よりも深く傷ついている血の繋がった弟に対してひでぇ事しやがる。
抗議の一つでもしてやろうか、と思い振り返ると件の厚着の子が姉貴と一緒にいた。
男の子だったのか。
んで、アホ面下げてニッカニカしてる姉貴はなんなのだ。宝くじでも当たってたのか。
「いってえなバカ、で、その子は何処の誰なんだ?姉貴の彼氏って訳でもねえだろ?公園ででも攫って来てたのか?」
「全くもってアタシの弟とは思えないほど余計な事しか言えないねぇ、アンタって男は。しけた面してっから気合い入れてやったのさ!」
それより、と続けて
「この子、ウチで面倒見る事になったから!」
足と同時に耳もイカれたらしい。
もしくは目の前の姉らしき人物の脳が、だ。
「姉貴、言いたい事はいろいろあるが……ショタコンだったのか?」
情けも容赦も無い鉄拳が落ちてくる。下手に避けると足が危ないので素直に食らう。
「説明の足りんアタシも悪かったかもしれんが、なーんて言い草だよ!そんなんだから彼女いねぇんだろうが!」
彼女、募集中です。出来れば暴力は振るわないコ。
「まあ、なんだ。あんまり詳しい事は言えないけどこの子ラップ現象と一緒に〔発生〕した……。あーいや、違うわ。えーっとつまり身寄りが無いって訳だ。」
政府のナントカ機関に姉なんかが属しているとちょくちょく普通一般の人は知らんような単語が会話に入ってくる。
……俺は良いがこのバカ姉は本当に大丈夫なのか。
「わかったわかった、つまり上司にその子の面倒を見ろと言われた、と。」
ウンウン、と満足そうに頷く姉貴。つくづく男らしい女だ。
「おう!そういう事ね!後この子アンタのイッコ下らしいわよ。」
ほら、と背中を優しく押された子が俺にオノマトペにしてぺこりといった擬音のつきそうなお辞儀をする。……どう見ても150にならない位の大きさだ。
へ、へぇー。まあ、人は見た目によらないって言うしね?まあ多少の事ではね?
……よらなすぎるでしょ。世界は広いわ。




