エピソード3
「さて、それでニィナこれからどうするの?」
くきゅるるー。ん?なんだこのかわいい音は。猫とかでもその辺にいるのか。いや、見当たらないな。もっと近くだったような…
「はい。とりあえず何かしら食べたいです。」
やっぱりかー!それにしても女子なら普通、男子の前なら隠すものじゃないのか。お腹へったとかそういうの。
あ、そうですか。俺は男として見られてないと。まあ、気にしてませんケド。
俺は若干ブルーな気持ちになりつつ、食べ物がありそうな所がないか辺りを見渡す。お、あれはパンかなんかかな。ニィナのために買ってくるか。
待てよ。財布は、あるけどお金使えるわけねーじゃねーか!
「ニィナ、あそこパンか何か売ってるみたいだけどこの時代のお金ってもってる?」
「持っていませんが。」
ですよねー。はあ、しょうがない。ちょっと交渉でもしてきますかねー。
「ニィナ、俺ちょっと店に行ってみるから待ってて。」
俺はニィナにそう言って店に向かった。店の前につくと、機嫌が悪そうなおじさんがいる。きつっ、あれパッと見ヤクザかなんかだってまじで。こっちを見ておやじさんは、目をキラキラさせてこう言ってきた。
「いらっしゃいませええええ!」
迫力やばいな。ニィナでもこれは流石に、ビビるんじゃないか。しょうがない、一応作戦は歩きながら練ってたしどうにかするしかないな。
「こんにちは。どうされました?今機嫌があまり良くなかった気がしましたけど。」
「坊主、揚げパン買いにきたんじゃないんか!?」
なるほどな、分かった気がする。このヤクザ…じゃなくて、おじさんの接客のせいで、パンが売れてないとかそんな理由だろ。
「すいません。うちはとても貧乏でとてもじゃないですが、パンすら買うのが辛いんです。ただ、困ってるように見えたから元気づけようと思って。」
我ながらなかなかうまいこと言ったと思う。このおじさん、こういう設定弱そうだしな。
「すまん!坊主!そうともしらず、俺は無理やりパンを買わせようとしちまった。」
ほらなー。考えた通りだわ。でも、このヤク…おじさんいい人っぽいな。うまくいけば、パンにありつけそうだ。
「坊主、驚かせた詫びとしちゃなんだがパン食べてってくれや!」
「ありがとうおじさん。でも、あっちにお友達おいてきちゃったからよんでもいい?」
「構わないぞ!その友達にもパン食べさせてやるわ!」
これで、ニィナのぶんも確保と。お腹を空かせたニィナさんを呼びますかね。
「ニィナー、こっちきてくれー。」
「どうしました?誠也。」
「おじさんが、パンをご馳走してくれるって。」
「ありがとうございます。私お腹が空いてしまっていて。」
ニィナがそうお礼を言うと、おじさんは揚げパンを俺たちに優しい顔で手渡してくれた。さて、味はどんなんかなー。一口パンにかぶりつく。
「うっまーーー!おじさん、これすっごくおいしい!」
やばい、マジでうまい。ニィナのほうを見ると、無くなってるし…はやっ!おじさんは嬉しそうな顔をして、こっちを見ながら話をしだした。
「うまいだろ!?でもな、売れないんだよ。なんでか俺にはさっぱり分からん!」
いやー単純にあなたが問題かと。まあ言わないけどさ。どうにかできるような考えはあるけど、ニィナ次第なんだよな。ニィナが口を開く。
「よろしければ、私たちがパンを売るお手伝いをしてもよろしいでしょうか?パンも食べさせてもらいましたし。」
ニィナ、ナイス過ぎる。それ俺が、パン貰うためやろうと考えてたやつ。でも、貰えたからやらなくていいと思ってたのになー。嫌がってるような俺を見てニィナが、こっそり話しかけてきた。
「誠也、手伝いましょう。詳しくは後で話しますが元の時代に戻るのに必要なことです。」
え、マジ?パン売ることがか!?ありえんだろ。でも、ニィナめっちゃ真剣な表情だしな。しょうがない。
「おじさん、お願い!手伝わせてください。」
俺、キャラ変わりすぎだろ。
「ほんとか!?お嬢さんはべっぴんさんだし、坊主もなかなか男前だし二人が売ってくれれば売れるかもしれん。二人とも頼むわ!」
ニィナが可愛いのはわかるが、俺は別に男前ではない。おじさんの目は節穴ですね。
「おじさん、パンを売るときにさ、試しにお客さんに少しパンを食べさせてあげて。」
「なぜだ?坊主。」
「こんなに美味しいパンなんだから、一口でも食べれば買っちゃうはずだよ。」
「そうか、じゃあそうしよう。味には自信があるからな!」
この時代じゃ、俺の時代のように試食という考えがまだないだろうからな。これならいけるはずだ。
「ニィナは、試食のパンを色んな人に食べさせてきて。」
「わかりました。」
ニィナは人のいる方に向かっていった。
「おじさんと僕は、お店でお客さん待ちだね。それと、どうして買いに来てくれたかとかお客さんにきいておくべきだね。」
「分かった!けど、お嬢さん一人で大丈夫か?」
「大丈夫だと思いますよ。彼女のことは信頼していますし。」
数時間がたって、パンはほぼ全部売り切れてしまった。まあ、ニィナ効果だな。あんな可愛い子に、パンどうですか?とか言われたら俺なら確実に買うしな。いや、パンも美味しいよ!
「それにしても、客の大半がパンが美味しかったから買いに来てくれたとは!俺は嬉しい!ありがとうな!坊主、お嬢さん。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。」
ニィナはまたお礼を言っている。俺も言わないとダメかなー。
「おじさん、パン本当に美味しかったよ。ありがとう。」
パン屋で働くのも終わって、空を見るとすっかり日が暮れてしまっている。あれ?このままじゃ野宿とかそういうやつか。俺よりも、ニィナの方が考えてるかな、きいてみるか。
「ニィナ、今日ってどこで寝泊まりするつもり?」
ニィナは考える素振りをみせる。これ考えてなかったな、確実に。
「野宿です。」
「え?なんだって?」
「野宿しましょう誠也。」
マジですか。ニィナさんや。あなた、仮にも女の子ですよね、そんなんでいいのかよ。すると、困ってる俺たちを見ておじさんが話かけてきた。
「坊主たち、今日寝るところないんか?俺、一人暮らしだし良かったらうちくるか!?」
ナイス!おじさん!本当いい人だな。
といっても、俺に決める権利はないわけで。ニィナの答えを俺は待っている。
「お言葉に甘えさせていただきます。」
よしっ。野宿回避!
こうして、俺たちはおじさんの家で一晩お世話になることになった。おじさんの家に向かう途中、ニィナが話かけてきた。
「誠也、さっきのことですが。」
「さっきのこと?」
なんだ?あれか、野宿辺りのくだりか?
「元の時代に戻るのに、このお手伝いが必要だった理由のことです。」
うん、完全に忘れてたね。パンのことで頭パンパンでしたね。パンだけに。まあ、今のつまらないネタはおいといて。
「ああ、そのことね。それで、結局理由は?」
「これです。」
そういうと、ニィナは袖を捲って見せてくる。綺麗な肌してんなー。じゃなくて、これか?ブレスレットみたいなものをニィナはつけていた。このブレスレットが、時間移動に必要とかそんなとこだろ。
「このブレスレットが、時間移動を引き起こすために必要なのです。」
まあ、このタイミングで見せるってことはそうだろうと思ったよ。
「詳しい説明は省きますが、これに力をためることが時間移動のために必要なのです。」
「それで、その力っていうのは?」
「人の感謝の気持ちです。この力をためるために私は、お手伝いをしました。」
そういうことか、てことは俺もう元の時代に戻れるんじゃね?おじさん結構感謝してるだろ。俺たちに対して。
「しかし、私が目的を果たすまで力を使う気はありませんので。」
「そのへんは分かってるよ。ニィナにとって重要なことだもんな。」
ニィナは真面目だからな。大体予測はしてたよ。
「おーい、二人とも家ついたぞ!」
おじさんの声がきこえた。
「まあニィナとりあえず今日はもう寝てさ、明日からニィナのことは頑張ろうぜ。」
「そうですね。ゆっくり休みましょう。」
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