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ちきゅうはほろびてしまった!!  作者: 朝妻曇
「日常」とタグ付けられた現実の。
1/6

春の陽気を手招いて

科学が進歩した世界ではもちろん兵器とかその辺もイカれた力を持つ訳で。

これまたイカれたテロリストなんかも狂った兵器の恩恵に預かれる訳で。

主義や主張なんかはもう今となっては知ったところで仕方が無いんだけれど、まあその主義主張がいき過ぎた力を持って暴走した結果。


地球は一度滅びてしまったのだ。


----2xxx年5月日本 Q県N市 私立葉上ハイスクール

じわじわと暑くなりだしてきた気候の中、近代史の授業を聞き流しながら俺はグラウンドで行われている違うクラスの対人演習の授業をぼーっとして見ていた。特に意味は無いが近代史は暗記科目だから別に授業は聞かなくても良いのでは、といった都合の良い持論に自分で騙されている。暗記は得意なのだ。先生が多少年配というのも相まってこういった行為は寝てさえいなければ以外とバレ無いものだ。

ぼーっと見ていたグラウンドの生徒達が引き上げて行くところが見え、

(そろそろ授業も終わりかな?)

と、思ったものの時間的には未だ10分程有る。憂鬱だ。こういう時の10分は授業中で一番長いのだ。

仕方なく先生の話を聞きつつ教科書に目を落とす。グラウンドを見ながら心ここに在らずな状態ではあったが、毛程も先生の話を聞いていなかった訳では無いのだ。

(12年前のテロ……か)

全世界同時多発自爆テロ。史上最悪の日。大多数の命が奪われ、住居は燃え、何もかもが灰になったあの日。

人類が地下で絶望するしかなかった日。

多くの人が死んだ。多くの動物が死んだ。多くの虫が死んだ。

正直思い出したくも無いが、こうして授業という形で教えられるまでも無くあの事件のことを忘れている生徒は特殊な場合を除きこのクラスは愚かこの学校にもいないだろう。欠伸を噛み殺しながら再度時計を見つめる。と同時にチャイムが鳴る。今日は(覚えていないが何かの都合で)午前中授業なので、本日の授業はこれでおしまいだ。

(今日はバイトも無いし、部活に顔を出すか……)

リュックサックに荷物を詰め、担任のHRもそこそこに聞き流して、号令とともにいつもよりも軽い荷物を背に教室を後にした。



----私立葉上ハイスクール 第3部室棟4階 卓上遊戯研究会部室


俺の通っている葉上ハイスクールは部活による個人の個性のさらなる成長を図っている。メジャーな物はサッカー部や野球部からマイナーなものはホットヨガ部まで幅は広く、部員が四人以上いて毎月の部活動報告と一定の成果、そして生徒会の認可さえあれば部活として認められる。部費は活動成果によって生徒会と教師陣が考えるそうだ、まあその辺はどうでも良いが。

俺の所属する卓上遊戯研究部はそんな緩い制度の中でも人数を揃えることのできなかった部活がなんとか存続しようとして合併を繰り返した苦肉の策の産物である。ルーツである将棋部の立ち上げから6年目なのに歴史は無駄に有る部活だ。

「ツモ、対々和、ドラ3、ダブ東、16000」

「っかー!さっちん強すぎ〜、手加減してよぉ〜」

俺が部室に近づくと切れ味の鋭い刃物の様な声と、対照的なふんわりとした声が聞こえて来た。麻雀をしている様だ。

「お疲れ、皆早いな?」

ドアに手をかけ部室に入る、と同時に挨拶をする。

「あ、お疲れー、あーちんたしけてぇー?さっちんつおいのぉー」

相当負けたらしい、同級生【真木 加奈子】は眼を潤ませながら懇願してくる。

そして麻雀で真木を再起不能にした張本人【羽柴 朔太郎】は、というと澄ました顔をして部室の備品であるポットでお茶を入れている。

「お疲れ様です。手加減をすると拗ねるのはセンパイじゃあないですか、それに三麻なんですから運の要素も強いですよ」

それより、と朔太郎は続ける。

「荒谷センパイの運の悪さにも救われましたけどね、全然上がれてなかったじゃ無いですか」

【荒谷 一俊】は部室のソファに身を投げクッションに顔を埋めている。

「カズ、いい加減その……ロマン狙いというか、そういうの狙うは止した方が良いんじゃあ無いか?」

俺はソファに居た【荒谷 一俊】の背中に腰掛け、その辺に荷物を投げる。ぐぇ、という音の出る不細工な玩具のような鳴き声をあげて喚いている。

「ロマンはー!正義なんですー!高火力!低確率!カッコいい!」

ていうかギブギブー!そろそろ苦し……。という声とばたばた床を叩く音を無視してポケットから砂糖菓子を取りだして【羽柴 朔太郎】に一つ投げ渡す。

「そらサク、優勝商品……だ」

危なげなくはなく、両手であたふたしながら無事キャッチする。

「っと、ありがとうございます。えっと、これ抹茶ソーダ飴……ですか……」

「ハハ、朔坊、多くは語らないが旨いぞ」

もう一つ取りだし口に放り込む、ウム旨いな。

「な~に~ゆ~え~?何故わらしにはくれなひのよさ~」

軟体動物かこいつは、という風な近寄り方をしてくる。純粋に怖い。生き物の可能性の体現というかなんというか。

「卓上遊戯研究会心得第三条、絶対正義は勝者のみ!お前の分の飴はないね」

正気を失いそうな表情でまとわりついてくる、恐怖の対象でしかない生物(?)を足蹴にする。

「と、いうか先輩?そろそろ荒谷センパイも限界そうですし……その……」

む……、卓上遊戯研究会略して卓研の期待のエースの言うことならばしょうがないな。尻に敷いた【荒谷 一俊】の尻を叩いて、もう一度叩いて立ち上がる。

……近くにあった竹刀を持ちもう一度尻を叩く、景気の良い音が部室に響く。

うむ、こんなものだろう。近くにある手頃な椅子に腰掛け、やっと一息つく。

「いや、やり過ぎでは!?バットは完全に要りませんよねそれ!」

「峰打ちだ、命までは取らんでござるよ」

「バットの峰って何処ですか!?後普通に喋って下さいよ!」

うむ、今日も【羽柴 朔太郎】は元気だ。ツッコミにまでキレがある。お前は最高だ。

「いや、別に痛くなかったし、そんなに気にしても無いよ朔ちゃん。というか朔ちゃーんは一月経っても慣れないねぇ、疲れるでしょ?」

ピンピンした【荒谷 一俊】が元気元気というジェスチャーを取る。当たり前だ、音はそれなりにしたかもしれんが本気では無い。

「峰打ちだったし」

峰打ちだったしな。

「今日の尻は40点だ、カズお前昨日寝てないな?」

「ゲェーー!な、何故それを……、やはり尻ソムリエか……」

「夜更かしは!お肌の天敵なんらよ!」

「いや、だからと言って荒谷先輩を脱がす必要は無いでしょう!化粧水を塗る必要も無いです!!何で荒谷先輩は嬉しそうなんですか!!!あーもう!真木先輩も率先して塗りに行かないでください!あんた女子でしょう!!」

……騒ぎは隣のロボ研の部員が止めに来るまで収まることはなかった。

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