第07話:黒幕
川島家へやって来る京子と滝川。
呼び鈴を押すと、男が出て来た。
京子は警察手帳を見せる。
「川島 稔さんですね?」
「そうですけど、何ですか?」
「貴方名義の口座から山本さんという方に多額の現金が振り込まれています」
「山本なんて男知らないですよ」
京子は笑みを浮かべた。
「私は山本さんと言っただけで、男性とは言ってませんよ。どうして男と?」
「振り込んだだけだよ! 山本さんが死んだからって、俺には関係ねえだろ!?」
「おやおや? 山本さんが亡くなったことはまだ公表していませんよ!」
その場に崩れる川島。
「どうしてご存知なんですか? 教えて下さい」
「すみません。俺が撃ちました」
「銃は何を使ったんですか?」
「猟銃です」
「その銃、ありますか?」
「はい」
「渡していただけますか?」
「はい」
家の中へ戻る川島。
奥で窓ガラスが開く音がした。
京子は咄嗟に閉じられたドアを開けて中に入ったが、しかし、川島は既に逃げた後だった。
追い掛けようと窓に駆け寄るが、外にはもういなかった。
「畜生!」
壁を殴る京子。
警視庁刑事部長室。
「ホシに逃げられるとはどういうことだ!?」
お説教を受けている京子。
「すみません」
「謝らんでいい! 分かったら速く行動に移すんだ」
「はい!」
京子は部屋を出ると、警視庁を出た。
「山上さん」
滝川が追い掛けて来る。
「ああ、滝川くん」
「激おこでしたね」
「なれっこよ」
「で、どこ行きますか?」
「取り敢えず、彼が行きそうな所を聞き込みするしかないわ」
二人は渋谷へ行き、聞き込みをした。
川島は渋谷駅近くのパチンコ店で仕事をしているという情報を掴んだ。
二人はそのパチンコ店へ赴き、店員に話を聞く。
話によると、彼はよく駅前のガールズバーに顔を出しているということだ。
二人はそのガールズバーに足を運んだ。
「あ、まだ営業前ですよ」
「いえ、私たちはこういうものです」
二人は警察手帳を見せた。
「警察?」
「こちらに川島さんという男性がよく出入りしているそうですが?」
「ああ、みのっちね。彼がどうかしたんですか?」
「ここに来ていませんか?」
「営業前ですし、まだ来てませんけど、彼が何かしたんですか?」
「ある事件の容疑者となっています」
「それってどんな?」
「殺人事件です」
驚き戸惑う店員。
「では、我々はこれで」
京子と滝川は店を出て、離れた所で張り込む。
店の営業が始まり、辺りを見渡しながらやって来る川島。
「山上さん、川島です」
「行くわよ」
京子と滝川は駆け出した。
「川島──っ!」
驚き戸惑う川島。
「え?」
顔を確認し、先ほど会った刑事だと気付くと、川島は咄嗟に逃げ出した。
「待て──っ!」
全力疾走をする京子。
「待てと言われて待つバカはいねえよ!」
「逃がしてたまるか!」
京子は左の革靴を脱ぎ、右足でそれを川島目掛けて蹴飛ばした。
「うっ!」
痛みに蹌踉めく川島。
「確保!」
京子は川島を取り押さえ、手錠をかけた。
「午後七時五分、殺人容疑で逮捕します!」
京子と滝川は川島を警視庁まで連行し、取り調べを始めた。
「山本管理官を撃ったことに間違いはないわね?」
「はい」
「殺し屋本舗は貴方がやってるんですか?」
「そこまで知ってるんですか」
「加山 守男を殺したのも山本管理官ですか?」
「加山? ええ、そうですよ」
「山本管理官を撃ったのはなぜですか?」
「真相が明るみになりそうだったからですよ」
「そうですか」
「それより、カツ丼出してくれない? 腹減ったっす。取り調べと言ったらカツ丼でしょ?」
「バカか? 取り調べでカツ丼が出るのはドラマだけ。犯人の利益になることは実際の警察ではやってないんだ。それより、加山殺害の動機は何ですか?」
「依頼があったからですよ」
「誰から依頼されたんですか?」
「それは言えません。守秘義務ってやつですよ」
京子は机を叩いた。
「アンタのやってることは仕事とは言わねえんだよ! ま、アンタの所にかけてきた電話番号を調べれば分かりますけどね」
「そうですね。頑張って下さい」
京子は川島の胸ぐらを掴んで自分の方へ引き寄せた。
「おうおう? 警察がそんなことやっていいのか?」
「山上さん、落ち着いて」
川島を放す京子。
「依頼人の名前、早く教えなさい!」
「黒沢 康夫ってやつだよ。電話で話しただけだら、どこに住んでるかは知らねえけどな。ハッ!」
「では、貴方は殺し屋本舗の事務担当で、実行犯が山本管理官、そう言うことでいいんですね?」
「ああ、そうだよ」
その後、全てを白状した川島は、検察に送検された。