第05話:殺害屋の名刺
監察室を出る京子と滝川。
「加山の事件、洗い直しましょう」
二人は加山の事件現場である桜田門駅に向かい、聞き込みをした。
何十人、いや何万と声をかけただろうか。
一人だけ、加山殺しの真犯人を知ってるという人物に接触出来た。
「加山殺しの犯人を知ってるんですね?」
「ああ」
「誰なんですか?」
「そんなもん教えるかよ。そんなことしたら殺されちまう」
京子は懐から山本管理官の写真を取り出した。
「なっ……!? あ、あんたらどこまで知ってんだ!?」
「加山殺しの黒幕が山本管理官だってことだけですよ。ただ、証拠がないので、それを探しているんです」
「じゃ、じゃあ言うことはないな。俺も殺されんのはいやだからな」
男性はそう言って歩き去る。
その際に男性が黒い紙を落とした。
京子はそれを拾い上げる。
紙には殺し屋本舗という文字と、携帯電話の番号が記載されていた。
京子と滝川は男性を尾行し、住居を特定した。
男性の名は城山 隆。職業はルポライターだ。
近隣住民への聞き込みで、先日、加山と言い争いをしていたと言う目撃情報を手に入れた。
「これ本当に殺し屋かしら?」
京子はその紙を見ながら疑問符を浮かべた。
「調べてみましょうよ」
二人は携帯ショップへ行き、警察手帳を提示した。
「警察の者なんですが、こちらの番号の契約者って分かりますか?」
京子は例の黒い紙に書かれた電話番号を見せた。
「調べてみます」
店員は契約者を調べるが──。
「申し訳ありません。お調べした番号はプリペイド携帯のようです」
ツッ!──京子は舌打ちして呟いた。「飛ばしかよ」
「申し訳ありません」
「お忙しい中ありがとうございました」
二人は会釈をして店を出る。
「掛けに出ようか?」
「掛け?」
「私がここへ電話して、殺しの依頼をするでしょ? で、ターゲットの近くで張り込みして、誰かが近付いたところで、そこを取り押さえるという。少々危険だけど、やってみる価値はあるわ」
京子は携帯を取り出した。
「かけるんですか?」
「池田監察官のところにね」
京子はアドレス帳から池田監察官を選んで電話をかけた。
「はい、池田です」
「池田監察官、捜査一課の山上です」
「山上さんですか。調子はどうですか?」
「桜田門の駅で聞き込みを行った結果、山本管理官と面識のある者と、殺し屋本舗と書かれた黒いカードを手に入れました。これには飛ばしの番号が書いてありました」
「そうですか」
「それで、この番号にかけて依頼してみようと思います。もちろん、殺される前に止めますが」
「そうですか。健闘を祈ります」
電話を切って携帯をしまう京子。
「ターゲットは誰に頼むんですか? たぶんそんな危険なこと誰もやりたがらないですよ」
「滝川くん、貴方がやるのよ」
「え? 僕が?」
「うん」