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俺の挫折と閃き

「…………」


「よう、お帰り。どうだ、面白かったか?」


「……………」


「で、どうだったよ新たな人生。ニコポ、チート能力、きゃー!かっこいー!」


「……どういうことだよ」


「ウェーハッハー。多分、お前が思ってるとおりだと思うぜよ?」


「……見てたんだろ?」


「いや、ワッシは見てねーよ。てか『読めねーよ』」


「……あー、やっぱりかよ」


「そう。そういうこった」


「いやーそうか。はっはっは」


「はっはっは」







 ひとしきり二人で笑い合って――






「ちくしょおおおおおおおおおお!はやくいえよおおおおおおおおお!!」






 絶叫と共に繰り出されるのは向こうの世界で覚えてきた魔法と無限の剣製な宝具の嵐。

 しかし神野郎は涼しい顔で受け流していく。



「だーかーら、詰まんないってワッシは言ったじゃねーかよ」


「いくらなんでもアレな世界だとは読めんわ!」


「『読めん』か。なかなかうまいことを言う」


「そんなつもりじゃねーわ!」




 確かに、俺はゼロ魔の世界に行った。

 そこはルイズがいてサイトがいてトリステインがあって白い大陸のアルビオンがあった。


 俺は、さっそくと魔法学院に行って原作介入しようとした。




 だけどな。





「すいません、旅のものなんですが道に迷ってしまって……」





「諸君!決闘だ!」


「お願い。もうやめて」


「下げたくない頭は、下げられねえ」





「えーと……ほーら俺、こんなことできるよ!無限のなんとか!」




「あなたが土くれ!」


「さすがは『破壊の杖』ね」


「それは単発なんだよ」








「…………あっれー?」






皆俺をスルーすんの。


それに、なんていうか、現実感が無い。

空気を吸っているはずなのに空気を吸っている感覚がなく、

目で景色を見ているはずなのに、見えている感覚が無い。


にもかかわらず、ちゃんと空気を吸って、景色が見えている。

だが、それもサイトやルイズの周りにいればこそ、だ。


そこから離れれば、あるのは「自分は何かをしている」という漠然とした思いだけ。


事実があるのに、現象が起きない。


現象が無いのに、空想だけができる。


空想が、事実になる。



それはまるで、物語を活字として読んでいる、そんな――




「……まさか」



そこからは、俺は実験を開始した。


ルイズたちをストーーキングした。

結果、『場面』が飛んだ。確かに俺の記憶に彼らがどうやってどうした、といった概要は残るのに、明確にその状況を思い返せない。



ギーシュを殴ってみた。

干渉付加。どんなことをしても、建物にアッー!ボルクうっても、何にも起きない。


ルイズたち――というか、『登場人物』たちから離れて、厨房でつまみ食いをしてみた。


少しは食べることはできた。だが、話がずれるような『大きな変化』は無理。


味はちゃんとしたと思うが、思い出せない。




街に行ってみた。


いろんな『なまえもないひとびと』と会話した。

いや、本当は名前が合ったのかもしれないし、なかったのかもしれない。

だが、思い出せない。


見知らぬ誰かと結婚して、なんとなく「終わった」。



「終わった」のは、ゼロ魔の世界に入って数年後。



なんてことはない。

ゼロ魔の最新刊の話まで世界が進んだその瞬間、ということだ。





「つまり俺は、『ゼロの使い魔』という世界に入った。だが、『ゼロの使い魔』という世界は――」


「そーいうことだ。すでに完成されている、『活字』の世界だ。その世界にお前が入る――なに、普段お前が空想するソレと、何も変わらない。活字なんだから、文字としての事象しか存在しない。お前がそこでみた感覚の全ては、文章からお前が想像したものだ。さらに、文章に存在しない、『場面』とは関係ない場所は、お前の空想の産物だ。そしてどんなに空想したところで、ヤマグチノボルという小説家の書いた、小説版『ゼロの使い魔』という『世界』は、何一つ変わりようが無い。当たり前だろう?もし、『とある男がシチューを食べた』という一文が入っただけでも、それはもう「ゼロの使い魔」という小説ではない、何か別の、ゼロの使い魔のような何か、に摩り替わる。――そうだな、二次創作SSみたいなものだろう」



結局、俺は現実の世界で「ゼロの使い魔」を読み、その世界を空想するという、ただそれだけと同じことを、「ゼロの使い魔」という世界の中でやっただけだった。

そしてその空想も、原作文章にはなり様が無い、ストーリーには関係ないことのみが許された、閉じた世界。


ただ、その中で自分をあてはめ、想像し、生活したのが今回の俺。



「ワッシが、ツマランといった理由もわかるだろうよ?」


「ああ、俺が何をしようと、『ゼロの使い魔』という世界に変化がおきない。早い話が、『俺がなにをしているか』がまったく見えないんだろう?」


「そーいうこった。……で、どうするよ。」


「……今回の俺、ぜんぜん生きて死んだわけじゃないんだよなあ……だからか、いつもの台詞がなかったのは」


「うむ、今回、お前はまったく生き切っていない。ただ、本を読んでいたのと変わらん……だからま、これは『改めて』ってかんじだーよ」



考える。


今回のことを踏まえれば、どの「フィクション」に入っても、同じということだ。

ゲームの世界なら、ある程度は自由は利くかもしれないが、結局ゲームでできる選択肢と、ゲームをしてる感覚があるだけだろう。

じゃあ、やっぱりランダムに気をつけて、詳細を練った世界を自分で想像して――



「……あ」



 閃いた。





 閃いてしまった。

世の中甘くないですね

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