第01話:憑依したのは女性刑事
男の名は如月 晴男。二十代という若さで死亡し、霊となった。
ぶっちゃけ、神ミスというやつだ。死神が間違えて晴男を連れて来てしまったのだ。
「へえ、ここがあの世」
辺り一面真っ白な世界を見て晴男は言った。
「如月くん、君がここにいるのは、私のミスでね。それで、提案なんだが、君を現世に下ろして生き返らせようと思う」
「マジか!?」
「ただ、今までの体には、シルバーコードが切れてしまっていて戻れないから、生きてる人間に憑依してもらうことになる。それでもいいか?」
「女の子限定なら」
「君、何かよからぬことでも考えてるのか?」
「別に」
「まあ、いい。これから君を現世に下ろすから、気に入った人に重なるんだ」
「分かったよ」
晴男は現世に下ろされた。
「とは言ったものの、誰に憑依すれば……?」
現世を彷徨いながら、女の子を捜す晴男。
「お!?」
端正な顔立ちをした長髪の女性を見付けた。
晴男はその女性に接近した。
「この子、可愛いな」
目の前の女性が気に入った晴男は、その女性の体に重なった。
「え?」
女性は意識を失い、その体がふらつく。
「おっとっと」
女性は態勢を立て直した。
「えっと……」
晴男は女性の持ち物を調べた。
「これは……?」
黒い革製の二つ折りの何かが出て来た。
開いてみると、それは警察手帳だった。
名前は山上 京子と言うようだ。
(警察官って、僕と同じ職業じゃん)
手帳の徽章には<警視庁>と書かれている。
時間的に考えて、今は出勤途中なのだろう。
京子は警視庁へと登庁した。が、しかし、部署が分からない。そこで服の内ポケットを改め、出て来た名刺で捜査一課であることが分かると、彼女は捜査一課へと向かう。
「おはようございます」
捜査一課に着き、挨拶をする。
「おはようございます、山上さん」
挨拶を返したのは、男性刑事だった。
「えっと……?」
「ああ、昨日付けで配属された滝川ですよ、滝川 守。覚えて下さいよ」
「滝川くんね。覚えたわ」
京子は京子と男性のツーショット写真の置かれているデスクに座る。そこが京子のデスクだと判断したからだ。
プルルルル……──京子のデスクに置かれている電話が呼び出しをする。
「はい、捜査一課」
と、応答する京子。
「桜田門駅で変死体?……はい、分かりました」
受話器を置いて立ち上がる京子。
「滝川くん、警視庁前の地下鉄の駅で変死体が出たそうよ」
「分かりました。行きましょう」
滝川は立ち上がり、京子と共に現場へと向かった。