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アラサー魔法少女、派遣します!  作者: ふたぐちぴょん
第2案件『官公庁の電話受付』
8/21

実際に電話を取るんだけど……

「さて、今日から実際に、電話を取ってもらいます。」

 川本マネージャーの、物腰は柔らかいが、ある種、脅しのような言葉が響く。

「といっても、まだ本数が少ないので、OJTとして、グループを組んで順番に取ってもらいます」

 それならなんとか……と、自分に言い聞かせるが、それでもやっぱり怖い……昨日発表されたチームを、さらに細かく区切り、4人チームとなる。チームのメンバーは、野中さん・私よりちょっと年下くらいの女の子・大学4年で、今年の春から官公庁への就職が決まっている男の子・そして私だ。みんな、いかにも仕事が出来そうで怖い……

 早速時間になり、電話を取る準備が出来た。私の番は、一番最後になった。まずは女の子から。どうやらコールセンター経験が豊富らしく、さすがうまい受け答えをしている。次は、男の子の番。官公庁への就職が決まってるだけあって、若いが貫禄のある受け答えをしている。続いて野中さん。若干どもっているものの、それなりに受け答えをしている。さて、私の番だ……電話機が鳴る。

「お電話……ありがと、ございます……確定申告……」

 やばい、頭が真っ白だ。うまく言えていない。相談内容自体は、そう難しいものではなく、マニュアルに載っているとおりだったが、ご相談者様を、怒らせていないだろうか……不安になる。いよいよ、魔法少女スーツの出番のようだ。

「ちょっと、トイレ行ってきます!」

 トイレに行き、鏡を見る。いかにも、不安たっぷりという顔だ。落ち着け落ち着け。スーツの力があれば、なんとかやっていけるんじゃないか。

「電話受付スキル、インストール!」

 トイレから戻ってきて、再び私の番だ。少しは落ち着いてきて、それなりの対応ができるようになった。よかった……

 それから、何回も私の番が回ってきたが、スーツの効果か、ある程度は落ち着いて電話を取ることができた。

 一日が終わり、

「みなさん、お疲れ様でした。実際に電話を取ってみて、いかがでしたか? 今週いっぱいは、今日みたいにグループで順番にとっていただき、来週から、一人で取っていただきます。」

 今日は、グループで順番にとっていたから何とかなったものの、一人で取るなんて、出来るのだろうか? それにしても、疲れた……確かに、研修の時も疲れたが、それとは別ジャンルの疲れ方だ……そういった感じで、長い一日が終わる。


一週間後。

「いよいよ皆さん、一人で電話を取ってもらいます」

 ついにこの日が来た。前々から分かってはいたのだが、グループで取るのより、はるかに緊張する。

「皆さんの受け答えを見させていただいたのですが、みなさん、ちゃんとできているようで安心しました。さすが、研修で逃げ出さなかった、強力なメンバーですね」

 川本マネージャーは、本当に私の受け答えを見ているのだろうか? 魔法少女スーツの力を借りてはいるが、まだ自分の受け答えに自信が持てない。

 研修の時に聞いたが、一人あたり、一日100本電話を撮るのが目標らしい。そんなに取れるのかいな……


「お電話ありがとうございます。確定申告電話相談センターです。申告用紙ですか……原則としては、直接税務署か、申告会場に来ていただくことになっておりますが、難しいですか? でしたら、郵送致しますが、1週間から十日くらいかかりますのでご了承くださいませ。では、お名前・ご住所をお願いします――」

「医療費控除の、交通費をどのように添付するかですね? 交通費が計上できるのは、公共交通機関を使った場合のみになっており、自家用車のガソリン代・駐車場代などは計上できないのでご了承くださいませ。記載するときは書式自由で、病院名・駅名・運賃などがわかりやすくまとめてあれば大丈夫です」

「相続税のご相談ですね? 担当におつなぎしますので、そのまましばらくお待ちくださいませ」

「住宅ローン控除の必要書類ですね? それは……」

 ひと月も経つと、流石に受け答えも、ある程度スムーズになってくる。まあ、SVの笠原さんの指導があってのことだけどね。それに、この魔法少女スーツ。宅配便の時もだけど、やっぱり効果あるのだなぁ。しみじみそう思う。

 

 3月に入り、だいぶ暖かくなってきた。この魔法少女スーツ、肌の露出が多いので真冬はきつかったけど、だいぶ楽になってきた。受け答えもスムーズになって、やっと慣れてきたと思ったら、早いものであと2週間。せっかく知り合った仲間と離れ離れになるのは辛い。

 終了1週間前。電話のなる件数はピークに達したが、そんな時、1枚の回覧が届く。今までも、仕事上の周知で回覧が回ったことは何回かあり、今回もそのようなものを予想していたが、なにか様子が違う。中華料理屋の写真が載っていて、

『終了日に打ち上げやります!希望者は、名前を書いてください』

 どういうことかと、笠原SVに問いただしてみた。

「いや、もうすぐ終わっちゃうし、同じチーム内といっても、話したことない人もいるだろうからね。せっかくだから、みんなに仲良くなって欲しいから」

 笠原さんのお心遣いに感謝した。確かにまだ話したことのない人もいるし。日程も空いているし、ほかの人より明らかに高い給料頂いてるので、二つ返事でOKを出した。

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