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アラサー魔法少女、派遣します!  作者: ふたぐちぴょん
第2案件『官公庁の電話受付』
9/21

いよいよ最終日、そして打ち上げ!

 いよいよ最終日。泣いても笑っても今日が最後だ。 既にピークは過ぎているらしく、電話の本数も少なく周りも随分静かだ。 今日はこのあと、お楽しみがある。そう、『打ち上げ』……そう考えると、仕事もはかどる。あと1時間、30分、15分……

「はい、皆さん、お疲れ様でした!研修開始から今まで、本当によく頑張ってくださいました。感謝します!」

 川本マネージャーの言葉が、深く胸を突いた。そういえば、研修開始の時には、本当にこの仕事、こなせるのかなと不安だらけだった。でも、確かに魔法少女スーツの後押しがあったとはいえ、2ヶ月少々、よくやり遂げたと、自分を褒めてあげたくなる。

 さて、これから、お楽しみの打ち上げ。笠原SVはまだ残務処理があるとかで、休憩室で、少し待ってて欲しいとのこと。しばらくして笠原さんが現れ、打ち上げ会場に移動することにする。

 打ち上げ会場は、回覧にもあったとおり、中華料理屋だった。コース料理プラス飲み放題プランらしい。私はとりあえずビールを頼んだ。普段は家飲みばかりで、――引きこもり同然の生活だったから当たり前だが――仲間と飲む酒は、実はこれが初めてだ。笠原SVが、乾杯の音頭を取る。

 早速、私が質問攻めにあった。みんなの興味は、まずこの、魔法少女スーツにあるらしい。うちの派遣会社の制服です、これを着ると、ちカラが湧いてくるんですと答えた。魔法云々のことは、面倒なことになるといけないと思い、敢えて伏せておいた。また、受け答えがうまいと、お褒めの言葉も頂いた。こんな私が? と思ったが。続いて、しばらく談笑タイム。私はとっさに、一発芸のネタを思いついて。

「え~それでは、パターン別税理士のものまねをします!」

 この仕事も、しばらく続けば、担当の税理士の反応のパターンもわかってくるのだ。

 まずは、「はいはいはいはい!」と、有無を言わさず「回せ!」というパターン。

 引き続き、不機嫌そうに、「ああ……繋いで」というパターン。

「かっしこまりました~!」と言う、営業マンタイプ。

 「はい、税理士○○です」と、丁寧に自己紹介をする、若手女性のパターン。

 みんなもこのパターンがわかっているようで、一同大爆笑。

 しばらくすると、笠原SVが、

「ちょっと、SV打ち上げに参加してくる!すぐ戻ってくるから!」

 そういえば、SV打ち上げも今日だと言ってたな。ちょっと一杯やってきて、すぐ戻ってくるのだろう。しかし、待てども待てども帰ってこない。そうこうしているうちに、終了時刻となってしまった。メンバーのひとりが笠原さんに連絡を取り、先に二次会会場に行っててくれ、俺はあとから行く、誰か荷物持ってってくれ、と言われたらしい。みんな、店を出ていくが、笠原さんの荷物を誰かが持っていく気配がない。仕方ないので、私が持っていくことにする。結構重い。若手男性陣は、何をやっているのか。

 二次会は、全体の半分位、5人ほど残った。会場は、カラオケボックスだった。既に予約済みとのこと。まずは、若手たちに歌わす……じゃなかった、歌ってもらう。私は、ちょっと様子見したいのと、笠原さんに見せたいネタがあるので、今の所は控えておいた。

 若手たちも疲れたらしく、しばし小休憩となった。そんな中、野中さんが話しだした。

「初めてバイトというものをやったんだけど、ここは本当に暖かい職場で、こんな私でも安心して仕事できた……」

 すると、岩瀬さん――40代半ばくらいの女性で、コールセンター経験も豊富らしい――が、

「そうだよ~こんな職場、めったにないよ~!」 

 しばらくすると、笠原さんが戻ってきた。随分飲んでいるようだ。

「ごめん~ちょっとだけ顔出して、すぐ戻ってくるつもりが、無効で潰されかけて~」

 私は、待ってましたとばかりにステージに立ち、

「それでは、守屋真希、アイドルソング歌います!」

 実は、笠原さんがアイドルオタクであることを事前にリサーチしており、また、私が着ている魔法少女スーツが、ちょっとアイドルっぽいということで、アイドルソングを、振り付きで歌って踊ろうと決めていたのだ。可愛らしい前奏が始まる。私はそれに合わせ、踊ってみた。歌パートに入ると、全員で手拍子。笠原さんが曲に合わせて変な踊りをしているが、気にしない。曲が終わると、わっと拍手が沸き起こる。 

「実は俺、この曲のCD、持ってるんだよね~」

 笠原さんがそう言う。やっぱ、この選曲は正解だった。笠原さんにもマイクを渡そうとするが、「俺はいいよ~」と受け取ってくれない。すると、小林君(大学4年生で、官公庁への就職が決まっている男の子)が、「守屋さん、一緒に歌いましょう!」と。仕方ないので、二人でステージに立つことにする。歌ったのは、今流行りのアニメソングで、男女デュオのもの。これも、二人のコンビネーションが良かったらしく、完成が沸き起こる。そして、「守屋さん、もう一曲歌って~!」とリクエストがあったので、子供の頃はやった、不良学生物の歌を歌った。曲の盛り上がりにさしかかろうとした時に、インターホンが鳴って、「お時間5分前です」と。いいところを邪魔するな~!

 最後に、みんなと連絡先交換をして、別れた。いい仲間たちだったな~と。


 家に帰ったら、ずいぶん遅い時間になったが、リスナーへの報告も兼ねて、ネット生放送をやることにする。

「みなさ~ん、ちょっと酔っ払ってま~す!(ちょっとじゃないだろ!)今日まで、官公庁の電話受付の仕事、してました~(そんなもん、お前に務まるわけないだろ!)だって、出来ちゃったんだからしょうがないでしょ!今日は、打ち上げもあって、カラオケで歌ってきました!(どうせ、アニソンだろ!ドン引きされなかったか?)それが実はですね、職場の中に、アイドルオタクの人がいて、本当に盛り上がって、楽しかった!それでねぇ……」

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