お隣のデンジャラス
僕のもう見たくもない身体の異常を確認し終わった後ゼロさんに他の三人と一緒に部屋を追い出され、(あそこはゼロさんの部屋だったらしい)ユキさんに渡された部屋の鍵を使い、自分の部屋で寝っ転がっております。
何も無くて体が痛いですけどね!
もう少し落ち着いたら家具でも買いに行きたいけれど、生憎僕は今一文無しだ。
何かを買えるわけがない。
今日一日僕はこの固いフローリングの上で寝るしかなさそうです。
「はあ......、本当にどうしよう......」
もうすでに体が凝りまくってあっちこっちぼきぼき言います。
.........またさっきみたいな事になったら嫌などで起きときます。
「んーそういえばちょっとお腹空いたなー」
ふと思ったことをぼそりと呟いてるといきなりドアの方から聞こえた大きな音。
荒々しく開けられたドアに誰か立っているけど逆光でよく見えない。
その人影は無言で部屋に入ってきて今現在僕がいるリビングの方に迷い無く進む。
その時に見えた姿はお世辞にもマトモとは言えない姿をしていた。
目が黒く濁り、中央にある紅い瞳だけが爛々と輝き、ボサボサの黒い髪は無造作に降ろされていて口が三日月の様に弧を描いている。
例えるならば死神の様な出で立ちをした人。
ただ、恐ろしいと思った。
「君がアキちゃん?」
「っ!」
いつの間に来ていたのか目の前には黒い踵の高い靴と地面に付きそうなほど長い裾のジーパン。
恐る恐る視線を上げると思いの外近くにあった顔。
「ぅわっ!」
吃驚して仰け反り、手が滑って思いっきり後頭部を床に叩きつけてしまった。
「そこまで驚かれるとちょっと傷ついちゃうなぁ」
クスクスと心底面白そうに笑ってるその人の目はもう黒く濁ってなかった。
「あれ、目......」
「ああ、ごめん。目、黒くなってたんでしょ」
ごめんごめんと後頭部を掻きながらしゃがみ、申し訳なさそうに目の前の人は眉を八の字にした。
思いの外優しそうな雰囲気だったからだいぶ安心した。
「オレの名前はスズメ。よろしくな」
スッと出された手を僕は迷うこと無く握り、「よろしくお願いします」と言おうとした瞬間、前に引っ張られる感覚がして、右頬に何かが通り抜けたような風と鋭い痛みがした。
「ふーん、普通の子かぁ。ちょっと残念」
面白くなさそうに左手に握ったカッターに付着した僕の血だと思われるものをスズメさんはペロリと舐めた。
「あ、でも血の味は悪くないね」
何 言 っ て ん だ ?
え、ちょっと待って。この人はあれか?吸血鬼なのか?それとも味覚が逝っちゃったひとなのか?
ただ只管に困惑してると生温かいぬるり、とした感触が右頬にはしった。
「んー、やっぱり君の血は美味しいなぁ」
放心している僕を知らん振りしてスズメさんはスクッと立ち上がり、玄関に向かった。
「あ、オレ君のお隣さんだから宜しくねぇ」
最後に最高の笑みを浮かべた後、スズメさんは部屋を出て行った。
......何あれ?