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履歴書

平成○○年3月 東京都S区立U第二中学校卒業

(生意気にも生徒会などやってた。といっても単なる生徒会室のマスコット。持ち前のでかい声で『あいさつ運動』に励んでいた)


平成○○年4月 東京都立T高等学校入学

(『自由な校風』とのキャッチフレーズにはまり、地域一番の進学校へ入ってしまった。もちろん勉強などする気はなく、生徒会室にて遊びサークルを主宰していた。自作のカードゲームで遊んだり。女子が私一人なので、一種のアイドル扱いだった)


平成○○年3月 東京都立T高等学校卒業

(その後、二年間の浪人生活を送る。先に大学進学を果たした友人と遊んだり、家でゲームをしていたり)


平成○○年4月 W大学文学部(夜間主コース)入学

(成績最下位ながら進学校に行っていたというプライドから、有名大学ばかりを受験、夜間だけど一応合格。バンドサークルでヴォーカルを務めるが人間関係トラブルで解散。その後、ちょっとした人間不信に陥り、家に引きこもってネットゲームばかりしていた)


平成○○年3月 W大学文学部卒業

(就職もせずに、ネットにハマる。ネットの『生放送』サイトの存在を知り、パーソナリティを務めることにする。ちょっとした人気者になり、アイドル気分を味わっている。)


そして、現在に至る……


 職歴(バイト含む)……無し。志望同期……様々な仕事を経験したいため。我ながら投げやりだとは思うが、登録制の派遣会社で、まだどのような職に就くか不明なため、このようにしておいた。

 私は、明日、人生初の『面接』とかいうものを控え、準備している最中だったりする。長きひきこもり生活のためにボーボーになった髪を最低限整えるべく美容室にも行ったし、その足で証明写真を撮ったりもした。大学4年の時に親に買ってもらったリクルートスーツとかいうやつも、タンスの底から引っ張り出してハンガーにかけてある。一応親を安心させるために『就職活動』とやらをやってるふりだけはした。いや、振りなのかなんなのか……プライドの高い私としては、大手企業しか受ける気はなく、いや受かってもそこで働くかどうかはまた別問題なのだが――説明会に行ったり、一応エントリーシートを出したりはしたが、全てそこで終わりだった。いわゆる記念受験。よって、面接らしい面接は、今回が初めてである。


 出来上がった履歴書を見直してみる。履歴書とは人生の縮図であるが、我ながらネタまみれの人生である。就職などというのは人生の墓場だと思っていたし、実のところ今でも幾分そう考えているところはある。やれないこともやれなくなるし……やりたいことって何? ネット? ゲーム? ぼーっと考え事? う~む、よくわからん。結局、逃げ? 子供の頃から、「世の中の役に立つ人になりなさい」と言われ続けてきたが、そう言う言葉に違和感を持つ自分がいた。しかしそれって、いわば『役立たず』ということ? 結局私は、いてもいなくてもいい人間なのかもしれない。大人になりたくない? 結局、それかも……まあ、バイトくらいならいいか。嫌なら辞めりゃいいし。結局のところ、本当の動機は、年々親の目が厳しくなるのと、ネット代がない――今までは親の小遣いでまかなっていたが、ネット生放送を始めて、それはまた別料金がかかるので小遣いだけではまかないきれなくなった――ということである。


 パソコンを立ち上げ、ネット生放送の準備をする。このシステムは、『顔出し』すなわちリスナーに自分の画像を見せることもできるが、私の顔は世間に出せたものではない――少なくとも私はそう思っている。かつてはアイドル扱いされたこともあるが――ので、声だけの放送にしている。ここでは、確かに私は必要とされている。私はネットの世界が好きだ。準備が出来た。早速開始する。


「そんなわけで、この私、明日、人生初の、バイトの面接とやらに行くことになりました」

『ニート姫卒業か?』

 この生放送システムは、リスナーのコメントが画面に表示されるようになっている。ちなみに『ニート姫』というのは、ここでの私のニックネームである。

「うるさいうるさい。ともあれ、この結果は、明日、この放送で発表したいと思います。それじゃ明日早いので、今日は手短に切り上げます。おやすみ~」

 

 早いといっても、午後1時からの面接予定である。とはいえ、支度や何やらで時間かかるので、早めに起きなければならない。普段から昼に起きて深夜までネットやゲームをやってる私からしてみたら、充分早い時間であることには変わりない。

 

 明日、人生初の『面接』に挑むことになる……

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