エピソード4
「朝だよー!起きて!お兄ちゃーん!」
はあ、こんな妹がほしい。スマホからきこえる、妹ボイスのアラームを乱暴にとめた。あ、そうでした。俺、今昔の時代にきてるんだった。どうりで、枕が固いわけだよ。いつもの低反発まくらがやっぱいいわ。
まくらについて考えながら布団からでようとする。ん?なんか下のほうがもぞもぞしてるんだが。ギャルゲーとかなら、美少女がベッドに入ってきてるパターンなんだがな。そう考えながら布団を捲る。
美少女がかわいい寝息をたてている。いや待て、これ現実だよな?頬を自分でつねる。
「いてぇ。」
「何をしてるんですか?誠也?」
寝ぼけながら、そう問いかけてくるのはニィナだ。
「ニィナさんや、なぜ俺の布団に入っているんだあああああ!」
やばい、ついつい叫んでしまった。
「うるせえぞ!坊主!朝からどうした!?」
おじさんの怒ったような声がきこえる。あの人怒らせるのは絶対やばい。とりあえず謝ろう。
「すいません!なんでもないです!」
ふぅ。おじさんのおかげで頭が冷えたかな。
「誠也、耳がおかしくなります。あまり大きい声をださないでください。」
「いや、ニィナお前のせいだからな?女子と会話するのすら苦手な、俺の布団にお前みたいな可愛い子がいたら普通こんな反応するからな?」
やべっ、ついつい可愛いとか言った気がする。まあいいか、ニィナは気にするようなやつでもないし。
「私は夜しっかりと誠也の横の布団で、眠ったはずです。」
つまり、ニィナは自覚がないけどかなり寝相が悪いと。なんか、ニィナの意外な一面がみれたなー。
「まあ、とりあえず起きておじさんのとこ行くか。」
そう言って、俺とニィナはおじさんのいる床の間のほうに向かっていく。
「お、起きてきたか。二人とも。おはよう!」
「おはようございます。」
「おはようございますー。」
「二人とも、よく眠れたか?朝飯適当に準備したから食べてくれい!」
ここまで世話してくれる人なんて中々いないな。俺の時代には少なくともいない、いや、あいつがいたか。元気かな…篝のやつ。いかん、こんなことを考えるなんて俺らしくない。
「どうかしましたか誠也?早くご飯を食べましょう。」
「ああ、そうだな。」
俺はそう答え元の時代のことを考えるのをやめた。
ご飯を食べながら、これからどうするかについてでも考えるか。まず、やることといえばニィナの手伝いが最優先だろ。何をどうしたら、ニィナの時代の問題が解決されるかは分からん。ニィナも解決法は知らなそうだったしな。うん、詰んだなこりゃ。何したらいいかさっぱり分からん。そんな答えに至り、やっぱりニィナの考えが気になるな。彼女のほうを見ると、口が食べ物でいっぱいになっている。可愛いんだが、もうちょっと上品に食べれないものなのかね。今きくのは無理そうだな。となると、この時代から影響があるならこの時代の情報が欲しいとこだな。おじさんにきいてみるか。
「おじさん、町の人たちはいつも戦争の話ばっかりしてるんですか?」
やばい、直球すぎたか?子どもが戦争に興味もつのは怪しまれるか?おじさんは、少し考え話を始めた。
「それがな、今この時代は戦争が絶えないんだ。国は一体何を考えてるんだ!俺の子どもだって、兵士が足りないからとかいう理由で国に連れてかれちまったんだ!すまん、坊主たちには関係ないことだったな。」
おじさんが一人暮らしだった理由はそういうことか。国が子どもを連れていき、兵士にする…ふざけてるな。待てよ、ニィナは確か、自分の時代の争いをとめるためにこの時代にきたんだ。てことは、この時代においてニィナの時代まで何かしら争いの種になるものが、残っていたとは考えられないか?俺の時代は平和なんだよな。考えてても分からん、危険かもしれないが、やることは思いついた。あとはニィナの同意が得られるかだな。俺は結論をだし、またご飯を食べ始めた。
朝食を終えて、さっき考えたことをニィナに全部伝えた。
「なるほど、誠也は頭の回転がいいですね。それで、思いついた作戦というのは?」
俺、頭いいわけでもないんだがな。ニィナは頭の回転は悪いらしい、なんかイメージがどんどん変わるな、彼女に対して。まあいい、作戦についてだ。
「お前もさっきのおじさんの話はきいてたよな?」
「はい、なんとなくですが。」
「おじさんさ、子どもが兵士として連れていかれた、って言ってただろ。」
「あとは、国は兵士が足りていないとかですよね。」
「そこが重要なんだよ!兵士が足りていない、ということは国はどんなことをしても兵士を集めたいんだ。」
「誠也の言いたいこと、分かった気がします。」
ニィナも分かったみたいなので、俺は言った。
「兵士に志願して、国の軍に潜入して情報を集める!」
本当は、ニィナを危険な目に会わせたくはない。でも、ニィナの時代の問題である以上は、その時代に詳しくなければどんな情報が欲しいかもわからない。俺は、ニィナについていくだけだ。元の時代に戻るためでもあるが、彼女を守りたい、そっちの思いのほうが強くなっている気もする。ニィナは少し考える素振りを見せて、こう言った。
「わかりました。誠也の作戦でやってみましょう。」
「ニィナ、正直この作戦は危険なこともあると思うんだが。」
「大丈夫です。私の時代の問題を解決するまで、私は死ぬ気はありません。」
すっごいな、ニィナは。だが、こういうところが少し心配なんだよな。なんていうか、執念みたいなものを感じる。
「わかった。それでどうする、すぐにでも出発するか?」
「あの誠也、出発ってどこに向かうのですか?」
あ、考えてなかった。どこに行けば兵士になれるんだ?うわー、これは流石におじさんにはきけないわ。その時、外から声がきこえてくる。
「やめてください!うちの子を兵士にするなんてそんなの嫌です!」
「うるさい!黙って従え!これは国の決定なんだ!」
タイミング良すぎだろ。おじさんは、確かパン屋の仕事をしに行ったはずだから、ほんと今しかないか。
「ニィナ、今外に兵士の募集みたいなの来てるみたいだぞ。」
「では、行きますか誠也。」
そう言って彼女は外に歩き出す。俺も後を追って外にでた。
「すいません、私達、兵士になりたいのですが。」
ニィナさん、それすっごい怪しいからね?はあ、フォローしてくるか。
「いきなりすいません。彼女と僕もなんですけど、国のために何かしたいなって二人で話をした結果、兵士になるのがいいって結論になったんですよ。本当にお願いします!国のために働きたいんです!」
中々うまいフォローだと思うんだがなー。さて、相手はどうでるか。
「まあいいだろう。兵士は何人いても困らん。そっちの子どもはもういい。兵士に志願した二人を連れていく。」
よし、うまくいった。それに、子どもが連れてかれるのも止めた。これもしかして、時間移動のエネルギー溜まるんじゃないか。子どもとその母親は、逃げるように家に戻っていった。お礼のひとつくらいしてもいんじゃないかね。
「よし、じゃあ行くぞそこの二人。ほら、乗れ。」
なんか、車に乗せられたし。とりあえずこれで、潜入までは成功かな。でも、下手にニィナと会話するのはまずいかな。あ、ニィナは大丈夫か。ニィナを見ると普段と変わらない表情をうかべている。うん、ニィナは大丈夫そうだ。
「誠也、することも無さそうなので私は少し仮眠をとります。」
そういうと、ニィナは俺のほうに寄りかかってすぐに寝付いてしまった。ニィナさん、ほんとあなた無防備すぎるって!うあー、ヤバい心臓バクバクしてる。畜生、行く途中に色々考えたり、周りの景色見て情報集めたりしようと思ったのに!くそっ、ああもう俺も寝てしまおう。寝れる気はしないけどな。
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