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アラサー魔法少女、派遣します!  作者: ふたぐちぴょん
第3案件『駅構内催事販売』
11/21

おじさんが、パンダに……

 ひと現場終わって、続いて次の現場。いよいよ、GWに差し掛かるところだ。

 今いるのは、都心の、パンダで有名な動物園の最寄駅である。

 しかし、駅の中は閑散としている。

「毎年こうなんですよねぇ。社長のやつ、『この時期、ここは売れるよ!』とか言ってるんだけど、全然売れたためしがない」

 現在、山路さんと二人。売れなくて面白くないので、二人で雑談している。

「あいつ、来るのかなぁ。別に、来なくてもいいんだけど」

 あいつとは、佐藤社長のことである。ひどい言われようだ。

 9時20分、まだ社長は来ない。

「この時間にこないってことは、もう来ないでしょ。そろそろ片付け始めますか?」

 そして、9時30分……

「はい、ご苦労さんご苦労さん。さあこれから、元気に声を出していきましょう!」

 え? こんなにひとけのないのに、声出しっすか?

「これは、自分との戦いなんだ」

 仕方ないので、山路さんとふたりで声だしする。こんなことしても、今更客なんて来ないのに……

 すると、動物園帰りと思しき家族連れがやってきた。ちらりと様子見すると、社長が子供に話しかけている。

「パンダ見えたか~?」

 子供が、見えなかったと言ったらしい。

「じゃあ、おじさんがパンダになってやろうか?」

 いやいやいやいや、あんた、最初っからパンダですから。

「あいつ、暇になると、いっつも子供に話しかけるんですよね。『今日、なんの勉強してきたの~?』とか、『なんの部活やってきたの~?』とか。子供にしてみれば、いい迷惑ですよね。」

 山路さんが、耳元で囁く。

 10時。終了の時間になる。

「じゃ、終わりにしましょう。君たちは、自分との戦いに買ったんだよ。大勝利!」

 なんか、宗教臭いことを言うおっさんだな。

 山路さんが撤収準備しているあいだに、佐藤社長に呼び止められた。

「派遣会社の人に聞いたんだけど、君、パソコン得意なんだってな?」

 得意というか、一通りのことはできますけど……

「じゃあ、この書類を、ワープロ打ちしてくれないか?」

 そう言うと社長は、手書きの書類を取り出した。字が汚い……ここの会社、ワープロ打ちできる人間すらいないのか? それとも、みんな忙しいのか? まあ、そんなに難しい仕事ではないと思うけど……

「いつでも、暇なときでいいから。ギャラは、追加で出しておくから。それじゃちょっと、片付け手伝ってやってくれ~。よろしく~」

 そう言うと、社長は去っていった。ここの駅は、倉庫があるので、わざわざトラックを持ってくる必要がなく、倉庫に入れるだけでいいらしい。

 山路さんに、「なにか手伝いましょうか?」と言ってみたが、

「いやもう、俺ひとりで大丈夫ですよ。お疲れ様でした!」

 私はひとり、帰路につく。また面倒な仕事をひとつ、抱えてしまった……


 続いての現場。都心のターミナル駅だ。

 ここは、結構売れるのだけど、スペースが狭くて、品出しが大変だ。

 少しづつ慣れてきたところで、人間観察をする余裕も出てきた。駅というのは、いろんな人が行き来する。サラリーマン・親子連れ・若い女性・お年寄り……駅によって、どういった人が多いのかが違うので、その都度、売り方にアレンジを加えるのが面白い。障害者の方も多い。目が見えなくて、杖をついて歩いている方や、車椅子の方、盲導犬を連れている方など。また、路上ライブをしている人も多い。休憩中にちょっと聴きに行ったり。佐藤社長が、「CD何枚売れたか、聞いてご覧?」とか言うんだけど、その都度、お茶を濁す。

「そういえば、書類、できたかな?」

 そうだ、書類作成なんていう『宿題』があったんだ。簡単な仕事とタカをくくって、ネットゲーム三昧していて、すっかり忘れていた!

「会社まで、郵送しましょうか?」

「いや、せっかくの機会だ。一度、工場に来てごらん?」

 そして、『工場』に行く日程を決めたり、最寄駅を聞いて、行く約束をした。これが、あのような事態を招くとは……

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