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ちきゅうはほろびてしまった!!  作者: 朝妻曇
「日常」とタグ付けられた現実の。
2/6

少年の帰路は晴れのち曇り

帰路につく。

今日の部活も誠に有意義な時間だった。

他の奴等とは方向が違うので早々に別れを告げ荷物を肩に提げ、歩を進める。

俺の家は部活棟とは正反対の裏門から十分程度自転車をかっとばした所に有るが、現在は徒歩だ。不幸なことに自転車は今朝がたにパンクしていたことが判明し、自宅に置いてきたのだ。

まあそんなわけで特に誰とというわけでもなく一人で足をさらに前に出す。

「はぁ、腹へった……」

柄にもなく独り言が口をつく。少し恥ずかしいな……、誰にも聞かれていなかっただろうか?

自然な仕草であたりを見渡すが、誰もいない……な。

溜め息を一つ、また幸せが逃げていった。イカンな、最近めっきりついてないと言うのに。

ここは一つ気分を変えることが大事だろう。おもむろに制服の上着を脱いでカバンの中にぶち込む。ついでにカッターシャツのボタンも全開だ。涼しい。

解放される、という快感。露出狂の気持ちが分かってしまう。

というかこの季節に上着着用を義務付けられる方がおかしい。全時代的である。世界は一度崩壊しても堅物は堅物であったか。新世紀とすら呼ばれているのに。暑さには新世紀人も敵わん。

春の陽気を身体中に集め頭が完全にヒットした学生がそこにいた。っていうか俺だ。早くなんとかしてくれ。

……アイスでも食うか?



とても冷たい。お腹を壊してはいけないのでボタンは付け直しておこう。アイスは家に居るであろう姉貴の分まである。太っ腹である。

しかし、どうして女兄弟って言うものはこう現実と創作とでああも性格がかけ離れているのだろうか?

いや、わかる。俺も現実と創作を混同したりはしていない。姉貴にゆるふわで母性溢れる聖母のようになれとは言わない。しかし余りにもあんまりではないか。俺はぶっちゃけ姉貴のことを『姉』としては好きである。言うなればシスコンだ。だが!しかし!だ。『女』としては……どうだろうか。言いたくはないが『ない』。

改めて家族愛の大切さを確認したところでそろそろ家の近くだ。

今日もそれなりに頑張って、それなりに疲れたな……



我が家とは、帰るべき場所。安らげる場所。課題ノルマを課されることは無く。また、自分を偽る必要の無い場所である。

少なくとも俺にとっては。

なんとも恥ずかしい話ではあるものだが、十年前に両親が行方不明になり親戚の繋がりも無かった俺は唯一の肉親である姉を『安心』出来る『居場所』としてみている。のだろう。

やはり考えるだけでも少し恥ずかしい。忘れてしまいたい。無かったことにしたい。

俺は、そんなことを考えながら。自分の家のドアを、開けた。

「ただいま」

……返事がない。姉は基本的に家から出ることはない。仕事も家でやるしそもそも姉は十年前足を悪くしている。寝ているのか?

取り敢えず、晩飯の為に買い物にいかなければいけない。着替えを………………。


何故か手が思うように動かない。……何だ?


酷く……、酷く手足が痛い。何か、嫌な気配がする。動く事に煩わしさを感じる。寒い、寒い、寒い。

四月も終わりに近いというのに、寒い。

何故気がつかなかった?いや、何故今気が付けた?

急に寒くなったというよりは『急に寒いことに気が付いた』だ。

そして何より先程から感じるこの『気配』は何だ?

姉貴は?嫌な感じが身体中を迸る。疑問符だけの脳ですっかり異界と化した自宅のリビングを素早く観察する。

霜が、氷柱が、広くはないリビングを覆っている。

……二つだけ理解した。

一つは今、俺は生命の危機に瀕している。

二つ目は、この状況は明らかに異質にして、『日常的に起こる些事』では決してない、ということだ。

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