第08話:如月事件解決
京子と滝川は黒沢 康夫の自宅を訪ねた。
ピンポン──インターホンを鳴らす京子。
「はい」
スピーカーから黒沢の声が聞こえて来る。
「警察です。お話したいことがあるので、ちょっと出て来てもらえませんか?」
「警察? 警察が何の用? まあいいや。ちょっと待ってて」
家から若い男が出て来る。
「黒沢 康夫さんですね? 警察です」
京子は男に警察手帳を見せる。
「何か分かりますよね?」
「いや?」
「加山 守男の殺人依頼を行いましたよね。事務員が白状しましたよ」
「殺人教唆で貴方を逮捕します」
滝川は黒沢に手錠をかけ、京子と共に警視庁へ連行し、事情聴取を行って送検した後、如月の事件の捜査員と合流した。
「今までの捜査で分かってること話して」
「如月の交友関係を洗ったところ、行方が分からない女がいることが分かりました。これが殺人なら、その女が怪しいと思いますね」
「その女の名前は?」
「黒崎 茜です」
(黒崎 茜は僕の彼女だが……。疑いたくないな)
「取り敢えず、その女の行方を追ってちょういだい」
「分かりました」
捜査員は走り去った。
「山上さん、俺らは?」
「西東京署行くわよ」
京子と滝川は西東京市警察署の捜査三課を訪問した。
「何かご用?」
晴男の上司である四方田課長が訊ねた。
「四方田課長ですね?」
「アンタは?」
「本庁の捜査一課、山上 京子です」
京子は四方田に警察手帳を見せた。
「先日亡くなられた如月 晴男の事件を担当をしています」
「事件? あれは医者が病死と判断したけど……」
「如月が亡くなった直後、黒崎と言う方の行方が分からなくなっています。殺人の可能性があるので動いてます」
「なるほど。アンタらはその女が犯人と見てるのか」
(あれ? 彼女のことは話してないのに、何で女って)
「四方田課長、貴方ですね?」
「何が?」
「如月を殺害したの」
「お前は俺を疑るんか?」
「黒崎はどこへやった?」
「そんな女知らねえな」
「ほう? さっきも女と言ってましたが、如月は四方田課長には恋人のことは話していないんですよ」
そのとき、京子の携帯が鳴った。
「失礼」
京子は応答した。
「はい。……分かったわ」
電話をしまい、四方田を見る京子。
「今しがた、仲間からの連絡で、黒崎の身柄を確保したそうです」
「そ、そうか……」
「課長に関しては、殺人の証拠がないので、見付けたらまた来ます」
京子と滝川は会釈をして署を出で物陰に隠れた。
署から四方田が出て来る。
左右を見渡し、足早に去って行く。
「追うよ!」
京子と滝川は、四方田の尾行を始めた。
辿り着いたのは廃墟ビル。取り壊し工事が途中で滞った建物のようだった。
中に入って行く四方田。
京子と滝川も入る。
「誰だ?」
山上班の捜査員が四方田に訊ねる。
と、そこへやって来る京子と滝川。
「四方田課長、やはり貴方でしたか」
「は?」
振り返る四方田。
「四方田課長、貴方は如月 晴男を殺し、その責任を黒崎になすり付けようとこの廃墟におびき出し、自殺を装ってあの世へ葬った。そうですよね? どこか間違ったところがあれば訂正して下さい?」
「あ、あいつが、あいつが悪いんだ。茜は俺と付き合ってたのに、如月が奪い取るから!」
(そうだったのか)
「だから、二人を殺害したんですね?」
「ああ、そうだよ」
「詳しい話は本庁で」
京子は手錠を四方田の手にはめ、警視庁へ連行した。